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41.協力

「……ええっと、私の聞き間違いかしら? 今、セシリアを助けるのに協力して欲しいって言ったかしら?」


「ああ、そう言った」


 俺が頷くと、呆れた様子で俺を見てくるエレネ。


「ジーク、君はこのゲームやったって言ったよね? それなら、彼女がどうなるかわかっているんじゃ無いの? あのルート以外は必ず魔王に殺されるって」


 溜息を吐きながらそう言ってくるエレネ。そんな事はわかっているよ。彼女を唯一救えるルート……百合ハーレムルート以外に無いっていうのは。


 彼女を救える唯一のルートである百合ハーレムルートは、ヒロインが各攻略対象の家族と出会って、互いに恋をしていくルートだ。


 ただ、これはかなり難しい。まず、いくつかのルートを攻略していないといけないし、早い段階で攻略対象の家族と会っておかないといけない。それも、ある程度攻略対象との親密度を上げておかないといけないし。


 女性プレイヤーからすれば、あまり好むルートではない。好きな攻略対象はあまり出て来ない上に、スチルも集められないから、好んでする人はいないルートだ。精々トロフィー集めが好きな女性ぐらいだろう。


 当然、この世界ではそんな事は無理なのはわかっていたので、初めからそのルートでセシリアを助けようとは考えなかった。思っていた通り、攻略対象たちはメルフィーレに惹かれていたようだし。


「もちろんわかっているさ。だけど、可能性が無いわけじゃない」


「……どういう事?」


 それから、俺がこの世界で前世を思い出してからの事を話していく。エレネは腕を組みながら真剣に話を聞いてくれた。


「……なるほど。全てがゲーム通りのシナリオってわけじゃないってことね?」


「ああ、エレネも初めて俺にあった時に疑問に思っただろ? ゲームだと太っていた俺が痩せているのを見て」


「確かに、初めて君を見たときは驚いちゃったものね。でも、ジークの推測だと」


「ああ、今のところは物語の大筋に関係無いところしか変えられていない。現に兄上とセシリアの関係を変えられなかったしな」


 悔しい思いが蘇るが今は良いだろう。俺の言葉を聞いて、エレネは考え込んでしまった。


「……どうしてジークはセシリアを助けたいの? 君もゲームをしたのならわかっているでしょ? 彼女の死は避けられないって」


「それを変えるためにエレネに協力して欲しいんだ。俺1人じゃ難しいのはこの数年で思い知ったからな」


 この4年近くの事を思い出して自称気味に笑ってしまった。2人の仲を何度か取り持とうとしたが意味がなかったからな。


「……どうして、セシリアを助けたいの? 私もチラッと見たけど、もしかして好きになっちゃった? クロエちゃんに殺されちゃうわよ?」


「そんなんじゃねえよ。……ただ、あのゲームのシナリオが許せなかっただけだ。それに、この4年間、彼女と出会ってからは余計にな」


「ふーん……まあ、いっか。面白そうだし。でも、まさかタダじゃ無いわよね?」


 そう言って楽しそうな笑みを浮かべるエレネ。協力してもらえる事にはなったが、見返りか。やっぱり金なのだろうか?


「俺が出来る範囲でなら何でも聞く事は出来るが」


「ふふ、そんな警戒しなくても良いわよ。ただ、私の育った教会を立て直して欲しいだけなの」


「教会?」


 俺が疑問に思って尋ねると、彼女は色々と話してくれた。彼女はどうやら生まれた時から前世の記憶があったらしい。


 彼女の母親は、だらしのない男を好きになる性格だったようで、借金するほど貢いでいたらしい。その男との間に生まれたのがエレネのようで、初めは普通に育ててくれていたようだが、男が捨てて来いと言ったら、教会の前に置かれたそうだ。


 赤ん坊の時だったからうろ覚え、って言うが、中々壮絶な経験をしているじゃないか。俺なんかよりも。


 そして、教会のシスターが教会の前に置かれていたエレネを見つけて中へと入れてくれたそうだ。教会の中には孤児院のような事をしているところもあるようで、彼女が拾われた教会も、同じように孤児がいたそうだ。


「私たちを育ててくれたシスターはもう歳だからさ。少しは楽させてあげたいの」


「なるほどな。そう言う事なら俺も出来るだけの事はすると約束しよう。教会は王都内にあるのか?」


「ええ。まあ、王都と言っても、外壁近くにはなるけどね」


 外壁近くというと、あまり大きな声では言えないが、裕福ではない平民が数多くいる場所だ。父上も何とかしたいようだが、貧富の差は中々縮まらないと聞いた覚えがある。


「まあ、教会は明日にでも行こう。今日は悪いがクロエたちを待たせているし。それじゃあ、エレネ」


「ええ、私の記憶で役に立つかわからないけど、協力するわ、ジーク」


 こうして、俺とエレネはセシリアを助けるために協力関係になる事が出来たのだった。ただ……


「ふふっ、旦那様。今日はもう離れませんからね?」


 と、眠る瞬間までクロエは離れてくれなかった。お風呂は……まあ、何とか耐えたとだけ伝えておこう。

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