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65.もう一つの魔力

「……魔神の尖兵だと?」


「肯定」


 俺の呟きに律儀に頷く魔導人形。セシリアに関することは俺の命令を全て拒否する癖に、こういうところはしっかりと反応しやがって。


 しかし、この人形からの話は、初めて聞くことが多過ぎる。魔神の事や魔王因子の事だって。『マジカルサーガ』を全てのイベントイラストなどを手に入れるためやり尽くしたが、その辺の事は一度も出て来てなかった。


 精々、セシリアのバレンタイン侯爵領を襲う魔王ぐらいだろう。その魔王だってなぜ復活したのかはわかっていないままストーリーは終わる。


「……絶対に魔王になるのか? それに、どうして彼女がそんなものを持っている? どうして魔王になるんだ?」


「肯定。いままで魔王因子を持つ者で魔王にならずに済んだ者はいません。魔王因子を持つ理由は、確実ではありませんが、彼女が持つ悪意が原因だと思われます。

 魔神は嫉妬、憤怒、色欲、傲慢、暴食、怠惰、強欲の悪意に反応すると私を作った創造主は判断されました。魔力には輝きがあり、聖人ほど明るく輝くものですが、犯罪者などは暗く濁るものです。それは、その7つの悪意によって濁ってしまったからです。その濁りが濃い者を魔神は選んでいると思われます。

 そして、その魔力因子を持つ者の魔力に光を失われた時、その者は魔王となるでしょう」


 魔導人形の話を聞いて俺は思わずセシリアを見てしまう。セシリアもその話を聞いて驚いていた。今の話を信じるとしたら彼女の魔力が濁り始めているって事だろう。


 ……原因はわかり切っている。婚約者である兄上との関係が原因だろう。兄上がヒロインであるメルフィーレと仲が良い事を、セシリアは嫉妬か憤怒……まではいかないにしても怒っているのは間違いない。


 しかし、それだけで彼女がいるかいないのかわからない魔神に選ばれたとは思えない。そのぐらいの感情なら、他にも持っている者は多くいるはずだ。それこそ犯罪者など。


 それなのにセシリアが選ばれた理由はなんなんだ? ……何かあるはずだ。何か


「そして、魔王因子が発現したものたちは互いに引かれ合います。7体の魔王が揃う時、魔神が復活すると、我が創造主は予想されました」


「……だから、集まる前に、魔王になる前に殺すって言うのか?」


「肯定」


 魔導人形はそれ以上語る事はないといった風に構える。どういう技術なのかはわからないが、腕が剣のように鋭く変わっていた。


 俺はその姿を見てセシリアを後ろに下げて黒剣を構える。今はオーバードライブとオーバーソウルを6割ほどで発動している。しかし、これでは魔導人形の動きについていけなかった。……最悪の場合は限界までつかわないと。


 とにかく、セシリアを守りながら目の前の魔導人形を止めないと……そう思っていた時、魔導人形の足下が輝き始める。そして、その輝きが増して光の柱となっていく。


「……光の拘束魔法、ライトピラー」


 後ろでセシリアがぼそりと呟く。魔法は使えないとわかった時点で基礎しか学んでいないが、拘束魔法は難易度が高いと聞く。これが出来る人といえば、この場にいないレイチェルさんしかいない。これなら捕まえられるか、と思ったが


「……魔力拡散領域展開」


 魔導人形が呟いた瞬間、光の柱が消えてしまった。魔導人形は何も無かったかのように動き始め、かなりの速さでこちらに向かって来た。


 だが、魔導人形の速さは思っていたよりも遅く、何とか反応出来る速さだった……さっきよりも速度が下がっている?


 魔導人形の速度に反応出来て、彼女の変わった手を、黒剣で受け止める。力も先ほどに比べて落ちているような気がする。だが、同時に俺の力も抜けていった。


 内から強化するオーバードライブも外から魔力を纏い強化するオーバーソウルも消えてしまった。これはさっきライトピラーが消えたのも関係しているのか。


 黒剣で人形の手を弾くが、下から鋭くなった左足を振り上げて来た。俺は後ろに体を逸らすが、スパッと服が切れた。


 人形はそのまま回転し、鋭くなった右手を横振りに振ってくる。俺はセシリアを下げてしゃがんで避ける。魔導人形の動きが遅くなったといっても、俺が2つの魔法を使った状態でようやくだ。


 俺はすぐに追い込まれてしまった。壁と俺でセシリアを挟むような状態になっている。……くそ、魔法1つさえ使えなければ、なんて弱いんだ俺は。護りたい人が後ろにいても、護れないなんて。


 俺は悔しく思いながらも、魔導人形の攻撃を逸らす。俺が傷を負っても、セシリアだけは絶対に守る。魔導人形の攻撃を逸らし続けたため、俺の後ろにある壁は、俺の後ろ以外はボロボロに刻まれていた。


「はぁ……はぁ……」


 左肩は切られて腕が上がらなくなり、額も切れて血が止まらない。息も上がり少し目が霞んできた。


「で、殿下、もういいです。私が死ねば……」


「ふざけた事を言うんじゃねえぞ。お前は俺が護る。目の前の奴からも、理不尽な運命からも、魔王なんかからも護ってやる!!」


 ……正直何を言ったのかをあまり覚えていないが、こんなところで逃げてこの先セシリアを護れるわけがない。


 力を振り絞れ! 命を懸けろ! 俺の底から絞り出せ!!


『……ちっ、めんどくせぇ』


 心の底から魔力をひねり出そうとした時、そんな声が聞こえて来た。同時に魔力が吹き出す。ただ、今まで俺が使っていた魔力ではなく、途轍もなく濃い魔力が溢れ出した。


 初めて感じる……いや、記憶にはある。俺の記憶が蘇る前の、周りの人たちに嫌われていた頃に使っていた魔力が。


「……ぶっ潰してやる」

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