第2話 最初の出会いは女神様
改行して読みやすくしました。
追記
さらに内容を深めました。ある程度表現も変えましたので、ちょっとばかりキャラの性格の変化もあるかもしれませんが、大まかな流れはいじっていないです。
「う…うーん?」
随分と長いこと眠っていた気がする。目を覚まして辺りを見渡すと、そこは全く見慣れない景色が映った。
緑豊かな大地が辺りに広がっており空気もとても澄んでいる。周囲には見たことのない動物たちがいた。角の生えた馬に、草食の恐竜みたいなもの。さらに、遠くの空にはドラゴン……みたいなのも見える。
ここが自分の知らない場所だと理解するにはそう時間はかからなかった。
「ここは一体どこだ?俺は確か神社でお参りしていたはずだが…」
頭を傾げながら状況を探る。とりあえずこういう時は落ち着くのが大事。慌てても何も起こらないと思い冷静になる。キョロキョロしているとふと後ろに大きな建物があることに気づく。
「さっき辺りを確認していた時にはなかったはずだが……」
自分でも気づかぬ間に建物が出来ていた。建物は白く輝いておりとても綺麗だった。建物のてっぺんには女性の像があり、その女性を信仰しているのだと分かる。恐らくこの建物は教会なのだろう。
「RPGで言うとこういう場所ではセーブできるんだよなぁ」
少し楽しい気分になりつつ建物に向かっていく。他に行く当てもないのだ。中に誰かいると思い、この場所の事を聞こうと考える。大きな扉の前に立ち扉に手をかける。どうやら鍵はかかっていないようだ。
ゆっくりと扉を開ける。爽やかな風が通り抜ける。そうっと中を覗くと人影は見えなかった。いや、それどころか人の気配もななかった。
「誰もいないのか?勝手に入っていいんだろうか……不法侵入とかにならなきゃいいが」
嫌に現実的な不安な気持ちを抱えつつ中に入る。内装はとても綺麗で手入れがよくされている。周りには信仰者が座るための長いすがあり、壁には装飾が施されている。正面中央の祭壇には十字架と女神像があり、大きなステンドグラスから入る光によってとても煌びやかに見える。
「実際の教会はここまで綺麗じゃないんだろうな…ハハハ」
皮肉交じりに苦笑しながら中央の祭壇へ進む。しかし祭壇まで進んでも誰かがいる気配もない。
「おかしいな。普通神父様やシスターっていうのがいるんじゃないのか?」
教会内は静寂で包まれていた。本来いるべきであろう神父等の聖職者の姿も見えない。崇拝者がいないのはわかるにしても、ここの主である者たちまでいないのはどう考えてもおかしい。
「実はお化けの巣窟になってました~とかじゃないだろうな……」
身震いしながら辺りを見回す。特に変わったところはなく、何かが出てきそうな気配もない。
「ここは特に何もないのか。この場所に関する手がかりでもあれば良かったんだが……仕方ない他を当たるか」
そう言い踵を返して扉に向かう。外に出ようと扉に手をかけると
「お待ちなさい……」
とても小さな声でそう言われた
「…………え?」
扉にかけた手を下ろし、恐る恐る振り返る。するとそこには、白いローブの様なものを身に纏い、長い杖を持った女の人が立っていた。いつからそこにいたのか、いや一体いつ現れたのかすらわからない。気配を感じさせずに現れたのだ。
突然現れた人に対し唖然とする。すると
「恐れることはありません。私はあなたを導きにきたのです」
とても澄んだ落ち着き払った声でそう言う。すると自然とこちらの気が緩む。本来であれば警戒すべきだろうが、目の前の女性を見ると不思議と警戒心が薄れていった。
最初は唖然として突然のことに声も出なかったが、一旦深呼吸をする。やっと人に出会えたのだ。慌てふためいて相手にいらない心配をかける訳にはいかなかった。ある程度落ち着いた所で色々と質問してみる。
「あんたは?」
「それには答えかねます」
やんわりと断られる。いきなり出鼻を挫かれてしまった。まあそれもそうだろう。お互い初対面なのだ。いきなり素性を明かすわけにもいかないのだ。そう思って別の質問をする。
「ここはどこだ?」
「ご自身の目で確認して頂いた方が良いかと…」
「……」
質問しているはずなのに一向にまともな答えが返ってこない。風間は少し不安になる。それならばと思い切った質問をしてみる。
「なんで俺はこんな場所にいる?導くとは何のことだ?」
「貴方がここに入ったからです。導くとは言葉通りの意味です。」
