61.購入
「遺跡から発掘された魔導人形と魔導書?」
「ええ。私どもの方では魔導書を読める者がいなかったもので、詳しくは調べてもらいわかった事なのですが、この魔導人形を動かすためには、手元にある魔導書を読めなければいけないようなのです。どうしたものかと考えていたのですが、そこで殿下の事をお聞きしまして」
それで売りに来たってことか。まあ、興味があると言えば興味があるのだが、なぁ。
「うーん、書店の店長からどういう風に聞いているかはわからないが、俺は別になんでもいいってわけじゃないんだよ。俺自身が強化出来る魔法が覚えられる魔導書を探しているんだ」
魔導人形ってのは変わっていて面白そうではあるが、オーバードライブやオーバーソウルの様な強化系の方が有り難い。そんな事を考えていたら、エンフィが近寄って来た。来客がいるのに珍しいな。そのまま顔を寄せてくる。
「ジーク様、あの魔導人形をご購入された方がよろしいかと」
そして、そんな事を言い出した。エンフィがそんな事を言うのも珍しいな。
「どうしてだ?」
「魔導人形はごく稀ですが出土する事があるのです。どのように作られたのか、何故作られたのかはわからないのですが、何とか解読して動かす事が出来た魔導人形はどれもかなりの性能を持っていると聞きます」
「ふむ。それなら、尚更俺のところに売ってくるのは変じゃないか?」
別に他にも買い取れるところ、しかも既に持っているところの方が、怪しまれずに買ってもらえるのではないのか? そう思ってエンフィに尋ねたが、帰って来たのは別の方からだ。
「それは、難しいのですよ、ジークレント殿下」
声の主はバルクスだった。難しいとは?
「その話は帝国の話になります。2ヶ月ほどかけて行けば行けるでしょうが、現在は隣国の獣王国と戦争中です。入るのには規制がされており、かなりの税がかけられています。しかも治安が悪くなっているようで、これを持って行けば狙われます」
「それなら、安くなってもいいから売れるところで売りたいと?」
「ええ。これを外に持ち運ぶために護衛を雇うのにもかなりの金額がかかってしまいますしね。それなら、この国の王族と縁を結んだ方が良いかと思いまして」
俺の問いに頷くバルクス。流石に買い手に対してそんな話をするのは如何なものかと思うが、まあ、エンフィがそこまで言う物だ。買っても良いかもしれない。だから、そう睨むなよエンフィ。
この4年間、父上に貰っていたお小遣いは、殆ど使わずに置いてある。少しばかり高くても、早く売って手放したそうにしているバルクスだ。値引きぐらいしてくれるだろう。
「それで、いくらだ?」
「そうですね。1千万イェン……と言いたいところですが、先程から色々と話してしまっていますからね。200万イェンでどうでしょうか?」
5分の1の金額か。かなり安くなり過ぎて警戒しそうになるが、それほど運送料などがかかるのだろう。それに比べれば、200万という金額でも売り上げがあるのだろう。そして、それが1番下げられる金額でもあるのだろうな。
それに、俺の手持ち的にも助かる。今あるのは600万ほど。1千万は無理だが、200万イェンなら問題なく買える。
「メルティア、お金を」
「よろしいので?」
「ああ。持って来てくれ」
メルティアは少し俺に頭を下げてから部屋をで出る。ほんの少ししてから袋を持って来たメルティア。重そうだ。それをバルクスに渡すとバルクスは紙を渡して来た。領収書のようなものだ。金額が金額だからな。
「お買い上げありがとうございました。また何かあれば伺っても?」
「今度からは前触れを出してくれよ。今回は特別だ」
「かしこまりました、ジークレント殿下。何かあればご連絡させていただきますよ」
バルクスはそれだけ言うと部屋を出て行く。さてさて、俺は早速魔導人形とやらを確かめさせてもらうとするか。




