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28.盗賊

「おらっ!」


 横から振り下ろされる木の棒を剣で弾き返して、オークの丸々と太った横っ腹に右足で蹴りを入れる。強化した蹴りをモロにくらったオークは「グボッ!?」と、悲鳴を上げて吹き飛ぶ。


「ブモォ!」


 別のオークが背後から木の棒を振り下ろしてくるが、俺は左腕を強化魔法で強化し、振り返りながら木の棒を防ぐ。ズシンッ、と左腕に衝撃が来るが、木の棒の方が耐え切れずへし折れた。


「モードエアリアル!」


 そして、俺は剣に魔力を流して能力を発動する。発動した瞬間剣身に風を纏わせる俺の剣。前世の頃見ていたアニメの某騎士王の真似をして、風を纏わせた突きを放つ。


 剣の先から放たれた風の突きは、オークの体を容易く貫き、後ろの木すら貫通していった。


「残りは3……いや、終わったか」


 俺がオーク2体を倒している間に、クロエとエンフィが残りのオークを倒してくれたようだ。


「ふふっ、旦那様、お怪我はありませんか?」


「大丈夫ですか、ジーク様?」


「ああ、俺は大丈夫だよ。2人も怪我は無いか?」


 俺の言葉に2人は頷く。大分魔物を狩るのにも慣れてきたな。俺たちがコーネリア伯爵領に来て、今日で6日目。明日、王都に出発する予定なのだが、今日まで毎日森へと俺たちは来ていた。


 初めはレイチェルさんとアルフォンスさんたちが付いて来ていたけど、4日目辺りから


「もう、大丈夫だろう」


 と、付いてこなくなった。それで良いのか護衛、と思ったけど、多分何処かで危険がないか見ているのだろう。


 それから、3人で手分けしてレイチェルさんに教えてもらったオークから剥ぎ取りをしていく。数日にもなれば案外慣れてくるもんだな。


 初めはどこを切れば良いかわからずに、血管とか切ってしまって血塗れになったのも今では良い思い出だ。クロエもエンフィも慣れた様子で剥ぎ取っていく。


 しばらく3人で剥ぎ取りをしていると、何か声が聞こえて来た。3人で顔を見合わせていると、次第に声が大きくなっていく。


「……誰か追われているのか?」


「わかりませんが、こちらに来ているようですね」


 次第に近づいてくる声に、俺たちは武器を手に警戒する。次第に大きくなる足音。そして


「はぁ……はぁ……もっと走れ、ミル!」


「ま、待ってよ、お兄ちゃん! も、もう走れないよ!」


 現れたのは俺たちとそう年の変わらない子供たちだった。更にその後ろからは複数人の男たちがやって来た。


「これはどういう状況なんだ?」


「旦那様、恐らく盗賊ではないでしょうか?」


「盗賊?」


「ええ。盗賊になる者は様々ですが、彼らの装備を見るに恐らく冒険者ギルドで罪を犯して、冒険者としての資格を剥奪された者でしょう」


 ……なるほどね。そういえばゲームの中でも冒険者になって訓練とお金を稼ぐ事が出来たな。ギルドへの貢献度によっては2章で手助けして貰ったり出来たんだよな。


 俺たちと盗賊に挟まれる形になった少年と少女の2人は、俺たちと盗賊たちを交互に見てどうしようか迷っているようだ。


「あぁん? なんだあいつらは?」


「さぁ? そいつらを追いかけていたらいたようですぜ」


「へぇ〜、中々の上玉もいるじゃねえか。あいつらも狙うか」


 ……ふむ、何か聞き捨てならない声が聞こえたぞ? 盗賊の奴らは逃げて来た少年たちと俺たちを見てニヤニヤとしながら武器を抜き始める。


「く、くそっ、どうすれば」


「お、お兄ちゃん……」


 それを見て戸惑う少年たち。まさかここでこの経験もする事になるとは。


「クロエとエンフィは少年たちを連れてここから逃げるんだ」


「……旦那様はどうするのですか?」


「俺か? 俺は王族として民を傷付ける輩を放ってはおけない。奴らをこの手で捕らえる……最悪殺す」


 俺は剣を抜き盗賊たちの方へと向かう。少年たちは戸惑いの目で俺を見てくるけど、俺は2人を通り過ぎて盗賊の方へと向かう。


「なんだ、小僧。捕まりにきてくれたのか?」


「黙れ、下衆ども」


「あ?」


「俺の名前はアルフォール王国第2王子、ジークレント・ヴァン・アルフォールだ。俺の目の前で民を傷付けるお前らを許さん」


 俺はオーバードライブにシャドウクリエイト、そして3つ目の魔導書によって手に入れた魔法『オーバーソウル』を発動する。


 オーバーソウルは、空気中に漂う魔力を自身の鎧へと変換する魔法だ。しかも、これによって体内の魔力を使わずに剣の能力を発動する事ができる事がわかった。


「だだ、第2王子だと? な、なんでこんなところに!?」


「う、うろたえるんじゃねえ! こ、こんなところにいるわけねえだろ! 手前らやっち……え!?」


 仲間へと命令をする男がこの盗賊の頭だと思った俺は、頭の元へと向かう。オーバードライブで強化された上にオーバーソウルでも強化された俺の速度に、盗賊の頭は全く反応出来ず、俺は頭の首を刎ねる。


 簡単に宙を舞う人間の首。俺は込み上げてくる吐き気を我慢して、シャドウクリエイトで作った自分の分身に残りの盗賊へと向かわせる。


 盗賊たちは奮戦するが、オーバードライブで強化した状態で使った分身の方が強かったようで、10分もしないうちに盗賊たちの半数を捕らえて、もう半数は殺した。


 俺はかなり魔力を使った疲労にその場に座り込み、初めて人を殺した手の感覚に、吐き気を催して吐いてしまった。


 俺の名前を呼ぶクロエとエンフィの声が聞こえてきたけど、精神的に限界が来ていたのか、俺はそのまま気を失ってしまった。

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