第1話 平穏の終わりは唐突に
改行の編集を行いました。
初期の頃より見やすくなっていると思います。
更に内容を深めました。話の流れは変わっていません。
更に改行に手を加えました。最近の話と同じようにしました(3/29追記)
ある日、目を覚ますとそこは見慣れない世界だった。なぜこんなことになっているのか。全く状況が呑み込めない。
「ここは……一体どこだ?」
辺りを見回してみるが何も見当たらない。
どうしてこんなことになったのだろうか?ひとまず落ち着いて、何が起きたのか振り返って考えてみることにした。
その日は何の変哲もない、いつも通りの朝を迎えた。騒々しい音を出す目覚ましい時計を止め。ベッドの中でもぞもぞとする。
「うう~ん。もう少し寝てよ……」
布団の中で言っているせいか、はたまた寝起きのせいか、随分とくぐもって聞こえる。しかし、いつまでもベッドの中にいる訳にはいかない。今日は平日。つまり仕事があるのだ。
「今日も仕事かぁ……はぁ……」
起床するのが億劫と感じながらも、体を起こす。外はいい天気であり、窓から差し込むポカポカとした太陽の光が眩しい。10月半ばにしては暖かく、小春日和を感じさせる。そんな気持ちの良い朝こそ、ベッドの中は究極の兵器とも言える代物になるのだが、残念ながらぬくぬくとしている暇はない。
ベッドから出て、早速朝食の準備をする。一人暮らしをしている為準備は自分でしないといけない。両親は幼い頃に他界している。父親も母親も至って普通の人で、妹と共に四人で幸せに暮らしていた。だがある日幼い自分と妹を残して、両親は事故で亡くなった。
そこからの生活は地獄だった。まだ中学生だった自分は、小学校に入りたての妹を守るため色々としなければならなかった、当時は兄として妹を守らなくてはいけないという責任感もあり、親戚に頼ることもせず、一人でなんとかしようとしていた。
中学卒業後には仕事を始めて、なんとか食っていけるだけのお金は稼いでいたが当時の自分は若かった。お金が手に入ると、駄目だと分かっていても使ってしまう浪費癖が自分にはあった。今まで妹の為に色々やってきたのだから少しぐらいはいいと……魔が差したのだ。それで生活が苦しくなり、妹に合わせる顔が無くなった自分は、妹を親戚に預け、辛うじて残ったなけなしのお金を残して一人で逃げたのだ。今でも仕送りはしているが、妹とは連絡も取っていない。
「本当にあの頃の俺は何をやってたんだか……おかげでこのボロアパートで一人暮らしか」
懐かしい事を思い出しつつ、愚痴をこぼす。たった一人残った肉親すら守ることも出来ず、ずるずると今の今までを過ごして来た。そんな人生を送ってきたせいか、多少悲観しがちで、だらしないところが多いとよく言われる。だが、特に不満は感じていない。何よりも一人でいられることの気楽さがあるからだ。
そんな昔の思い出を思い出しながらも手は動かす。ある程度朝食の用意を終えた所で、身だしなみも整える。
風貌は、少し茶色がかった髪に薄く髭を生やしている。最近は飲みすぎのせいか、少し腹がたるんでいる。年齢は30代半ばと言った所で、世間ではいわゆる「おじさん」と呼ばれる部類だ。
現在では普通に仕事をする毎日を送っているサラリーマンだ。ただ、この仕事が妙にダルい。外回りは夏は暑いし、冬場は寒くて嫌だ。相手先の顔色を伺いながら商談を進めるのも面倒臭くて困る。
しかし、家に帰れば楽しみがある。実を言うと、アニメやゲームと言った娯楽が大好きなのだ。学生時代の頃は忙しかったのもあり、そんなに好きでもなかったのだが、会社の後輩に勧められるがままアニメを見たら、そのままずるずると……ハマっていったのだ。今では軽く語れるぐらいにはオタクだ。ただ、そうしたことで困ることもあった。それは会社内で自身の名をネタにされることだ。
この男の名前は風間 丈吉というのだが、何故か会社内では風間と呼ばれる。アニメっぽいだとか、忍者にそんな名前の人いましたねとか言われる始末。
「まあ悪い気はしていないんだが、いかんせん俺には似合わなすぎるだろ……」
……苦笑交じりにそう思う。髪と髭を整え、ワイシャツを着こなすとちょうど朝食の出来上がる音がする。
今日の朝食は昨日の晩飯の残り物。温めてちょっと材料を加えるだけの簡単なものだ。手早く皿に取り分けて食事にする。外から聞こえる小鳥のさえずりが気分を心地よくさせてくれる。そんなのんびりとした時間を過ごしながら、時計を見た。現在8時20分。そう……その時計は8時20分をさしていた。
「……え」
顔面が蒼白になっていく。季節は冬に差し掛かろうとしているのに、冷や汗がダラダラと出る。
