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誉れ高き穿孔  作者: 柔肌
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第1話 ゲーマー二人、揺られてバスの中

当作品は、「スコアラー列伝」様というサイトの二次創作となります。



10月の風は、もう寒い。

冬服に切り替えた高校生達が、期待に胸を踊らせて車窓の外を指さす。

修学旅行初日――京都行きのバスは、賑わいを見せていた。




「やっぱり京都の空気は違うよね。なんか古来の風を感じる」

加賀知たまより――「たまより」が視線を手元に落としながら呟く。その手にはポータブルゲーム機が握られ、指元はせわしなく動いている。長い黒髪に、凛とした印象を与える切れ目が特徴的なたまよりは、その見た目に反し生粋のゲーマーである。

「いやまだバスん中だし。ってか修学旅行まで来てゲームかよ」

黒野幸慧――「ゆきちぇ」の小声によるツッコミも、後部座席の女子達の笑い声で半分かき消される。かくいうゆきちぇの手にもスマホが握られており、液晶の中ではデフォルメのキャラクターが剣と剣を切り結んでいる。ショートヘアの毛先に僅かなメッシュを入れたトレンディ嗜好のゆきちぇもまた、その見た目に反し生粋のゲーマーである。

二人とも学校ではゲーマーである事を公言しておらず、最初のうちは周囲に混ざってあれこれ雑談に興じていた。しかし延々とバスに揺られる長丁場にゲーム欲が耐えきれず、どちらからともなくゲームを始めて今に至る。

「ゆきちぇだってポチポチやってるじゃんスマホゲー」

「私はいいんだよ。自由時間はスマホゲーとすれちがい通信しに来てんだから。お前は寺でも巡って古来の風を感じとけ」

「京都の人とお寺さんに怒られるよ……」

たまよりとゆきちぇ――一見して正反対な外見と性格を持つこの二人は、子供の頃からの付き合いである。小学生の頃から常に行動を共にし、色々ありながらも友情は変わらず続いている。あえて分類するなら「親友」と呼んで差支えない間柄だろう。同級生で数少ないゲーム仲間というのも理由の一つだが、それ以上に互いが互いの持っていない部分に惹かれているのかもしれない。もっとも本人たちにそれを言ったところで、照れを隠しながら否定するかもしれないが……。



やがてバスが目的地へ到着し、同級生達がガヤガヤと賑わいながらバスを降りていく。二人はゲームを素早くしまい、何食わぬ顔で皆の輪に加わる。周囲から浮かないゲーマーでいるためには、順応性が大事なのかもしれない。



「おぉ」

バスから一歩踏み出したゆきちぇが、感心したように呟く。

「ほんとだ。古来の風を感じる。何か知らんけど」

古都の空気をめいっぱい吸い込むゆきちぇの隣で、たまよりが感慨深げに歴史ある風景を一望する。


ゲーマー二人、三泊四日の修学旅行がここから始まる。

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