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13.街へ

「駄目です」


 いざ、兄上の誕生日プレゼントを買いに行こうと母上に頼みに行った際の言葉がこれだった。


「ど、どうしてですか、母上。勿論メルティアやレイチェルさんにはついて来てもらうつもりですよ!?」


「そういう事ではありませんよ、ジーク。あなたの気持ちはわかります。ジークには少し難しいかもしれませんが、セシリアちゃんは既にグルディスと婚約しているのです。

 この事は少しすれば通知する予定です。それなのに、婚約者以外の男の子と歩いて入れば、その事を揚げ足取る貴族が出て来ます。ましてや、婚約者の弟であるジークと歩いていたとなれば尚更です」


 ……そういう事か。確かに何か方法は無いかと考え過ぎてそうところまで頭が回っていなかった。だからメルティアやレイチェルさんは微妙そうな表情を浮かべていたんだな。


「申し訳ございません、母上。そこまで深く考えていませんでした」


「いえいえ、それぐらいいいのですよ。それに、あなたがセシリアやグルディスのために思って言ってくれたのはわかっているから。よしよし」


 笑顔で俺の頭を撫でてくれる母上。くすぐったいけどされるがままになっていると、にこにこと笑みを向けてくるメルティアたち。少し恥ずかしくなってしまったので、ここで退出する事にしよう。


「母上、俺たちは失礼します」


「そうね。セシリアちゃんの勉強も始めなきゃいけないしね。グルディスとセシリアちゃんの事は私たちがちゃんと考えてるからジークは気にせず自分の事に集中しなさい」


 俺たちはその言葉を最後に部屋を出る。セシリアのために一肌脱ぎたかったけど、失敗してしまった。次はもう少し考えて行動しよう。


「2人ともごめんね。考え無しに行動してしまって」


「いえ、私はジーク様の優しい一面を見ることが出来て良かったと思います」


「まあ、少しは相談はして欲しいけどね。それよりこれからどうするんだい? もう一度訓練場は行くかい?」


 俺はレイチェルさんの言葉に考える。そうだなぁ。今日は先生がこないため勉学は夕方からの読書だけで構わないから、今日はもう少し体を動かすか。だけど、この時間帯から確かに兄上も訓練場を使うはず。どうしたものかと考えていると


「それなら、街へと向かいましょう」


 と、メルティアが言う。メルティアがそんな事を言うなんて珍しいな。そう思って尋ねてみると


「さっきはグルディス様の誕生日で頭がいっぱいだったようですが、同じ日にジーク様もお誕生日の事を忘れてはいませんか?」


 ……あっ。そういえばそうだな。俺って双子だった。前世の記憶があるせいで自身の誕生日には無頓着だった。どうせ祝ってくれる人もいないし、と気が付いたら祝わなくなっていたから。


「すっかり自分の誕生日の事を忘れていたよ。でも、外に出て良いの?」


「はい。本当の事を言うと既に陛下からは許可を得ていたのです。今日の午後はその予定を考えていたところに、ジーク様が同じような事をおっしゃったのでびっくりしちゃいましたよ」


 ……ははっ、そりゃあびっくりするよな。まさか、自分が考えていた事をやろうとした相手が別の相手に同じ事をしようとするなんて、そうある事じゃない。


「グルディス様とジーク様の誕生会で陛下や王妃様が選んだプレゼントはあるのですが、自分でも好きなものを1つ買っても良いと、陛下より許可とお金を賜っております。

 ただ、条件として夕方までに帰ってくる事。レイチェル様及びもう1名ほど護衛をつける事。私、又はレイチェル様の側から離れない事を条件としています。これが守れるというのなら街へ行っても良い、と陛下のお言葉です」


 ふむふむ、それぐらいなら十分守れる。記憶が戻る前は無理だろうけど。


「わかった。大丈夫だよ」


「それでは準備を致しましょうか。レイチェル様。申し訳ないのですが、レイチェル様が信頼出来る方を1名護衛として連れて来てはくれませんか。陛下の名前を出す許可は得ております」


「わかった。1時間後で良いかい?」


「はい、構いません。それではジーク様。参りましょうか」


 そこでレイチェルさんと分かれた俺たちは自室に戻り外出用の服に着替える。動き易いけど気品溢れる高級なもので、少し見栄え良くするために装飾品が少し多い。


 服装を決めているだけレイチェルさんと約束した1時間なんてあっという間で、直ぐにその時間へとなった。


 メルティアが言っていた通り、馬車は用意されており、御者が馬を撫でていた。そして、馬車の横には既に来ていたレイチェルさんともう1人兵士と思われる人が立っていた。黒髪黒目で髪も少し短めの女の人のように見えるほど綺麗な人だ。多分男だよな? 少し疑問に思いながらもレイチェルさんに声をかける。


「お待たせ、レイチェルさん」


「いや、私も今来たところだ。ジーク様、こいつが今回連れて行く奴で、テルマだ。不思議そうな顔をしているから言うが、こいつは男だよ。ほらテルマ、挨拶しな」


 レイチェルさんに促され頭を下げるテルマ。やっぱり男か。でも、ところどころの仕草が少し女っぽく見えるのはなぜだろうか?


「はい……お初にお目にかかります、ジーク様。私は第3隊の一員でテルマと申します。平民出身のため家名はありません。よろしくお願いします」


「……ああ、よろしくテルマ。それじゃあ早速馬車に乗って行こうか。時間も限られているし」


 俺の言葉に頷くみんな。少し不思議な男、テルマを加えて街へと出発だ。記憶が戻ってから初めての街。さて、どんなものがあるのか。それに、好きなのもの1つか。何を買おうか。

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[気になる点] テルマって男装の女性ですか? だとしたらあざとい、周りを女性ばかりで固めるのは何だかキモい。
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