「やばい!完全に遅刻だ!」
のんびりと口に運んでいた朝食を勢いよく頬張り、スーツを着たりと着替えも同時に済ませていく。ドタバタと準備し、家を出る頃には、時計は8時30分を指していた。
家から飛び出し、職場へ向かう。既に遅刻していると分かっていながらも走らずにはいられない。無論、仕事なんて面倒くさいし、家でゴロゴロしていたいが、仕事がなければ食っていけない。遊ぶためにも金がいる。
「世知辛い世の中だ……」
溜息交じりに言いながら先を急ぐ。会社に着くころには息が切れ切れしていて、朝の余裕は感じられない。急いで自分の担当部署に着く。するといきなり
「風間ぁ!遅刻だぞ!何やってんだ!!」
上司の罵声が飛んできた。顔を般若の面のような形相にして怒っている。急いで上司の元へ行き、謝罪をする。しかし上司の怒りは収まらず、そのまま説教の時間になってしまった。
「(この上司の説教長いんだよなぁ……)」
目を伏せながらそう思う。
かなりの時間が経ち、やっと上司の説教が終わる……もう時間はお昼を指していた。だが休憩はない。遅刻した分の遅れを取り戻さなければならないからだ。
「くそっ…せめて説教が短ければな」
自分が遅刻したことを棚に上げつつ悔やみながら仕事に移る。今日は朝から余裕だと思っていたが、どうやら最悪な一日らしい。いつも行っている業務はミスをするし、トラブルが起きてその被害が自分に来る。その解決の為に奔走すると帰りの時間は必然的に遅くなる。帰る頃には時計は23時を指していた。
「今日は災難な一日だった……」
憂鬱な気分で岐路に着く。朝の元気は既に無く、足取りは重い。
「なんだって俺がこんな目に合わなくちゃならねえんだ……畜生」
愚痴をこぼしながら歩く。沈んだ気分を癒す為一杯飲もうとも思ったがそんな気分でもない。
「気分転換って訳じゃないが、今日は違う道から帰るか」
そう言い、いつも通る大通りの道は止めて裏道を通ることにした。こちらの道は細く、人気はあまりない。ぽつんと街頭の光があるだけだった。
不気味な静けさがある道だが、逆に今はその静けさが心地よいと思い進んでいく。そのまま進むとさらに細い路地がある。そこをまるで猫になったかのような気分でするすると進んでいく。ある程度進むと、鳥居が見えてきた。
「確かこの先に小さな神社があったなぁ」
曖昧な記憶を頼りに思い出す。この裏路地に昔からある神社で、小さい頃は自身も妹とよく遊びにきていた。しかし現在は寂れており、人っ子一人近づかない。
「今日は不幸なこともあったし、お参りでもしていくかぁ」
元々気分転換も兼ねていたこともあり、神社に立ち寄ることにした。
鳥居を潜り、薄暗い参道を通り抜けると本殿が見えてきた。
「古い神社ってなんか不気味で嫌なんだよなぁ」
手に汗を握りながら、境内へ進む。そんなに広くはないが、木々に囲まれているせいか周囲の見通しは悪い。小さな神社のだからか、他の建物は無く本殿があるのみ。
「なんでこんなところに来ちまったのか……まあ自業自得だが」
最初に来た時の気持ちは何処へいったのやら、恐る恐る本殿に近づきながら文句を言う。昔は綺麗な建物であったが、今では見る影もない。ボロボロになった本殿を前にする。小さなお賽銭箱とご利益のありそうなお地蔵様が奉納されているだけ。
「ここの神様にでもお祈りすりゃ、ご利益でももらえるかねえ」
溜息交じりに言いながらお祈りをしてみる。しかし何も起こらない。
「何か願い事でもしてみるか。今度は賽銭付きでな」
ぶっきらぼうに言いながら賽銭を投げお祈りする。こんな寂れた神社に賽銭を入れるのも馬鹿らしいと思ったが、折角なのでやってみる。
「(願い事は……そうだ!アニメやゲームにある英雄になってみたい)」
そんな幼稚なお願いをする自身を苦笑しつつ、お祈りする。まあ大人だって夢ぐらい見るさ…と自分に言い聞かせ恥ずかしさを堪える。
「さて、帰るか」
お祈りを済ませ帰ろうとする。すると周囲の空気が変わるのが分かる。ざわざわと木々が揺れる。
「な……なんだ?」
その様子に震えていると、突然お地蔵様が急に強い光を発しだした。
「!?」
その様子に目をみはる。
「なんだ!?」
心臓がバクバクと脈を打つ。思いもよらぬ光景に、好奇心と恐怖が入り混じる。だが、人間不思議なもので、好奇心が勝ってしまう。そして好奇心の赴くまま、お地蔵様に近づいたその瞬間……目の前が真っ暗になった。
今回が初投稿作品となります。まだまだ未熟な部分も多いですが、少しづつ頑張っていこうと思いますのでよろしくお願いします。
展開を考えるのって難しいですね…。