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11 興味。




アルファポリスに載せた記念にちょっと書きました!

20190102




 甘い甘い甘い恋は、そう長くは続かなかった。

 それはある日の午後のこと。

 ある教室の窓際にフィロザ様がいた。窓の外を見つめていたものだから、何を見ているのか気になって近付く。


「何を見ているの? フィロザ様」

「ふふ。フォーブス嬢だよ」

「え……」


 楽しげに笑うフィロザ様から、私はバッと窓を見た。


「迷い込んだ猫の救出中みたいだ」

「……」


 窓からは中庭が見えて、その植木の一つにミリア様がいる。一生懸命、木に登って猫に手を伸ばそうとする姿があった。


「クラウス・サルバトーレは、そういうところに惹かれたのだろうか」


 ギュッと胸が締め付けられる。

 純粋で優しいミリア・フォーブスに惹かれた。

 フィロザ様の目が、輝いて見える。無邪気な輝き。

 奪われるのではないかと、恐怖した。


 クラウスが私ではなくミリア様を選んだように、フィロザ様もミリア様を選ぶのではないか。


 そんな悪夢を見てしまうほど、思い悩んでしまった。

 私と居ても、ミリア様を捜してしまうのではないかと、一緒にいることが出来ずに彼を避けてしまう。

 図書室Bにも行かず、誰もいない空き教室で過ごした。

 気配で見付けられないように、魔力は抑え込んだ。

 本当にミリア様を選んだらどうしよう。

 耐えられる?

 想い人が、他の女性を選んでしまうなんて。

 あんなに濃厚な一時を過ごして、忘れられるわけがない。

 思い浮かべるだけで、涙が溢れてしましそうになる。

 フィロザ様が、そう簡単に掌を返すなんて思いたくはない。けれども、私よりもミリア様の方が女性として可愛らしいと思えた。

 私なんて令嬢の中でも、薔薇のように棘が鋭い女性と思われている。

 棘のない花の方が、良いに決まっているだろう。

 愛らしく可憐な花。

 

「ふえ……」


 嗚咽を漏らして、ついに泣き出してしまった。

 両手で目を押さえつけて、必死に涙を堪えようとする。


「シェリエル?」


 名前を呼ばれてビクッと震え上がった。


「どうしたんだい?」


 フィロザ様が目の前にいて、蹲る私を覗き込んだ。

 勝手に嫉妬して、勝手に泣いているところを見つかってしまった。

 私は。

 私は……ーー逃げ出した。




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