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47.森へ

「セシリア、位置についたか?」


『はい、今から森の中へと入ります』


 俺の念話に返事を返してくれるセシリア。セシリアには周りからバレないように俺の分身をつけているけど、安心は出来ない。


 他の分身に意識を向けると、他のみんなも位置に着いたようだ。俺の側にはシェイラさんがいるだけで、クロエたちはレイチェルさんと共に俺たちとは反対の西側にいる。


 空を見上げると、星が綺麗に輝いていた。前世の日本でもここまで綺麗に星が見られる場所は少ないだろう。その空を眺めていると


「ジーク様、セシリア様が動き始めました」


 と、俺の後ろに立つシェイラさんがそう言ってきた。結構離れているはずなのだがわかるんだな。俺はシェイラさんの言葉に頷き、みんなに念話を飛ばす。


 俺もそれに合わせて森の中へと進んでいく。森の中は月の光が差し込んで辛うじて足下が見えるくらいになっている。俺はサーチアイがあるため気にすることなく歩く事が出来るが……シェイラさんも問題なく歩けている。


「そういえば、シェイラさんって母上の侍女をする前は何をしていたんだ?」


 こんな時に尋ねるのはどうかとも思ったが、父上が推して母上が信頼する程の実力を持っているって事は普通の侍女ではないだろう。


「私の事はシェイラと呼び捨てで構いません、ジーク様。私は元々は第0番隊にいたのです」


「第0番隊?」


 俺の返しに頷くシェイラ。なんだそれ? 初めて聞くな。ゲームの中でも出てこなかったし、何か特別な隊なのか?


「第0番隊は陛下直属の私兵になります。それぞれがかなりの実力者の上、戦闘以外のスキルを多数身につけた集団となっております。私のように侍女として必要な能力の他、鍜治や商人、様々です」


「うーん、よくわからないな。態々陛下の私兵を作らなくても王国軍があるじゃないか?」


「確かに普通であれば王国軍だけで済むでしょうが、今回のように軍を動かせない場合や、国に関係無い事柄で兵士を動かしたい場合には第0番隊を動かします。例えば……暗殺など」


 シェイラの言葉に背筋がゾクっとした俺はパッとシェイラの方に振り返ってしまった。シェイラは無表情のまま俺を見ていたが……怖いこと言うなぁ。


「……それって本当?」


「今の陛下に変わってからは無いようですが、昔はあったそうです」


「なるほど。それじゃあ、シェイラが母上の侍女をしているって事は……」


「王妃様の護衛を兼ねてでございます」


 なるほどね。しかし、第0番隊か。シェイラ以外に見た事ない……というより、シェイラですら、その隊にいたなんて知らなかったから、他にも会っている中でいるのかもしれないな。


 まあ、今は第0番隊の事より、セシリアの事だ。辺りの俺の影に意識を向けると、セシリアの目の前には野営地があった。思ったより近かったな。


 その中心に縄で縛られている子供たちとシスターが集められていて、その周りに今回の問題を起こした奴らがいた。


 見た目からして冒険者のようだ。それが20人ほど。辺りで警戒しているのを含めると30人にいかない程度か。


「約束通り1人で来たな、セシリア・バレンタイン。えらいじゃねえか」


「私が来たからにはシスターたちを離しなさい。そういう約束のはずよ」


「おーおー、気の強い嬢ちゃんだ。流石は侯爵家の娘ってところか。だが、悪いがこいつらも一緒に来てもらう」


「なっ!? それじゃあ手紙に書かれていた事と違うじゃない!?」


「いやー、初めは嬢ちゃん1人で構わねえと思ったがよぉ……態度がなってねえよなぁ? 嬢ちゃんを最後まで連れて行ったとしてももしかしたら言うこと聞かねえかもしれねえからな……人質として連れて行く事にした」


 クソみたいな冒険者がそう言った瞬間、セシリアの頭上から誰かが降りてきた。そして、セシリアを地面に叩き付けて動けなくする。


 セシリアはその時に顔を地面にぶつけたのか鼻血を出していた。あいつらぁ!


 俺が飛び出そうとした瞬間、俺の肩が抑えられた。振り向くとシェイラさんが俺の肩を掴んでいたのだ。


「落ち着いてください。今飛び出せば子供たちが危険に晒されます」


「だが!」


「わかっております。私が今から子供たちを保護しますので、その瞬間、レイチェルたちに念話をお願いします」


 そう言ったシェイラは右手を前にかざした。何をするのかと思った瞬間、シェイラの体から魔力が放たれた。


 攻撃魔法でも放ったのか? と思った瞬間、シスターや子供たちを覆うように透明な壁が上下左右に発動された。セシリアにも同じ様に。


 セシリアにのしかかっていた男は、その壁に阻まれる様に……腕と足が切り落とされた。なんだこの魔法は?


「さあ、ジーク様!」


 突然の事で戸惑っていたが、シェイラの声で我に帰る。俺は直ぐにレイチェルさんたちに念話を送る。すると、赤い色した犬が5匹が森から走ってきて、刀と矢が飛んで来た。


 突然の強襲に慌てる冒険者たち。矢や刀に貫かれるのと、犬に噛み殺されるのにわかれる。しかし


「てめえら、慌てんじゃねえ! 武器を構えて陣形を取りやがれ!」


 リーダーっぽい奴の指示で冷静になる冒険者たち。俺も四方から森に入らせていた影たちをこちらへと向かわせる。


 俺自身もオーバードライブにオーバーソウルを発動し、剣を抜く。少し出遅れたが俺も向かうとしよう。

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