第1章1 『全裸の理由』
俺————安西裕也の人生を、説明するのはたやすいが、今の状況を説明するのは、不可能と言っても過言ではない。
典型的なオタクであり、典型的な童貞である俺には、まず無理だ。
だが、一つだけこの状況に陥ってから、瞬時に理解することができた事がある。
それは俺が全裸だという事———。
だが、たとえその事実を知っても、全裸の理由を理解するのには足らなすぎる。
だが、次の瞬間から俺は全裸の理由を理解するに至る。
「うふふ。ユーマ様~まってえ~」
「ひっ」
声の主が分からない、『声』に俺は咄嗟に反応してしまう。
その瞬間に俺はある二つの感情に全身を支配される。
二つの感情とは言うまでもない。
そう。その感情とは紛れもなく、恐怖と好奇心であった。
声の主を見てみたい。
だが、俺がもしそちらの方を見てしまうと、自分がどうなるのか分からない。
その二つの感情が、俺の中で大戦争を勃発させる。
なんだ!あの声!超エロいな!
うん。でも超怖えな。見た瞬間死ぬ展開も待ってるんじゃね?
俺の中での大戦争で、恐怖軍と好奇心軍が、激戦を繰り広げる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・結果。俺の中での大戦争では、好奇心軍が恐怖軍との僅差で勝利した。
え?どうしてそうなったかって?そんなもん簡単だ。声がエロかったから・・・その・・・エ、エロいんだよ!
理由になっていない気もするが、まあ大体こんな感じだ。
声の主を見てみたいという思いが、俺のチキン精神に勝利した。ただそれだけだと・・・・思う。
俺は緊張と興奮を鎮めるように胸に手を当て、深呼吸する。そして再確認する。———やっぱ俺全裸じゃん。
よし!心の準備は整った。いざ尋常に勝負!
俺は掛け声とともに勢いよく、『声』がした右方向に顔を傾ける。
俺は、思わずそこで見た衝撃の光景に息を呑む。
まるで、アニメのキャラクターのような銀髪超絶美少女が俺同じく、全裸で————スヤスヤと気持ち良さそうに眠っているではありませんか。