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漆黒の翼  作者: 愚者のハロ
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序章〈ハジマリ〉

その姿はまさに死神だった。

第2次マジック・ジ・アース

全世界を巻き込んだ戦争にのちに死神と呼ばれる奴が現れた。

少年のように背は低く、目は血のような赤。

髪、服装などあらゆるものが黒かった。持っている何の装飾も無い刀も黒く、背から生えていた片翼も。

そいつはその場にいた人を見境なく次々に殺していった。

それも笑いながら、だ。


「フ…フフフ…ハハハハッ!!」


「足りねぇ、足りねぇよ!全然足りねぇよぉ、なぁ!!」


「アハハハハッ!」


その戦争に参加していた人間をたった1人で、約4割削ったのだ。

そうして戦争は継続不能となり終結した。


その世界大戦から7年後




「ねぇ?アルド知らない?」


「なんだまたあいつオヤジさんのとこ抜け出したのか」


「はぁ…あいつどこ行ったのよぉ~」


そこには少女と青年がいた。

少女は金髪に健康的な体、目は綺麗なエメラルド、いかにも活発に行動しそうな子だ。

青年は少し赤がかかった黒の髪、目は右が青、左が黄色のオッドアイ。

服装は少々軍服を改造したようなもの、右手首にバンダナを巻いている。

そして腰に炎のエンブレムが入った2丁のハンドガン。


「ねぇ?ラインハルトはどこに行ったと思う?」


「アイツのことだからいつものとこじゃないのか?

それよりミラ、お前今日は大丈夫なのか」


「うん、今日は平気だよ。みんな心配し過ぎなの」


少女ははにかむ。

だが、ラインハルトは苦笑いしながら


「昔からお前は体が弱かったんだ、嫌でも心配になるさ」


ミラは頬を膨らませて


「むぅー、それは昔の話でしょ。今はちーがーいますぅー」


するとラインハルトが


「ん?あれアルドじゃないか?」


「ほぇ?」


そこには民家の屋根を走る黒い男の姿。


「あーっ!いたぁー!」




「あぁん?」


唐突に大きな声が聞こえた。

声のした方に振り向くとそこには見覚えのある顔ぶれ。


「やべ見つかった」


捕まったら面倒なことなると本能的にアルドは感じた。

とゆうか経験上だ。

ミラが叫ぶ。


「ちょっと、また道場抜け出すってどーゆーことですかー?またお父さんに怒られたいんですかー?」


すかさず反論。


「んわけあるかボケ」


ミラの父さん、怒るとまじこえーし。

でもどーすっかなぁ、隠れたところで絶対見つかるだろうし。

あー、積んだわこれ。

ミラは


「いまならまだお父さんにバレてないからまだ間に合うよー」


アイツは本当に嘘が下手。

なにより額から汗が出てるし目を反らしている。


「やなこった、お前あと嘘をもう少し上手くなれ」


軽く手を振って走る。

と、思ったが留まる。

なぜならミラの隣にいるラインハルトとゆう男がこちらに銃口を向けていたからだ。

冷や汗をかく。


「おいおいライン…何の冗談だ…」


「なにってミラの手助けだが」


「手助けのわりには度が過ぎている気がするのは気のせいか…」


「なぁに、仮に当たったとしてもお前は簡単に死にはしないだろ」


「お前、ふざけん」


パァン!いやな金属音が聞こえた。


「うおっ!!」


体を右に反らし銃弾を交わす。

マジで撃ちやがった。


「チッ…」


ん?いま舌打ちしたかいま。

あのヤロー覚えてやがれ。

屋根を走る。

このまま留まっていたら確実に蜂の巣にされる。


「まちやがれ!」


ラインは鬼のように追いかけてくる。


「ちょっと待ってよぉー」




ここはヴェスタと呼ばれる小さな村だ。

少し大きめな剣術道場があるくらいだ。

道場にはミナヅキ流と大きく書かれてある。

ここの剣術道場はミラの父、ゲンマ=ミナヅキが師範代を務めている。

病弱だったミラのリハビリと自分の身を守れるようにとボロボロだった道場を立て直し、教えたのがきっかけだったが、思いのほかゲンマさんがノリノリだったため本格的に始めた。

ミナヅキ流は己の身を守る剣術、だそうだ。

ゲンマさん曰く、剣は生き物を殺す道具。だが、それも使い方によって人を守ることだってできる。もちろん己自身も。

その言葉をずっと言ってる気がした。

幼なじみである俺やラインもそれに付き合わされた。

だが、思いのほか人はあまりおらず俺はかなりの頻度で抜け出している。

ラインはたまに顔をだす程度だ。

ラインは剣術より銃の扱いが上手い。

それをゲンマさんが知ってのことか


「ラインハルトは戦い方を知っている。無理に戦闘スタイルを変えてもアイツが困るだけだ」


と言っている。だが、


「アルド、お前は危なかっしい戦い方だ。いつか大怪我をする。ちゃんと基礎を学べ。なんだぁ?悔しいか?悔しかったら俺の膝を付かせてみろ。まぁ無理か、ダーハッハッハッ!」


