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理系男子と文学少女  作者: しださん
出会い編
11/17

これだから理系の人は

私たちの通う女子校は中高一貫で、中学3年生に上がった段階で理系と文系に分かれることになる。


今は中学2年の学期末だから、学生たちはそろそろ自分がどちらの分野に進むかを決め始める。


私はもちろん文系に進むと決めている。

数学は苦手だ。

“あの人”が好きな科目だから、私もその面白さを知りたいと思って、何度か挑戦はしてみたけれど…

どうにも数式は古文や和歌と違い、理解に苦しむ。




矢野「文乃!早く一緒に帰ろ!」


矢野さんが呼んでいる。


文乃「図書室に返しにいかないといけない本があるの。

先に下駄箱で待っててもらえる?」


矢野「あはは、文乃は相変わらずね!

わかった、私も部活の道具を部室に置いてこようと思ってたの!

下駄箱で待ち合わせにしましょ」




矢野さんと別れ、私は一人、図書室へ向かった。


今日返しに行くのは『古今和歌集』。

中学に入って本格的に古典を勉強するようになったことをきっかけに、小説だけでなく、古語で書かれた物語や和歌集なども読むようになった。


古語ならではの表現の奥ゆかしさや、現代とは違う異質な世界観に、私はすぐに引き込まれた。



文乃 (ついでに新しい本も借りて行こうかしら…)



そんな思いつきで、何気無く古文のコーナーを物色していると、読書スペースから声が聞こえてきた。

今は期末前の試験期間。

放課後に図書室で勉強している学生の声だ。



学生A「あー、古文やだなぁ…

うちら理系志望なのになんで古文やんないといけないの…」


学生B「ホント…なんでこんな昔の文章なんて読まされてるんだろ…」



文乃 (……)



これだから理系の人は。

頭ごなしに文系科目を否定する人が多い。”あの人”は例外だけど…

それ以外の人はひどいものね。

大してその科目を知っているわけでもないのに…





「ふ、み、の!」




突然後ろから声がする。




文乃「ひゃっ

な、なによ、矢野さんじゃない。

どうしてここに…」



矢野「どうしてって、下駄箱で待ってるのに、全然来ないんだもん!

ってか、文乃って案外ビビりよね…笑」



文乃「う、うるさいわね!早く行きましょ。」



でも、私はもう昔みたいに周りの意見なんかに流されたりしない。


私には、”あの人”から貰った言葉があるから。




矢野「あはは、待ってよ文乃!」






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