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4 いつの間に。




 そもそもフィロザ様は、どうして私を口説くことにしたのだろうか。彼だって、許嫁関係が解消されて惨めな令嬢だという噂を聞いていたはず。

 私のどこを好きになったのだろうか。

 でもまだ好きだなんて言われていないのに、問うなんて出来ないわ。

 なんて考えつつも、また彼が来るまで陽射しの中でまどろんだ。

 そして、夢を見る。微笑むフィロザ様。大きな手が、眠る私の頬を撫でる。心地いい。

 本当に撫でられている感触がして、目を覚ませば彼がいた。驚きのあまり飛び起きる。


「驚かせてすまない。あまりにも可愛らしく眠っているから、つい触れてみたくなった」

「……気配を消して近付くなんて、驚いてしまいますわ」


 完璧に気配を消すなんて、流石は人間より魔力の扱いが上手い魔族の王子様だ。それにこのエリート学園で学年一位の成績の持ち主。

 フィロザ様は、悪びれた様子がなくご機嫌な表情で私の隣に座った。今日は隣に座るのか。近い。寝跡がついていないか、掌に触れて確認した。


「今日も美しい。シェリエル嬢」


 見抜いたように、フィロザ様は告げてくる。


「ありがとうございます。フィロザ様も素敵です」


 微笑んでし返しに褒めてみた。


「そう思ってくれていたなら光栄だ」


 頬杖をつく仕草も、優雅で素敵だ。

 その姿勢のまま、フィロザ様は私を見つめてきた。

 また見つめる攻撃? なら私だって見つめ返してやるわ。

 私も机に頬杖をついて、見つめ返した。隣だから近い。

 暫く黙って見つめ合った。よくよく考えてみれば、これってなんだか変よね。急に、今更、意識してしまった。

 戸惑いが顔に出たのか、彼から動いた。

 私の方に身を乗り出して、顔を近付けてくる。

 ちょっと待って! 私そんなつもりで見つめていたわけじゃないわ!

 言う間も無く、私はキュッと目を閉じた。

 すると、額に唇が重ねられる。額に口付け。


「……」

「じゃあまた明日」


 クスッと笑って、フィロザ様は颯爽と去ってしまう。

 私は熱く火照る顔を、両手で押さえた。

 なんてことなの。私ってば、いつの間にか彼に口説き落とされたのだろうか。そりゃ素敵だと思っているし、好意を向けられていると思うと悪い気もしない。

 やだ。好きになったのだろうか。いや、嫌ではない。多分。どうなんだろうか。初恋って言うやつだろう。

 きゃあ! なんだか落ち着かない!

 思い浮かぶのは、フィロザ様の優雅な言動に、微笑み。私を映すサファイアの瞳。笑みを浮かべる艶やかな唇。私に触れる長い指先。

 ああ、ここ数日彼のことばかり考えてしまっているじゃないか。

 見事に、口説き落とされた。







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