だってよ、ふざけんな。変な高笑いしやがって。

俺だってそれなりに戦えてるだろうが。

その証拠にラインとは渡り歩いているからな。

俺はアイツより強い…強い…強いはずだ…


村から少し離れたところ丘がある。

丘にでかい木があり開けた場所だ。


「ここまでくれば…」


大丈夫だろうと言いかけたとき、銃弾が飛んできた。

木の陰から男がでてきた。

ラインだ。


「お前の逃げる場所なんてだいたい分かる」


はは…冗談じゃねぇ。

そーいやミラの姿を見かけない。置いてきたのだろか。

とか思いっていたら銃弾がまた飛んできた。

腰に差してある剣を抜き銃弾を真っ二つに切る。


「全く、馬鹿のくせにその高等技術どこで学んだ。弾を狙って切るなんて大した奴だよお前」


ラインは呆れながら喋る…褒めてんだよな?


「目はいい方なんでね」


「そうか…ならその目を撃ち抜いてやるよ…」


あっ…やべぇ、マジの目だアイツ。

ため息をつきながら


「いいぜ、なら決着つけてやろうじゃん!」


俺は剣を逆手に持ち一直線に駆ける。

すかさずラインは銃弾を放つ。

最低限の防御だけ行い、迫る。

左に薙ぎ払う。

ラインは身を低くくし交わす。

アルドの顔を目掛け銃弾を放つ。


「くっ…」


顔を左に反らしこれを交わし距離を離す。


「あぶねぇ…当たってたら死んだだろ今の!?」


「それがどうした!」


なんだよラインになんかしたかな俺。

なんだってアイツ、マジに殺ろうとしてんのかねぇ…


「ああくそ!」


俺はまた駆け、ラインに迫る。

左斜め上に薙ぎ払う。

ラインは最低限の動きで交わす。

今度は左手に剣を持ち替え突く。

ラインは銃でこれを防ぐ。

ギリギリと金属音がなる。


「いつまで耐えらるかな?」


ラインはニヤリと笑いながら


「アルド…そのセリフはこれを言ってもらうか」


ラインがこれからもう1丁の銃を取り出し引き金を引く。

銃弾が俺の体を貫かんと飛んでくる。

ガンッ!と鈍い音を鳴らして銃弾は空中で止まりそのまま落下した。


「なっ…お前いつの間に…」


今度はこちらが笑う番だ。


「結界・アイギス展開」


ニヤリと笑って見せる。

結界・アイギス。防御術の基本中の基本だ。


「俺だって突撃しか能のない馬鹿じゃねぇ…それなりに考えて戦ってんだよ!」


ラインを蹴り飛ばす。


「ぐっ…」


ラインは腹を抑えながら起き上がろうとする。

だが、ラインの首元に剣の切っ先を突きつける。


「俺の勝ちだ」


だが、ラインは右手にある銃を俺に突きつけていた。


「いや、引き分けだ、このままの状態なら相打ちだ」


「本当にそうかやってみるか?ライン」


「ほぅ …いい度胸じゃないか。死んでも文句はないなアルド」


「はい!ストォーップ!」


振り向いた先には金髪の少女ミラがいた。


「全く2人とも戦うとなるとほんとにどっちか死ぬまで戦う勢いなんだもん。観てるこっちが心配だよ!はいはい、アルドもラインハルトも武器閉まってほらほら」


いつもこんなだ。

決着が付きそうになると決まってミラが間に入る。

どちらもミラを退けて続きをしようとしない。

それは何故か、ミラとまともに戦っても勝てる気がしないからだ。

ミラはゲンマさんの指導を真面目に受けた結果、免許皆伝だ。

純粋な剣だけなら俺はミラに負ける。

ラインもミラと戦ったことがあるが惜しいところで負けたのだ。

それ以来ラインはミラとの戦いは惜しいところでいつも負ける。

いまならのところミラに勝てそうなやつはまずいない。それくらい強い。本当だよ。


「ほら2人とも村に戻るよ。アルド、ちゃんとお父さんにやられてきてね♪」


なんでそんな嬉しそうなんだよ…はぁ…。

しばらく歩いていると先に歩いていたラインが急に走り出した。


「おい、ライン!」


「なんで急に走り出しんだろ?」


その理由は直ぐに分かった。

ラインの後を急いで追うと


「嘘…」


ミラが驚愕するのは当たり前だ。

なぜなら村が、ヴェスタが燃えていたからだ。


「なんで…こんな…」


くそっ!考えても仕方ない!


「ミラ!無事な人がいるはずだ手分けして探すぞ!」


「う、うん!」


力強くうなづいてくれた。正直助かった。パニックになられたら面倒だ。

なんだってこんなことに…


「アルドか、無事だったんだな!?」


「オッサン!他の人達は!?何でこんなことになった!?」


「おお、おれだって何がなんだか…それより早く逃げた方がいい。ここは危ない!」


「オッサンは逃げな、俺はもう少しまだ人がいないか探してくる」


俺は駆け出した。


(うっ…なんだこの臭い…血の臭い…?)


