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第5話 王都アルカディア

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 しばらく走っていると、辺りの風景も大分変わってきた。荒れた大地は無くなり、緑豊かな大地へ。木々も生い茂りのどかな風景だった。

 そんな風景を見て改めて実感する。自分は異世界に来たのだと。そしてこの世で英雄にならなければならない。それは果てしなく険しい道のり。しかしやらなければならない。不安と、実はそれなりに楽しみだという二つの気持ちが出てくる。

 

 フウマのそんな葛藤などいざ知らず、姫は馬を早める。急いで城に戻り報告しなければならないことがたくさんあるからだ。

 そして、時にして数時間経った頃。ついに目的地に着いた。高台からそこを見下ろす。大きな城に、賑やかな街。恐らく、ここが姫たちの国なのだろう。

「ここが目的地ですか?」

「そうだ。ここが我らの王都、アルカディアだ」

 フウマの問いに姫は答える。アルカディア。そう称された場所はまさに理想郷を表すに相応しい場所だった。緑豊かな大地に恵まれ、王都の周囲と中央を通る川は濁りなく美しさがある。そしてこの雲一つない晴天さが素晴らしい。

 先ほどまで暗い雰囲気の中、命を失いかねない事態だった故にここに来てフウマは安堵した。それと同時にどっと疲れが出た。緊迫した状況の連続で、訳も分からぬまま連れてこられたのだ。疲れが出て当然だった。


「大丈夫か?」

「なんとか…ね」

 姫の問いに、フウマは乾いた様な笑いで返す。まだこれからが本番だとフウマは改めて気を引き締める。

「これから王都に入り、城へ行く。貴様の尋問はそれからだな」

 

 尋問…その言葉にフウマはゾクっとする。まだ安心してはいけないのだ。ここへ来たのは、保護してもらう訳ではなく、事情を聞く為。炎龍の襲来で、あの場での尋問が出来なかっただけで、まだフウマが受け入れられた訳ではなかった。

「王都に入ったら、警戒が厳しくなる。その抜身の剣はガーランドに渡しておけ」

 そう言われてハっとして右手を見る。あの聖堂からずっと握りしめたままであった。一体この剣は何なのか……。この世界では何が起きているのか…フウマ自身も聞きたいことが山ほどあった。

 剣をガーランドへと預けると、そのまま王都へと進行する。

 

 王都入り口まで姫は近づく。目の前には大きな城門がある。かなり大きい城門で、恐らく大量の荷や、住民が出入りしやすい様に大きくされているのだろう。

 さらにこの大きさだと、城壁も高く、街を大きく囲むこの壁は、この城下の堅牢さを思わせる。

「随分と強固な守りだな」

「当たり前だ。魔物に侵入されないためだからな」

 フウマの問いに、そっけない声で答える姫。

 

 姫一行は城下町を守る門の所へ行くと、ガーランドが門を守っている兵士に命令した。

「門を開けるのじゃ!姫様のご帰還である!」

 ガーランドがそう命令すると、大きな門が仰々しい音を立てながら開いていく。

 開いた門から城下町へ入ると歓声が聞こえてきた。

「姫様だ!」

「姫様のお帰りだ!」

「ガーランド様もいらっしゃるぞ」

 どうやらこの国に住む人たちのお出迎えらしい。様々な人たちが姫の帰還を祝っている。


「(いつかは俺もこうなるのかねえ…)」

 フウマはそんなことを思いつつ周囲を見渡す。よく見ると祝ってくれているのは人間だけではなかった。

 見渡してみると、トカゲみたいな恰好?したのもいれば羽の生えたのもいる。他にも小さな妖精とでも言うべきものが飛んでいる。

「(本当に異世界ってああいうのいるんだな。こういうのって漫画やアニメだけかと思ったが)」

 実際の異世界の空気を味わいながら、先に進む。姫の帰還を祝う人たちはまだいたが、特に暴動が起きることなく平穏である。それだけ治安がいいのか、国の中枢に対する信頼が厚いのかは分からないが、どうやらここの国民は姫やその兵達を慕っているようだった。


