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夢想恋歌  作者: No.Tri
9/9

もう一つの可能性

暖かな日差しが窓から差し込み、台所から漂ってくる臭いで目を覚ます。四角い電子時計に目を向けると6時47分と表示されている。いつもなら慌てて準備をするが今日は日曜のためゆっくりできる。のそのそと布団から這い出て顔を洗うために洗面所に向かう。

リビングの近くを通ると一段と料理の臭いが強くなり、腹が減ったなーと呑気なことを考えながら目的地へ歩みを進める。

目的を達成しリビングに向かうと彼女はエプロンを身に着け、料理を皿に盛っているところであった。


「おはよう」

「あっ、おはよう!今日はねー、スクランブルエッグとトーストです!」

「いい匂いだし、美味しそうだな」

「へへー、あっ、いつき侑那ゆきな呼んできてもらえる?」

「おう、分かった」


早速とばかりに二人が眠っている部屋に向かう。階段を上り、いつきとゆきなの部屋と書かれている掛札がある扉の前に着きドアをノックする。いくら待っても返事が返ってこなかったため、ドアノブに手を伸ばし部屋へと入っていく。カーテンから入ってくる陽の光は部屋をある程度照らしているが、二人を起こすには力不足だったのか気持ちよさそうに寝ている。

足音を立てずに二人が眠っているベッドに近づき、左手で樹の左頬を、右手で侑那の右頬を同時につねる。んんと意識が覚醒したのか侑那は声を上げるが、樹はまだ覚醒しない。少しだけ左手の力を強めぐにーと引っ張る。そこでようやく樹の意識が覚醒する。


「おはようおとーさん」

「んー?おとーさんだおはよー」


侑那が初めに挨拶をし、続いて樹も挨拶をする。


「おう、おはよう、朝ごはんできてるから早く起きろ」

「「分かったー」」


まだ眠気が取れないのか、目を擦りながら二人ともベッドから起き上がる。二人を急かしながら洗面所に向かわせ、一仕事が終わったとばかりに達成感を覚えリビングに向かう。


「「「「ごちそうさまでした(!)」」」」


皆が朝ごはんを食べ終え、絢が皿を片づけている。手伝おうか?と聞いたが笑いながら大丈夫と断られたため二人の子供の話し相手になっている。侑那は先月6歳の誕生日を迎え、樹は今年で5歳になる。そんな二人と話しながら佐藤自身もニヤニヤしている。


「おとーさん、今日はどうするの?」


侑那はふと疑問に思ったことを父親にぶつける。


「そうだなー、特にこれといって用事はないからな、家でぐーたら過ごすかなー」

「えぇー、せっかく家にいるんだから外に遊び行こうよー!」


家で休みたい気持ちであったが、樹に誘われたためそれもいいかと勘案する。


「とりあえず、母さんに聞いてみようか?」

「「うん!」」


二人の明るい返事に思わず笑顔を浮かべながら絢に聞きに行く。

絢は鼻歌交じりで皿を洗っているため、足音をなるべく立たせないようにそっと近づいていく。


「絢ちょっといいか?」


彼女はビクッと肩をあげ、キュッと蛇口を閉める音がなり、こちらへ振り返る。


「ビックリしたぁ、どうしたの?」

「あいつらがさ、外に遊びに行きたいらしんだけど、どうしよっか?」

「うーん、そうだなぁ、今日は暖かいしピクニックにでも行こっか?」

「分かった、あいつらに伝えてくるよ」

「うん、私もお弁当の用意しとくね!」


二人はその後も軽くやり取りを交わし、各々の仕事に取り掛かる。


-------------------------------------------------------------------------

 子供たちは芝生の上で追いかけっこをし、佐藤と絢は芝生の上にシートを敷き、そんな子供たちの様子を笑いながら見ている。太陽は真上に昇り、朝とは違った陽を浴びせる。

遊び疲れたのか、二人の子供たちはシートを敷いている場所に帰ってくる。


「おかーさん、お腹減った!」

「僕も!」


絢は子供達の様子に笑いながらも弁当を取り出し、昼食の準備に取り掛かる。

そして、皆で食事をしながら雑談をする。


「侑那と樹は将来の夢はなんだ?」


ふと佐藤は疑問に思ったこと子供たちに聞いてみる。


「しょうらい?うーん、私はお嫁さんになりたい!」

「僕は征夷大将軍になりたい!」


侑那は女の子っぽい将来図を語って、樹は夜放映されているドラマを見た影響なのか、今はない役職になりたいと語っている。佐藤と絢は樹の答えに顔を見合わせプッと笑いあう。


「侑那は母さん似だから綺麗なお嫁さんになれるよ、樹はそうだなー、頑張れるばなれるぞ!」


佐藤は侑那に関しては本心で、樹に関しては有耶無耶にしながら答える。すると逆に樹から質問される。


「おとーさんやおかーさんは将来の夢は?」


うーんと唸りながら佐藤は考えるが、隣の絢は直ぐに答えを返す。


「私は、二人の立派な姿を見れればいいんだけど、欲を言えば孫をみることかな~」


絢の返答に確かにと思いながら、佐藤も返事をする。


「俺も、こんな夢のような生活が続けばいいなぁーとは思うが一番は二人の孫だな」


回答になっていないような回答をし、家族での雑談は続いていく。


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 闇に閉ざされたような部屋にテレビの光のみが部屋の唯一の光源となっている。そのテレビの前には、一人の男が足を崩し座っておりテレビを凝視しながら涙を浮かべている。

映し出されているのはニュースであり、男はリモコンを操作し音量を上げる。


『今日○月○日にトラックとの接触事故により、医者である佐藤 翔(26)さんが死亡しました。現在はトラックを運転していた男を拘束し、警察が事情聴取を行っています。続きまして、次のニュースです。○○病院で意識不明だった柳 絢(26)さんが息を引き取ったとのことです。次のニュースです........』


淡々とニュースキャスターは告げていく。男は声を震わせながら呟く


「佐藤の...馬鹿野郎....」


その言葉は部屋に空しく響くだけであった.....

遂に終わりました、夢は夢に終わる。拙い作品でしたが呼んでくれた皆さまに感謝感謝です。




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