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21.父上の依頼

全話から時間が経っていますが間違っていませんので。

「……視察ですか?」


「うむ。お前もそろそろ王族としての責務を果たすべきだろう。何、そう重く受け止める事は無い。場所も王都から馬車で2日ほどの領地で宰相も同行する。お前は宰相の仕事を見て学べば良い」


 俺と兄上の11(・・)歳の誕生会を終えた1週間後、俺は父上に呼び出されていた。呼び出される理由、何かあったっけ? と、思いドキドキしながらきたけど、少し安心した。


 視察か。そういえば、兄上は何度かしているんだっけ。それでどっかの貴族の不正を見つけたとか何とかで話題になっていたな。その頃俺はレイチェルさんと修行をして、エンフィに文字を教えていたっけ。


「陛下の言う通り心配する事はありませんよ、殿下。視察といっても何か問題のある領地などではありませぬし、それに殿下とも関わりのある領地ですよ」


「俺と関わりのある?」


 一体どう言う事だろうか? 首を傾げていると父上が笑みを浮かべながら答えてくれた。


「ジークに行ってもらう領地はコーネリア伯爵家。お前の母で私の愛する妻、メリセの実家がある場所だ」


 ……なるほど。確かにそれは俺にも所縁ある土地だな。それによくよく考えれば記憶のある限り王都を出るのって初めてじゃないか。


「出発は明後日になるから準備をしておくように」


「視察にはレイチェルさんや私の侍女たちを連れて行っても?」


「勿論構わぬ。それからジークと宰相の護衛に第5部隊が付いていく。まあ、緊張する事はない」


 そこまで準備してもらえるのなら大丈夫だな。俺は了解して執務室を後にする。出る時にニヤニヤとしていた父上たちが不思議だったが、まあ、大丈夫か。


「お帰りなさいませ、ジーク様」


 部屋に戻って出迎えてくれたのはメルティア……ではなく、2年前、俺の侍女になったエンフィだった。部屋の中はエンフィだけのようで、メルティアもレイチェルさんもいなかった。


「ただいま、エンフィ。他のみんなは?」


「メルティア先輩は昼食を取りに行き、レイチェルさんはテルマさんを呼びに行きました。あっ、そういえ宰相閣下の補佐から明後日より視察に向かうと聞きました。レイチェルさんもそのためテルマさんを呼びに行ったのです」


 なんだ、初めから俺が連れて行くのをお見通しだったってわけか。


「そうだったのか。うん、その通りだ。当然エンフィにも来てもらうからな」


「勿論です、ジーク様!」


 俺の言葉に笑顔で頷いてくれるエンフィ。文字を教える代わりに俺の侍女になってから2年、普通に本を読む分には苦労をしない程度にはエンフィは文字を覚える事が出来た。


 今は魔導書を読むためにカタカナを勉強しているが、これが難航している。エンフィやこの世界の人間は文字が違うのに同じ読み方をするのが不思議で仕方ないそうなのだ。


 まあ、それは仕方ないよな。カタカナは漢字の一部を使っているとも言われているし、由来など知らなかったら難しいだろう。


 今は魔導書を読むために無理矢理読み方を教えているが、あまり上手くは行っていない。この世界にも今の文字となった起源のような物があればまた違うのだけどな。


「ジーク様?」


「ん、何でもない。魔導書はどんな感じだ?」


「……所々穴抜けのようには読めるようになりましたが、魔法は覚えた感覚はありません。やはり、ジーク様がおっしゃる『カタカナ』とやらを読めないといけないようです」


「そうだな。俺も今まで3冊読んで来たけど、序章を読み切ってどんな魔法かわかったからな。両方読めないといけないんだろう。もし良かったら俺が……」


「だ、だめですよぉ! あ、あの本は私が読むんです!」


 俺の言葉にあわあわと慌てるエンフィ。初めて手に入れた魔法『オーバードライブ』の後に毎年誕生日にのみ買う事が出来た魔導書を読んで、魔法を使えるようになっているのを知っているエンフィは、自分より俺が先に目的の魔導書を読む事を恐れている。


 自分が母親のために覚えたいと思っているからだ。まあ、当然だが俺のは冗談だ。少しからからかおうと思って言っただけで、こんなに反応するとは思わなかった。


「ははっ、冗談だよ。それじゃあ、メルティアたちが戻るまでカタカナの勉強をしようか」


「はいっ! お願いします!」


 ◇◇◇


「すまないな、ハイネル。今回俺は手が離せぬからな」


「構いませんよ。グルディス殿下とセシリア嬢の仲があまり芳しくありませんからね。王妃様もあの手この手で仲を持とうとしたようですが、グルディス殿下が……」


「ああ、頑固過ぎたな。かといって発表した後に相手を変えるとなると、バレンタイン侯爵に迷惑をかけてしまう。全く、ああいうところは融通が利かないのだから」


「はっはっ、仕方ありませぬ。あと少しで殿下たちは学園に入る事になります。場所が変われば気持ちも変わる事があるでしょう。それよりも、見つかって良かったですな」


 俺はハイネルの言葉を聞いて頷く。俺もようやく見つかってメリセと一緒にホッとしていたところだ。こちらはグルディスたちと違って上手くいって欲しいところだが。


 ようやく見つかったジークの婚約者だからな。

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