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理系男子と文学少女  作者: しださん
出会い編
13/17

始業のチャイム

京 (この本って…あの時の子が持ってた本と同じだよな…)



京は静かに本を見つめる



京 (……)



そんな時間も束の間。


静寂を破るように、始業のチャイムが鳴り響く。


キーンコーンカーンコーン



京「やばい…!ダッシュで帰らないと…!!」



京は再び走り出した。




—————————————————-






教師「えー、今回は

5〜6時間目を合わせて実験を行う。

じゃあさっそく、配ったプリントを見てくれ。

今回の実験は、衣服などを染色する染料の1つ、アゾ染料であるp−ヒドロキシアゾベンゼンの合成実験を行う。」



生徒A「どうして文特(ぶんとく)は5時間授業なのに、俺たちだけ6時間なんだ…」


生徒B「しょうがないさ、今日は実験だから…」



授業が着々と進む教室。

そんな最中




ガラガラガラ!




教室の扉が勢いよく開く

どこかで見た光景だが…


息を切らした京が教室に入ってくる。

授業はすでに始まっている。


京は怒られることを覚悟した。



京「すみません…はぁ、はぁ…

遅くなりました…」



が、意外にも教師からかけられたのは優しい言葉だった。



教師「ああ、京か。

優生から事情は聞いているよ。

ご苦労様、席に着いていいぞ。」



そう、教室から飛び出していく京を見た優生が事情を察して、教師に伝えておいてくれたのだった。



京「優生…ありがとう… (泣)」



京は自分の席に着きながら、前の席に座っている優生にお礼を言う。



優生「いや、そんな大したことしてないって

先生に事情を話しただけさ。

なぁそれよりさ…」



京「……?」



優生「その手に持ってる本なんだ?

行く時そんな本持ってなかったろ。」





京が自分の手の方へ目をやる

そこには、見覚えのある本がしっかりと握られていた。





京「あ…」





教室に向かうのに必死で気が付かなかった。

あの教室で拾った本を、うっかり持ってきてしまったのだ。



京 (しまった…俺たちは今日5〜6時間目が実験だから、返しに行けるのは放課後だ…

文特(ぶんとく)は今日5時間授業だし…どうする…

いやどうしようもないよな…)



京が頭を抱える様子を見て優生が察したのか、少しからかうような口調で言う



優生「お前って、1つのことに集中すると他のことに意識いかなくなるタイプだよな」


京「………ぐうの音も出ない…」



教師「よし、じゃあ実験室に移動するぞー

自分の服をアゾ染料で染めたいやつ以外は白衣着てこいよー」



京は仕方なしに、持ってきてしまった本を机の上に置き、おずおずと実験室へと向かうのだった。







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