01 両親の話
Twitterの呟きを小説化。
番外編から読んじゃいます?
彼は普通の家に生まれた。
ラジオで陰陽師の栄光とか言う番組を聞いて、ああ、そんなことしてる連中もいたなーと思うくらいには一般的な生活を送っていた。
友人と馬鹿なことして、泥だらけになって帰ってきて、母に怒られて、父に苦笑いされ、兄たちに指を指されて笑われ、その兄たちに母の拳骨が落とされて笑う、そんな毎日。
しかし、そんな普通とも思わなかった普通な日常は、彼が小学校の卒業式と同時に終わりを告げた。
「その子を、本家で買い取りたい」
家の前に置いてあった黒塗りのでかく長い車から出てきたのは、スーツ姿のボディーガードを引きつれた和服の壮年の男性。
その子と指を指されたことに気が付いた彼は両親に目を向けるが、その両親はその男性を知っているらしく、一緒に話していた兄たちも彼の前に立ちはだかり、まるで彼を守るかのようにその男性を睨みつける。
「うちの子を渡すつもりはありません」
母の、そんな硬質な声を彼が聞いたのは初めてだった。
思わず首を傾げると、一番歳の近い兄が他の兄たちによってできた壁に隠れるように彼の腕を引っ張った。
「どうしたの? 兄ちゃん」
「大丈夫だ、俺らが守るから」
「?」
腕を引かれ、一歩踏み出そうとした瞬間、背筋を這うような嫌な感じに、その腕ごと兄を引き倒した。
「え!?」
元々引っ張られると思わなかった兄は後ろにすっころび、彼はその兄を支えて、嫌な感じの正体を驚きの声と共に見つめていた。
空中を切り裂く炎。
それが二人の、まだ子供な二人の少年が見た光景だった。
「やはり………普通にしておくにはもったいない」
壮年の男が言う。
わけが分からず、驚きの声に駆け寄って来た兄たちも同じようにその光景に見とれた。
「それでも」
「元々分家は本家に従うものだ」
「我々はあなたたちとはもう縁を切っている!」
嫌な感じの正体。
後で彼は知ることになるのだが、それは式紙という、自らの中にある霊力を呪符を使って具現化したものだったらしい。
「ふん、非力な一般人は我々に守られているのを知るべきなんだ」
壮年の男が手を一振りすると両親は膝から崩れ落ち、兄たちも同じように地面に沈んだ。
残された彼は、本能的に近づいてくるその男を睨みつける。
「ふむ、躾の行き届いているイヌは飼い易い」
少しの間修行すればまた家族の元に戻れると、その間何があろうと家族の安全は保障しようと、そう言われた彼は壮年の男に付いてくことになる。
車の中で説明されたのは、彼はとある神社を運営している本家の傍系にあたり、その身に宿す力は先祖帰りしたかのように強いものだったらしい。
「これから君は本家預かりとなる」
「? はい」
そうやって連れてこられた本家は、さびれた神社だったがその敷地はものすごく広く、彼はここにきてやっと恐怖を感じた。
「ねえ、君が新しい子?」
「え?」
それが彼と、本家に近しい分家の少女との出会い。
家族の為に頑張った彼は有名な陰陽師となり、その時出合った少女と結婚する。