…………随分と馬鹿にされている気がするのは気のせいなのだろうか。
何とも言えぬ気持ちになるが、相手はニコニコと微笑んでいる。その微笑みはとても美しい。美しい…のだが、なんともやりづらい雰囲気が流れている。そもそも質問したのにマトモな答えが一つも返ってきていない。
苦虫を嚙み潰したような顔をして悶々としていると、急に目の前の女性が俯く。何事かと思い様子を伺うと、身体小刻みに震えている。
「おい?もしかしてどこか悪いのか?」
そう風間は心配するが、女性の震えは大きくなる。これはまずいと思い近寄ると何かが聞こえてくる。
「ふ…ふふ……」
女性は身体を震わせながら笑いを堪えていた。その吹き漏れる声は大きくなっていき、随分と笑いを堪えている様だが、全然堪えきれていなかった。
「ふふ……うふふふ。!?ごほっごほっ!」
しまいには吹き出してしまいむせている。
その様子を見て風間は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。それもそうだろう。質問していたのに、全うな答えは返ってこず、馬鹿にされているような感じがしたのだ。それでいて急に笑われるとなると、もう何がどうなっているのか分からなかった。
「あははは…いえ、あの、ごめんなさい」
女性は笑いながらも、謝ってくる。ここまで来ると怒りを通り越して呆れが来る。
「急に笑われたと思ったら今度は謝られたぞ。一体なんなんだ…」
この状況が理解できなかった。既に先程の静かな空気はなく、ただ単に笑っている人と、状況の呑み込めない自身がいるだけ。しかし女性が息を整え、コホンと咳ばらいをすると再び静寂が訪れた。再度来た神秘的な雰囲気に気持ちが落ち着く。すると、女性が語り掛けてきた。
「申し訳ありません。先ほどのは冗談の様なものです。その…あなたが随分と警戒なされていましたから、場を和ませようかと思いまして…」
恥ずかしそうにしながらその女性は言った。どうやらその女性なりに気を使ったらしい。
「まあ……緊張感はそんなに感じないが……もう少し他の手で和ませてくれ。こっちは右も左も分からないんでな」
場が和んだと言えば和んだのだが、少しばかり小馬鹿にされたことに風間はちょっと不満を覚えていた。しかし、相手は相手で気を使ってくれたのだ。そのこと自体に文句を言うつもりはなかった。
ともかくやっとまともな雰囲気になったのだ。今度は真面目に聞いてみる。
「あんたは一体誰だ?」
相手の正体も知らないので、無難な質問をした。
「私はこの世界で神と呼ばれる者……女神レヴェリアです」
女性、もとい自称女神様はニッコリと微笑みながらそう言った。
「女神?」
突然宣告されたことに驚きを隠せない。それもそのはず。今目の前にいる相手は自身を神と称したのだ。普段存在があるのかすらわからない神様に祈りはすれど、実際に目の前に現れたとして実感が湧かない。
「あんたが本当に神である証明はないのか?」
もしかしたら自分を騙している可能性もあるため確認せずにはいられなかった。女神は少し困った顔をしたが、致し方ないという形で語った。
「証明できるかはわかりませんが、あなたがこの世界で生き抜くための力を与えましょう」
そう言うと女神は、手にした杖を天高く掲げた。すると杖の先から眩いばかりの光が自分を包み込んだ。突然のことに驚き身を固める。やがて光が収まると、周囲が確認できるようにまではなった。
「一体…何をしたんだ?」
辺りを見回しながら聞く。周囲に変化はない。何かが変わったという訳でもない。すると女神が口を開く。
「あなたに力を授けました」
女神はにこやかに言う。
「力……?」
訝しげな顔をしながら自分の体を見てみる。特に変わった所は見られない。拳を握るが、特に力が強くなったとも思えない。
「何も変わってないように見えるが?」
証明を求めたにも関わらず、目に見えないことで証明したとされ、釈然としない態度で風間は女神に言った。すると
「当然です。貴方に力を授けましたが、その力はまだ貴方が使いこなせるものではありません」
女神は淡々と言った。
「貴方に授けた力はこの世界で生き抜くために必要なものです。それは時に貴方を助け、貴方の力になることでしょう」
女神の要領を得ない答えに風間は不満が募る。にこやかに答えていく女神に俺は少し疑問に思った。