「……驚きか?」

「え?」

 突然姫がそのようなことを聞いてきた。

「このように我らが慕われているなど驚きかと聞いているのだ。私は何もしていないのにな」

 そう言った姫の顔は辛そうだった。その言葉の意味は分からず、フウマはただ黙っていることしかできなかった。

 そのままフウマ達は祝ってくれる人たちに手を振りながら進んでいく。街並みは穏やかで、感じからすると洋風な建物が多い。レンガでの建築が主で、造りもしっかりしている。

「(異世界の建築もこちらの世界と遜色はないのか。向こうとそんなに違和感なく暮らせそうだな。普通に暮らせれば…だけど)」

 そんなことを思いつつ、周りの建物を見る。すると


「城が見えてきたな。フウマよ。あれが我が王国の城、アルカディア城だ」

 姫が前方を指さしながら話す。その方向を確認すると、とても大きな城があった。四つの塔が存在し、それに沿うように城壁がある。そしてその中央に、ひときわ目立つ建物があった。恐らくそこが王のいる場所だろう。

 城門の前まで行くと、数人の兵士が並んで待機していた。どうやら街の騒ぎから、姫の帰還を知り、出迎えに来たらしい。

「出迎えご苦労。アベル騎士団長、今戻ったぞ」

姫は馬から降りアベルという騎士にそう言った。すると少しガタイのいい堅物そうな男が一歩前に出て、礼をしてくる。恐らく彼が騎士団長のアベルなのだろう。


「無事にご帰還なされたこと嬉しく思います姫様」

 アベルは姫に一礼する。そして姫の後ろにいるフウマに目を通す。

「姫様……その者は?」

 怪しいものを見る目つきでフウマを見るアベル。仕方のないことだろう。鎧を着た兵士と、美しき美貌を持つ姫のいる場に、スーツ姿の異質な男がいるのだ。

怪しんだのはアベルだけでない。このアルカディアに入ってからフウマはずっと訝しげな視線を送られていた。それでも何も起こらなかったのは、姫と一緒にいたからだろう。


「この者は、女神レヴェリア様の聖域にいた男だ。名はフウマと言う。何故聖域にいたのか問おうとしたのだがな、炎龍(レッドドラゴン)が近くにいたためここへ連れてきた」

 姫のその言葉にアベルは一層不信感を露わにする。それ程までに聖域に立ち入ったことが許せないのだろうか?とフウマは考えるが、アベルからの視線が痛すぎてうつむくことしかできなかった。

「そのような怪しい者を城にいれて大丈夫なのですか?」

 アベルは姫に問う。

「聖域にいたというのでさえ禁忌なのに、それに加え聖域周辺に炎龍が来るなどありえませぬ。この者は魔王の手先なのでは?」

 

 アベルはフウマを睨みつけながらそう言う。フウマは反論したかったが、ここで余計なことを言えばこの男に斬られそうだったので、黙っていることにした。

「(さっきからずっとこんな状況ばかりだな俺。本当にこんなので英雄になれるのか?)」

 そんなフウマの気持ちなどいざ知らず、姫はアベルの進言に納得したように頷いた。

「其方の言うことはもっともだ。まだこの男が何者なのかも判明していない。とりあえずはこの男は地下牢に入れておこうと思う」

 姫はフウマの方を見て少しばかり申し訳なさそうな顔をしながら言った。

 なぜそんな顔をするのかは謎だったが、一つだけ分かったことがある。

「(英雄になる前に罪人になっちまったぞ……)」

 天を仰ぎながら、フウマは笑うことしかできなかった。


異世界の国家を作るのは大変ですね

洋風な建築は異世界感があるし、読む人も想像しやすいんじゃないかなぁと思います。

そして新キャラのアベル騎士団長。堅物キャラ多い気がする


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