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42.教会へ

「旦那様! 迎えに来ましたわ!」


 と、昨日と同じように教室へとやって来たクロエ。ただ、昨日と違うのは、クラスの奴らがクロエから距離を取っている事だ。まあ、昨日の事があれば仕方ないとは思うが。


「クロエ、わざわざすまないな。それで今から……」


「わかっておりますよ、旦那様。教会へ行くのでしょう? 昨日お聞きしてから準備は終えております」


 一瞬俺の後ろに座るエレネを睨んだ気がするが、次見た時はニコニコと笑みを浮かべていた。昨日の内に話しておいてよかった。これが今日の朝とかだったら多分また何かあっただろうし。


「ごめんね、クロエちゃん。また、ジークを借りて」


「……別に構いませんよ。旦那様の意思ですし。それに、私も行きますからね」


 俺の後ろに座るエレネが苦笑いしながらクロエに謝るが、クロエはエレネを警戒している。昨日教会の事を話した時点で絶対に行くと聞かなかったものな。


「ねえねえ、何の話をしているの?」


 クロエがエレネを警戒している光景をエンフィと眺めていると、ユーリエとユータスが俺たちの席までやって来た。前に座るマイルもこちらを見て話を聞いていた。


「いや、今日はエレネが育った教会に行く事になっているんだよ」


「きゃあっ! それってもしかしてエレネの親に挨拶しに行くの?」


 ばっ、そ、そんな事を言ったらクロエが……っ! 俺は直ぐに立ち上がりクロエの手を握る。既に左手には刀が握られており、刀を抜こうとしていたからだ。


「もう、ジークったら。まだ早いわよ」


 そんなふざけた事を言ってクネクネするエレネ。なんでそこで煽るんだよ! 俺が必死にクロエを止めているっていうのに!


 それからしばらくクロエを宥めるのに時間がかかってしまい、学園を出るのが遅くなってしまった。


 馬車の中には疲れた俺と少しむすっとしたクロエと、苦笑いするエンフィ。クロエに謝るエレネと、野次馬気分で俺たちを見てくるユーリエとユータスにマイル。結局、他の奴らも付いて来た。まあ、別に構わないけど。


 教会に行く方法は馬車で行く。いくら同じ王都と言っても、中心に近いところにある学園から、外壁側にある教会までどうしても距離がある。度重なる開発で道も入り組んでいるしな。歩きだとどうしても時間がかかる。


 馬車から見える景色を眺めていると、やはり王城に近い方がしっかりと整備されているな。外側へと領地を少しずつ整備しながら広げて行くとしても、どうしても王城に近い方を優先してしまう。


 それに、貧富の差もあり、王城に近い方が貴族の住む家が多く、治安もしっかりとしており、外壁側に近い方が治安がどうしても悪くなってしまう。


 中央も外壁側も差が無くなれば良いのだが、大きく王都を広げてしまった弊害か、兵士をそこまで行き渡らせられないのだ。どうしても人数による限界が来てしまう。父上も悩んでいたな。


「あっ、見えてきた!」


 王都について考えていると、馬車から見えた景色にエレネが声を出した。俺も見てみると、確かに教会が見えてきた。周りの家屋に比べたら綺麗にされている。


 教会の入り口付近では子供たちが走り回っているのと……誰かがいる? その周りに子供たちが集まっていた。


 教会へと次第に近づいて行く馬車に、子供たちは気が付いて、みんな怯え始めた。それも仕方ないか。俺たちが乗っている馬車はそれなりに大きい。この辺りだとあまり馬車も来ないのだろう。精々外に出る時に通るぐらいか。その出入口とも、教会は離れているし。


 そしてそんな子供たちが集まる1人の女性。どうしてここにいるんだ? 訳がわからないまま馬車は教会へと近づいて停まる。


 取り敢えず警戒している彼女の誤解を解くために俺から降りよう。馬車から俺が降りると、驚きの表情を浮かべる彼女、セシリアと目が合った。まさか、こんなところで彼女のいつもと違う表情が見られるなんてな。


「……どうしてここにジーク様が?」


「この教会が友達の育った場所らしくてな。それできたんだよ。それよりもセシリアは1人か?」


「いえ、私は……」


「セシリアさまぁ〜、準備できましたよぉ〜!」


 1人でここにいるのか尋ねようとしたら、教会の中から狐耳の少女がパタパタとセシリアに向かって走って来た。その後ろには杖をついた女性もやって来た。


 狐耳の少女は、俺たちより2歳ほど年下だろう。彼女は元気にセシリアの元へと走って来たが、俺たちを見て驚き固まり、セシリアの後ろへと隠れてしまった。ただ、この教会の子供たちは


「あっ、エレねーちゃんだ!」


「本当だ! エレねーちゃん!」


 と、俺たちと一緒に馬車を降りたエレネに気が付き、わぁーっとエレネの元に集まって行く。一瞬にして囲まれたエレネはやめてと言いながらも嬉しそうだ。


「まあ、これはジーク殿下。このような場所にわざわざお越し頂きありがとうございます。それに、エレネも連れて来てくださり」


 どうやら、杖をついた女性は俺の事を知っているようだ。それでも慌てないのはセシリアで慣れているからかな? それにシスターの格好をしている彼女。多分だがこの人がエレネの育ての親なのだろう。


「いや、こちらも急に来て申し訳ない。子供たちを怖がらせてしまったようだ。お詫びでは無いのだが、子供たちが好きそうなお菓子とおもちゃを持って来た。エンフィ」


 馬車の側で待機しているエンフィに声をかけると、馬車からそこまで多くはないがお菓子とおもちゃを出してくれた。それを見た子供たちがエレネからお菓子の方へとわぁーっと走って行く。1人取り残され、お菓子やおもちゃに負けたエレネは、怒りながら子供たちの元へと向かう。


「まあ、ありがとうございます。少し散らかっておりますが、中へ入ってくださいな」


「ああ、すまない」


 俺はシスターの言葉に頷いて後に続く。セシリアから話を聞きたいし、お言葉に甘えるとするか。

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