序章〈ハジマリ〉Ⅱ
目を覚ますとそこは見慣れない天井があった。
「とゆうか牢屋じゃねぇか!?」
えぇ〜マジかよ…何だってこんなとこに…
(たしか俺は騎士に勝負を挑んで…挑んで…挑ん…で…騎士……)
アイツだ!!グランが俺をここに連れてきたんだそうに違いない!
「おい!グラン!いるんだろ!出てこい!おい!」
「キャンキャンやかましいぞ、犬かてめぇ」
突如隣から声が聞こえてきた。なんだ隣にも捕まった人がいんのか。
「で?何やらかしたの?」
「別に、何も」
「何にも?じゃあ、あんた冤罪でぶち込まれたわけかい」
「こんなとこで時間食ってる場合じゃねぇんだよ…くそっ…早く村に戻ないと」
村にボルカウルフを招いたのグランだ。だが何のために…考えても仕方ねぇどのみちアイツを許す気はねぇ…絶対殺してやる…
「あんた村がどうこう言ってたが、なんかあったの?」
「ん?あぁ…ちょっとしたボヤ騒ぎがあってな…」
「そうか…なら早く戻りたい訳か…なら出られたら女神様を探すといい」
「女神…様?」
「そうだ女神様だ。お祈りするときっと応えてくれる」
何言ってんだ。こいつ…いよいよ胡散臭くなってきたぞおい…。
すると向こう側から複数の足音が聞こえてきた。騎士を2人引き連れた悪趣味な格好をした騎士?いや貴族とゆう言葉が似合うな。
「大人しくしていたようだな愚かな罪人どもよ。このコーネリア・ヴィネッツが直々に来てやったぞ有難く思えよ〜ん〜?」
うわぁ…なんだこいつ。ほんとに騎士か…?部下を引き連れてるってことは多分それなりに階級は高いのだろう…あ、目があった…
「なんだその目は〜?……罪人の分際で私を見るなァ!」
いやいやいやいやそりゃ無茶だろ…
ヴィネッツは咳払いをし
「まぁいい早めに要件を済ませよう。こんなとこに一秒でもいたくない!」
隣の牢屋に立つと
「お前だ!お前に用があるんだ。えぇっと…たしか…そうだ思い出したぞ!カンザキ=リョウマ!貴様を今から別室に連れてゆく。」
「なんだい…やっときたか…遅かったねぇ」
すると隣から出てきたのはおっさんと言うには少し若く青年と言うには少し老けていて…うーん、どっちかって言うと……おっさんかなうん。
「どわあああ!!」
派手に転びやがったこいつ。顔面からいったぞ痛そう…
(ん?なんか飛んできたような…)
「何してるんだこの馬鹿は!?」
「いやぁ久々に体を動かすもんで…すんませんねぇ」
ヘラヘラ笑いながら頭を下げた。
ウィンクしたぞいま。目線的に俺だろうか俺に飛ばしたのだろうか…おえっ。
カンザキ=リョウマとゆう男を引き連れながら騎士達は行った。
「ん?これはさっき飛んできたやつか?」
なんとそれは鍵だったのだ。まぎれもない鍵。
「まさかアイツわざと転んだのか?」
鍵穴に刺し回すと…
ガチャッ
「うわぁ…まじで開いたよ…こりゃあの野郎に感謝だな」
確かアイツ出られたら女神様を探すといいって言ってたな…。
もしかしたら脱出する手掛かりかもな。
お!ラッキー。武器も回収できた。さてとその女神様とやらを探すとしよう。
階段を上がっていると開けた場所に出た。道が3つに分かれていた。
とは言ってもまずここは何処だ。そもそも俺は何日意識を失っていた?そんなに失っていないと思いたい。
地下に牢屋があるってことは城ってことか?
てことは王都クリスタになるな…ヴェスタからそこまで離れているわけでもないし…
すると壁にある紋章を見つけた。剣の鍔が羽根になっており剣に蛇が巻き付いている。
(あの紋章…どっかで…)
「グランの甲冑にもついていたよな…あとあの趣味のわりぃやつの服にも」
となればアイツは少なからずここにいるとゆうことになる。だが
「脱出が先だな」
頭はいたって冷静に。感情を落ち着かせろ。目的を見失うな。
すると左側から
「囚人が逃げ出したぞぉ!脱獄だ!」
な!?こんなにも早くバレたのか!?
だがこちら側には騎士達はやって来ない。
「侵入者もいるぞ!探し出せ!」
(あのカンザキって野郎がなんかしたのか?まぁそれでも好都合だ!)