木が焼けた臭いの他に血の臭いがした気がした。

すると目の前に人の肉を喰らっている魔物が2匹いた。

魔物は狼の姿で炎を纏ったかのような毛並み。

俺は剣を抜き、魔物に斬りかかった。


「何してやがるてめぇ!!」


魔物は危機を察知したのか後方に跳躍した。


「うおおおお!!」


すかさず追いかける。

1匹が飛んで襲いかかる。


「見え見えなんだよ!」


これを叩きつけるように斬る。


「次!」


感情はもはや怒りしか無かった。


「はああああ!」


もう1匹はのらりくらりと攻撃を躱す。


(くそっ!なんで当たらねぇ!)


こいつ頭を使ってるのか!?


「魔物のくせに!」


大振りの攻撃を交わした魔物が飛びかかる。

やべ…そう思った刹那、銃弾が魔物の体を貫いた。


「怒りは剣筋を鈍らせる…オヤジさんが言ったことは本当だったみたいだな」


いつものいけ好かない野郎の声だった。


「ライン!お前どこいってんだよ」


「魔物退治と人助けだ。この程度の魔物に苦戦を強いられるなんてどうかしてる。少し知性が高いだけでそこまでじゃない。気持ちは分かるが落ち着け」


「あ、あぁ…」


確かにいつもなら簡単に倒せるはずの魔物に苦戦していた。


「多分の火事の原因はこのボルカウルフのせいだ」


聞き慣れない名前だった。

「ボルカウルフ」ウルフの亜種で狼の容姿に炎を纏ったかのような毛並み、通常のウルフより知能が高く炎を操れる。

ラインは首を傾げながら


「だが、ボルカウルフは本来この当たりに生息していないはず…なのに何故…」


「んなこと後にしろ!他に魔物とか無事な人がいないか探すぞ!」


ラインと2人で燃えている村の中を走り回った。

だが、見かけるのは村人の死体とそれを食べているボルカウルフだけだった。

なんでこんなに人が見えたらねぇ…


(全滅…した…のか…?)


そんな最悪のビジョンが浮かび上がる。


(変なこと考えんな!頭より足を動かせ!)


道場に辿り着いたとき中から剣と剣がぶつかり合う音が聴こえた。


「ゲンマさん!」


「オヤジさん!」


中にいたのは、倒れているミリアとミリアを庇いながら剣を構える満身創痍のゲンマ、そして相対するは甲冑を纏う茶髪の男だった。

甲冑は白くまさにみんなが想像するような騎士の姿、甲冑には1つの剣に蛇が巻き付いてる紋章。

俺はアイツの顔を知っている…


「グラアアン!!」


そう叫びながら剣を抜き襲いかかる。

ガキーン!!

剣と剣がぶつかり合い火花が散る。


「お前か…お前が村を…ヴェスタを燃やしたのかぁ!」


「といったら…どうする。お前に俺を倒せるのか?」


「倒すんじゃねぇよグラン…俺はお前を殺すっ!」


ラインはゲンマさん達に駆け寄る。


「オヤジさん!大丈夫ですか?」


「あ、あぁ…なんとか生きてる」


「ぐはっ!」


勢いよく外に吹き飛ばされる。


(あのヤロー何しやがった…)


たった一振り受けただけであちこち切り傷があった。


「アルド!」


ラインはグランに向かって銃口を向け放つ。だが、銃弾は空中で止まる。


「結界・アイギス…」


「狙いはいい…だが、相手が悪かったな」


(頭がガンガンしやがる。身体中いてぇ…でも…)


剣で体を支えながら起き上がる。

再びグランに剣を向け、駆ける。


「はああああっ!」


赤黒い粒子のようなものがアルドの剣や体に巻き付く。

グランはアルドに剣を振り下ろす。しかし


「なにっ!?」


そこにはアルドの姿はなくアルドはグランの後ろにいた。さらにグランの体は既に斬りこまれていた。

幻影刃、己自身の体を幻とかし切り込む技。


「どうだ…はぁ、はぁ、」


グランは余裕の笑みで


「このような魔法、いや魔技を使うとは…。いい一撃だ。この一撃に免じて引いてやる」


なんて言ったアイツ、冗談じゃない。


「はぁ?待てよてめぇ!ぐはっ!」


傷口に剣を差し込まれた。

グランは蔑むように


「その傷で何ができる。優しさは素直に受け取れ。それともこれじゃ足りないのか?」


「てめぇ…」


グランを睨みつける。この村にボルカウルフを呼び込みんだのはきっとこいつだ。だから許さねぇ絶対に。


「許さねぇ…から…な!…グラ…ン……」


そこで俺の意識は途絶えた。


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