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49.関わりのあるストーリー

「……はぁ、やっぱり、ストーリー通り進んでしまうのかねぇ?」


 俺は1人ポツリと呟く。雲一つない真っ青な青空。悩みなんてなさそうなほど綺麗で、太陽が燦々と輝いている。俺はその空をベンチに腰掛けながらぼーっと眺めていた。


「うーん、でも、まだ始まったばかりじゃない。偶々って事もあるわよ?」


 ポツリと空に向かって呟いた言葉を拾ったのは、俺の隣でベンチに腰掛けるエレネが、手にサンドイッチを持ってもきゅもきゅと食べながら答えてくれた。


 ベンチで肩が触れ合いそうになるほど近くに座る俺たちだが、俺は空をぼーっと眺めて、エレネはお腹が空いたからと、学園の購買で売っていたサンドイッチを食べているため、何とも色気の無い光景になってしまっている。


 現在は授業も終わり放課後。放課後と言っても来週に行われるクラス対抗の交流試合が行われるため、授業は午前中で終わって、午後は自学となるのだが。


 クラス対抗の交流試合が行われるのは1年生の時だけ。2年生になれば2泊3日ほどの野営訓練があり、3年生になれば、それを長くした実践訓練が行われる。4年生になると卒業試験などがあるから、そういう行事は無くなるのだが。


 そのため、1年生のこのクラス対抗の交流試合は、ある意味この学年の順位決めみたいな位置付けにある。クラスの順位決め、学生の順位決めといった。


 表立ってはそういう話はしないが、教師たちの中でも関係あるのだとか。俺もこの前知ったのだが。


 そんなわけで、午後に時間が出来た俺たちは、クロエたちのクラスが終わるのを待ってここにいるのだ。クロエたちに聞いたのだが、まだメンバーが決まっていないらしい。あと1人決めるのに手間取っているらしい。


 俺らのクラスは先生がパッと決めてしまった。入学当初に行った実力確認のための訓練で決めたそうだ。交流試合は5人1チームで進めていく。


 うちのクラスの出場者は隣に座るエレネ、ユータス、ユーリエ、そして、いつも俺の隣の席で眠っているリークレットに俺が出場する選手として選ばれた。


 クラスメイトたちも文句を言う事なく直ぐに決まったのも今の現状の原因でもある。


「あっ、あれ」


 5人1チームで1人ずつ戦っていくため、チーム練習などしなくていいから、自分だけの訓練で済むしな、


「ねぇ、ジークっ」


「おん? 何だよ?」


 交流試合について考えていると、隣でサンドイッチを食べていたエレネが、俺の肩を叩く。そして、指を指す。その指先に誘われるように指す方を見ると


「あっ」


 思わず声を出してしまった。エレネが指をさした先には、俺たちの悩みの元凶とも言える少女、メルフィーレがいたのだ。しかも1人ではなくて、3人の男たちと。


 男たちは兄上や攻略対象では無い。どこのクラスかわからないが、身に付けている装飾品からして貴族の子息たちだろう。


「ねぇ、ジーク。あれってさぁ、ストーリーじゃ無い?」


 その光景を眺めていると、エレネがそんな事を言ってきた。ヒロインが男3人に詰め寄られるストーリーなんてあったっけ? 首を傾げていると


「ほら、学園に来たばかりの時に、ヒロインに一目惚れしたジークが取り巻きたちと一緒にヒロインに詰め寄るシーンがあったじゃない! あの話も中庭だったし!」


 興奮気味に話すエレネの話を聞いてようやく思い出した。すっかり忘れていたが、俺が退場するシーンじゃないかこれ。


 ゲームの方だと、ヒロインを自分のものにしようと詰め寄る俺に、兄上が現れてぶちのめされるシーンだ。俺がここにいるからすっかりと忘れていたシーンだ。


「よく分かったな」


「ふふんっ! 何度も見たシーンだからね!」


 胸を張ってドヤ顔で俺を見てくるエレネ。確かにどのルートを目指そうとも必ず起こるストーリーだからな。何度もやっていると覚えてしまうか。


 しかし、そこまで重要ではないストーリーでも起こるのか。登場人物が変わったとしても。これは今後のための良い判断材料になる。


 今回のストーリーはそこまで重要ではないにしても必ず起こるストーリーだ。そういうストーリーに対しては人物が変わっても起こるのだろう。判断材料がこれしかないため確実とは言えないが。


「……遅いわね」


「……ああ」


 そのシーンを見届けようと2人で眺めていたのだが、一向に兄上が現れる気配が無い。男の中で他の2人に比べて良いものを付けている奴が指示を出すと、取り巻きの2人がメルフィーレの両腕を掴んで無理矢理何処かへと連れて行こうとしている。


 ここまで兄上が出て来ないとなるともう来ないだろうな。それに、このまま連れて行かれるのは見ているのもな。……仕方ない。


「お前たち、何をしている」


 これをしたらもう後に引けない気がするが、見て見ぬ振りをする事は出来ない。男たちを止めるとしよう。

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