――――――――――――――――――――――――
「馬鹿な!?侵入者だと!何故侵入を許した!」
「す、すみません!直ちに処理いたしますので」
「当たり前だ!この馬鹿!」
「侵入者…ねぇ……よっ!」
「げひっ!」
リョウマの華麗な回し蹴りがヴィネッツの頭に直撃した。
「き、貴様!ヴィネッツ様になんてことを…ぐわっ!」
「あんたも眠っとき…なっ!」
「ぐはっ!」
ふむ…体はまぁまぁ動くようだ。さてさて手錠の鍵を拝借…と、あった。
このタイミングで侵入者とは…俺もまだまだ捨てたもんじゃあないな。
あの少年は言った通り女神様を探すだろうか。まぁどうでもいいことだがな。
「おぉっと…侵入者ってのあんたかよ…」
――――――――――――――――――――――――
「はぁ…どこだよ…女神様……」
広い…広すぎる。とにかく広い。さっきから変わり映えしない風景。ずっと同じところをぐるぐる回ってるような感覚に陥りそうだ。
「なんだ…この匂いは…?」
酷い匂いがした。とても城に似合う様な匂いではない。
匂いの方向に歩いて行くと足元に何かぶつかった様な気がした。
「なっ…!?」
それは騎士の兜だった。そして兜には大量の血がついていた。
更にその先には血まみれの広場があった。細切れにバラバラに切られているものがあった。恐らく元は人だったと思われる物があちこちに飛んでいた。手足や胴体、さらには内臓らしきものまで。
「これ…一体誰が?こんな…」
村でも似たような光景を見た。あの時は冷静には居られず周りのことが見えてなかった。
だが今は違う。こんな酷い光景は見た事がないはずなのに…頭の奥底にチラつくものがあった。
(なんだ…これ…)
それは死体の山に一人立っている誰かの後ろ姿だった。
(誰かの…記憶…なのか?)
「なんだぁ?…まだ生きてる奴がいんのか…」
気づけば背後に人がいた。
ピンク色のトサカの様な髪型、黒をベースに左腕の部分だけ真っ赤な色をした服装、手首足首には手錠の様なアクセサリーだろうか?
右には大きな刃、左には小さな刃があった。どちらも鎌の様な武器。
「こいつ…いつの間に!?」
「姿をみた全員殺せって言われてるし…よし、お前…………死ね」
いきなり突っ込んできた。
何とか剣で受け止める。
(何ていう速さだ…だが捉えれられない速さじゃない!)
「ふっ!」
「!?」
「どうだ!」
「お前…やるねぇ…」
相手の顔色は一切変わらず。だが雰囲気が変わった。
「少しは楽しめるかな…」
不思議な動きをしだした。左右にユラユラと揺れ始めたのだ。今なら…いけるか?
「はあああ!」
斬りかかるも避けられ、気づけば自分の体に小さいが傷が付いていた。
いつの間に斬られたのだろうか。
あの野郎がユラユラしだし始めたら上手く認識出来なくなっている。完全に認識できない訳では無いが上手く捉えられなくなっている。
霧がかかっているかのように。
「くっ…」
「あれ?もう終わり?…なんだ…ただのザコか」
「クソが…」
かと言って打開策もある訳じゃない。その時、後方から
「少年!伏せてろ!!」
フラッシュグレネード。目をくらます程度の物。威力こそはないが効果は絶大だった。
「お前は…」
「少年こっち!早く!」
「う…う…目が…見えねぇよ…上手く見えねぇよぉ……」
――――――――――――――――――――――――
「ここまでくれば大丈夫だろう」
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫かい?少年」
このおっさん…思いのほか足が速い。気になることも沢山あのだがまず先にお礼を述べよう。感謝することは大事だ。
「助かったよ…おっさん」
「お、おっさん!?」
なんだ言葉のチョイスを間違えたのだろうか。
はて?一体どこを間違えたのだろう不思議だ。
「そっか…最近の子におっさんに見えちゃのか…」
「なんか…悪い」
「いやいや少年は悪くないよ…こんな見た目な俺が悪いんだろうし…いいんだよ別に…」
やはり少し傷ついている様だが…謎だ。
「それより少年、お名前は?」
「え?…あ、あぁ…アルドだ。」
「俺はカンザキ=リョウマだ。よろしくアルド少年」
カンザキ…聞いたことのある姓だった。
「カンザキってもしかしてあの神咲流のか?」
「おっ!なんだい神咲流を知ってるのかい」
「知ってるもなにも、剣を使ってりゃいやでも耳に入ってくる」
『神咲流』…無数の可能性を否定し一つの事象のみを確定させる剣術。
例えば斬るとゆう事象。形はどうあれ『斬る』とゆう事象を確定させ必ず斬ることが出来る。
もしかしたら神咲流は『死』とゆう概念も確定させることも出来るのではないととも言われたこともあるが、たかが剣術にそれは可能なのか?とも言われたことも。
実際は謎に満ちた剣術。
「いやぁ…やっぱり有名なのか…」
「やっぱり?」
「いやなんでもないのよ…それより早く脱出だ」
像に向かって何か探し出した。何をしているのか。するとリョウマは口を開いた。
「アルド少年…何か気づかない?」
「何かって言われても…」
像があるだけだ…少し大きな…女神像が…女神……
「まさか!」
ニヤッと笑い
「正解!」
女神様って女神像のことか!
「さ、少年手伝え」
「わかった」
「せーので行くぞ…せーのっ」
二人がかりで女神像を押すとそこには隠し扉があった。
――――――――――――――――――――――――
「ここは…地下道か」
扉に入ると生臭いが蔓延していた。だがここなら追手の心配はないだろう。
「その通り…こっちだ。このまま行けば王都の城下町に出る」
「やっぱりここは王都だったのか」
早く脱出してみんなのとこに戻らねぇと…
ヴェスタに早く戻るためリョウマと出口を目指す。