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第3話 出会い

改行して読みやすくしました。

「さて、英雄になるったってどうすればいいんだ?金も無きゃ武器も何も無いぞ。鎧とかだってないしなぁ……スーツ姿の英雄なんてダサいなぁ」

 どうするか決めたはいいが、それを実行する為の足掛かりになるものがない。何しろ急にここに連れてこられ、英雄になれといきなり言われたのだ。さらに勝手もわからぬまま力とやらを渡され、碌な説明もなく消えられたのだからどうすればいいのか分からないのは当然だった。

 

 何かないか周囲を調べていると、祭壇の女神像に仕掛けがあるのを発見した。女神像の持っている杖の先端が回るようだ。回してみると、ゴゴゴゴと軋む音を立てながら祭壇が動いた。するとそこから下へ向かう階段が出てきた。

「本当にこういう仕掛けってあるんだな……」

 少しばかり驚きながら、歩を進め階段を降りる。

 階段を降りると廊下のような場所に出た。壁にかかっている松明のような明かりを元に先を進むと扉を見つけた。


「この先に何かあればいいんだが…」

 不安と期待が入り混じった気持ちで扉を開ける。中は広い空間になっており、円形上の部屋であった。辺りは暗くてよく見えないが、恐らく最深部であると思った。

「暗いな……こんな場所何のためにあるんだ?」

 

 そう呟きながら歩を進めると、急に周りの燭台に火が灯りだした。急なことで驚き足を止める。全ての燭台に火が灯った時、部屋の中が見渡せるようになった。

 見渡してみると壁には様々な絵が描いてあった。剣を持った人物が化け物と戦っていたり、黒い悪魔のようなものが人間を襲っている様なものが描いてある。

「何かの壁画か?こういうものは何か意味があると思うが、俺にはわからねえな」

 

 ポリポリと頭を掻きながら、中央に進む。進みながら気づいたことだが、中央には台座のようなものがあり、そこに剣が刺さっている。近づいてみると大層な剣だということが分かった。錆もなく装飾も施されている。


「立派な剣だな。こういうのって勇者の剣とかで大抵封印されてたりするものだが、どうなのやら…」

 恐る恐る剣の柄に手を伸ばす。柄を掴み、思いっきり引き抜いた。すると簡単に引き抜けた。あまりにも簡単に抜けてしまったので、ちょっと拍子抜けした。

「あっさりと抜けるもんだなぁ。こういうのってこう……試練やら受けて、資格あるものが手に入れるってのがありきたりなんじゃないのか?」

 

 あまりにも簡単に手に入ってしまい逆に疑り深くなる。まじまじと剣を見つめていると右手の甲が急に光だした。

「な、なんだ!?」

 

 突然の事に驚いた。その光は自身の右手の甲に出現した。そして光が消えると、手の甲には紋様が浮かんでいた。

「これは一体……もしやこれが女神の言っていた力なのか?」

 半信半疑ながら手の甲を見る。そこには十字と矛の様な絵が描かれた紋様があった。これが何を意味するのか自分にはわからなかったが、恐らく重要なものであることは明白だった。

 

 その他に何かないかと探したが、特に何もなかったので剣を持ってここを出ることにした。

「とりあえず持ってきちまったがよかったか?それにしても綺麗な剣だな」

 持っていた剣をまじまじと見つめる。特に重さは感じず扱いやすい両刃の剣だ。軽く振り回したのち、地下から出る。だが、ここで気づくべきだった。剣を手に入れた事で、世界が動き出したことを。

 地下から出てすぐにその変化に気づいた。先ほどまでいた聖堂が荒れ果てているのだ。先ほどまで綺麗だった装飾や、ステンドグラスは見る影もなく破壊されていた。


「な……何があったんだ!?」

 先ほどまで自分がいた綺麗な教会が、まるで何十年も人が使っていなかったかのようにボロボロなのだ。驚かずにはいられなかった。辺りを見回し状況を探る。最早廃墟と言っても差し支えない程に崩れている。茫然自失となっていると、グルルルという声が聞こえてきてすぐさま我に返る。

 何かがいる…。そう思い身構えた瞬間何かが自分目掛けて飛んできた。


「うわっ!?」

 突然の事に驚き飛びあがる。おかげで避けることができた。飛んできたものを確認すると、石でできた槍だった。石槍とはいえ当たったら大けがを負っていたところだった。ひやひやしていると、槍を投げた者が姿を現した。

 その姿は人間とは似ても似つかぬ化け物であった。


「な、なんだお前!?」

 あまりのことに腰が引けてしまう。その姿は醜悪なもので、豚のような頭を持ちながら人と同じ四肢を持ち、皮がぐにゃぐにゃしている化け物であった。しかも驚愕なことに、一体だけでなく、複数もいるのだからたまったものではなかった。

「もしかしてこれ……ヤバイ状況?」

 

 引きつったかのような笑いをしながら後ずさる。既に目の前は化け物に塞がれており、逃げ場がない。唯一の逃げ場は後方の地下への階段だけ。しかし、地下に逃げ込んだところで先は行き止まりになっており逃げることは不可能。そんな自分を見て、追い詰めたと思ったのかゆっくりと近づいてくる化け物たち。それに対し自分は、持っている剣をぶんぶんと振り回しながら後ずさるのみ。足は震え、腰が引け、立っているのがやっとな状況だった。

「くそっ……なんなんだよこれ」

 

 この状況に震えが止まらない。むしろこれが正常なのだ。今の今までを軽く受け入れすぎていた。魔王やら英雄など聞き覚えのある言葉と裏腹にそれが何を意味するのか、理解していなかった自分がいけなかった。アニメや漫画ならこうした状況でも戦おうという気になったり、そうした勇気があるのだろうが、自分はただの一般人。戦闘の仕方も知らなければ、こうした状況に慣れたこともない。

 確かに元の世界でも危機的状況に陥ることはあった。しかしそれは自身の命に直接関わることではなかった。だが、今は違う。この状況を打破出来なければ命に関わることになる。生と死の狭間。ただのおっさんである自分が慣れるのは無理であった。

「始まっていきなりゲームオーバーなんて……惨めすぎんだろ」

 

 苦笑いし自分を奮い立たせてみるが、それでも恐怖は拭えなかった。それを見て化け物はニタァと笑いながらこちらに迫ってくる。もう終わりかと思ったその時

「伏せろ!」

 突然の大声にびっくりして言われたとおりに床に伏せる。するとその瞬間何本もの矢が化け物目掛けて飛んで行った。いきなりの強襲に化け物たちは驚き、輪が乱れる。それを見計らってか、後方に開いた穴からから馬に乗った騎士が突撃してきた。その様子に化け物たちは慌てふためき逃げようとするが、時すでに遅い。騎士の放つ剣戟が化け物たちを切り裂く。瞬く間に化け物たちは全滅させられた。

 

 全てが終わるのは早かった。最早戦闘とも言えぬその光景に自分は唖然とした。馬に乗りし騎士は化け物の返り血を浴び、その鎧を血だらけにしていた。その姿にぞっとした自分であったが、助けてもらおうとした礼をしようと、近づこうとした。

「待て」

 近づこうと歩を進めようとした瞬間呼び止められた。

「お前……何者だ?」

 そう言われ剣を向けられる。どうやら自分の災難はまだ終わっていなかったようだ……



 やはり最初は武器を出すのがいいかと思って出しましたが、もしかしたら結構無謀だったかもしれません。 

 なにかしら英雄の証を出したかったのですが……流石に今回のは安牌すぎるかなぁ…

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