第2話 京都にもゲーセンはある
一日目は有名な寺を見学した後、班ごとに自由行動と定められている。たまよりとゆきちぇを含む班は、5人横一列に並んだまま、寺の敷地内に広がる荘厳な日本庭園に見惚れていた。
「京都の寺やっべぇなおい」
「ね。久々に感動したかも」
「あなどれんな京都……」
霊験あらたかなお寺の歴史と御利益について住職から説明を受けていた時はつまらなそうにしていた彼女達も、目の前に広がる圧倒的な叙景にはただ息を呑むばかりだった。その後も寺内をスマホで撮影したりご当地キーホルダーを買ったりと、由緒ある寺院を女子高生なりの方法で一通り堪能し尽くした。
やがて自由行動の時間が訪れた。たまより達の班は京都の町を散策し、新旧入り混じった不思議な街並みを楽しんでいた。
「そう言えば二泊目の宿に、めっちゃでかい温泉あるの知ってる?」
「マジで!?テンション上がるわ。たまよりちゃんは知ってた?」
「もちろん。っていうか私的にはメインイベントの一つだしね」
施設育ちのたまよりは、小さい頃に寮母さんから温泉に連れて行ってもらって以来、その感動の記憶から若くして無類の温泉好きとなっていた。故に今回の旅行先に温泉があると知って以来、たまよりはずっと楽しみにしていたのだ。
「檜の香りが漂う大風呂で存分に足を伸ばす。旅行には外せないコンテンツだよね」
「わかる。健康と美容にもいいらしいよ」
「とりま健康はどうでもいいけど美容は外せんな」
そんなたわいもない話をしながら歩いていると、不意にゆきちぇが声をあげた。
「あっ、ゲーセン」
「京都にもゲーセンあるんだな」
「いや、そりゃあるでしょ……でもいいよね。古き都にあえてのゲーセン」
たまよりとゆきちぇの二人から、明らかな『よっていきたいオーラ』が滲み出る。
「かがちとゆっきー、ゲーセン寄ってく?」
「うちら買い物してるから、一時間後さっきの寺の前に集合でどう?」
二人が生粋のゲーマーである事を知る他の班員たちは、空気を読んで別行動を申し出た。
たまよりとゆきちぇは有難く気持ちを頂戴し、二人でゲーセンに寄っていくことになった。
「ぐみちゃんたちに気を遣わせちゃったかな」
「まあゲーセンでゼンイチとれば土産話になるっしょ」
「無茶言わないで下さいよ……」
「んじゃ軽く寄ってくか。初見のSTGでミリしらプレイでもしよまい」
「スカイキッド?」
「それはもういい」
そうこう言っているうちに、二人はゲーセンの入り口前まで歩みを進めていた。見知らぬ土地のゲーセンの入り口には、言い知れぬ緊迫感が漂っている。
「知ってるか?京都ではゲーセンも一見さんお断りなんだって。常連とスコアラー以外は入れないらしい。どうするたまより」
「その設定無理があるから」
多少の不安を払拭するかのように軽口を言い合いながら、ゲーセンに足を踏み入れる二人。実際に入ってみると、中は拍子抜けするほど閑散としていた。