「まあ、あんたが神だってことはこの際信じよう。だがなぜ俺にそんなことを?そもそもここはどこなんだ?」
急かすかのように問いかける。すると女神は一瞬暗い顔を見せたが、直ぐに表情を戻し説明しだす。
「ここは貴方がいた世界とは別の世界。この地の人間はここをレヴェリエと呼んでいるようです」
女神はゆっくりと分かりやすいように言う。だがそれに対し、風間には疑問しか残らなかった。いや……簡単にその事実を受け入れずらかったのもあるのだろう。風間は女神に質問せざるをえなかった。
「待て。別世界?レヴェリエ?なんだ、ここは異世界とでも言うのか?」
「そうです」
戸惑う自分に対し女神はあっさりと答える。
「今この世界は危機に瀕しています。強大な力を持つ者により、この地の平和が乱されようとしているのです」
あまりの突然の事に思考が追い付かない。危機?平和が乱される?一体どういうことなのか、現状を整理する必要があった。腕を組み、思考をフル回転させる。
現状分かっていることは、自分は異世界にいるということ。そしてその異世界は危機に瀕しているということ。そして女神と名乗るレヴェリエから力を授かったこと。ここから分かることは明白だった。
「あれか?俺にこの世界を救えということなのか?」
風間は恐る恐るそう答えると、女神はにこやかに頷いた。
「そう通りです。貴方はこの世界の平和を脅かす強大な力を持つ者を倒すのです。しかし、今の貴方ではその強大なる者に太刀打ちできないでしょう。まずは力をつけるのです。私が授けた力を完全に使いこなせるようになるまで……」
強大な力を持つ者の打倒。女神はそう言った。風間はその言葉の意味を考える。
「(これはあれか?アニメや漫画で言う悪者から世界を救ってくださいってやつか……?)」
風間の世界ではそうした悪者をが現れた場合、それを打倒するヒーローがいた。だが、この世界ではそのヒーローは風間だと言う。風間はその事を悩ましく思う。
「(そんなの俺にできんのか?そもそも力ってなんだよ)」
女神は力を授けたと言っていたが、それがどんな力なのか風間には分からなかった。その事に疑問を抱いていると、察したのか女神は答える。
「貴方に授けた力は、貴方が願った通りのものになります。どんなものかは、貴方が一番分かるはずです」
女神のその言葉に風間はあることに気づく。
「俺なら分かる?それは一体……」
そう言いかけた途中で女神に異変にが表れる。段々と女神の姿が薄くなっている。
「どうしたんだ!?」
風間は慌てて呼びかける。
「すみません……どうやら私が顕現していられる時間がもうないようです。本来ならもっと貴方に色々と説明したいところなのですが、お力になれず申し訳ありません……」
申し訳なさそうに女神は言うが、その間もその体はどんどん消えていっている。そんな女神を見て自分は一つ決めた事がある。
「俺は……この世界で何をすればいい?」
何も迷う事なく問いかけた。今更騒いでも何も変わらないのだ。ならば受け入れるしかないと思った。結局なんだかんだ言ってやるしかないのだろうと思っていたところでもあった。
そんな風間を見て、女神はとても辛そうな顔をするも同時に嬉しそうでもあった。
「……この世界を救う英雄になってください」
涙を流しながらにこやかにそう言う。女神の頬を伝わる一筋の涙が地に落ちた時、女神の姿は完全に消えていた。
突然の出会いと唐突な別れに、やきもきとした気持ちになりなる。しかし分かった事もあった。
「英雄か……ハハッ…本当に英雄になれってか。あんたはやはり神様だよ。この俺の願いを叶えたんだから。ま、最初から英雄じゃないのがもどかしいけど」
愚痴をこぼしつつも彼女が本当に神様だったと認める。そして女神が立っていた場所を見る。
「まだ突然のことで整理もつかないし、いきなり異世界に来させられて英雄になれっていわれても全然実感がわかねえ」
目を閉じ、もういない者に対して語り掛ける
「ただ、こうなっちまった以上仕方がないとも思う。なんだろうな……年のせいか物事に対して割り切りやすいのかね」
自らの発言に苦笑いしながら、決意を固める。
「なってやるよ……英雄に。それがあんたの望みであり、俺の願いでもあるんだから。そうだろ?レヴェリア」
そう女神の名を呼ぶと、ふといないはずの女神が……微笑んだ気がした。
異世界に来ての最初の出会いですね。まだキャラ設定が不安な所ですね。
とりあえず女神さまは陽気な人です。