淡い期待の擦れ違い
もう、こんなんばっか
「暇だなー」
彼は言った。
待ちに待った土曜日を通過した日曜日は毎回やることが無くなる。
小学生にとっては貴重な休日の二日間でも行動範囲と経済力の低さによって、5日間、勉強も惜しんで練った計画も一日かければ大抵が片付いてしまう。
よって、毎回日曜日になると彼の家でゴロゴロと暇を貪ってしまっている。
あぁ、なんて勿体ないと感じながらも何か特別な気分にさせるこの時間は何だかんだ好きだ。
嗅ぎなれた彼の部屋の空気が少し私をそわそわさせる。
彼とはそこそこの付き合いだ。
そう、…昔からずっとこうやって何一つ変わらず一緒に遊んでいる。
「ふと、疑問に思ったのだがこの年になって私と二人きりで部屋に居ることに関して何か思うことは無いのか?」
長年の疑問をぶつけてみる。
幸いそんな茶々を入れてくる子はいないおかげで変に意識することもないが、この年になるとそういうことが気まずくなってくるとよく聞く。
「んーねえなー別に、何だかんだ皆で遊ぶのも楽しいけどお前と二人で遊ぶ方が好きだしなぁ」
嬉しいことを言ってくれる。しかし、逆に新たな問題が浮上してくるのだ。
彼は私の事を兄弟かなにかと同じ括りに考えてるんではないのか…。
そうなったら、厄介だ。これ以上仲は進展しない。今が彼との好感度がマックスとなってしまう。
それは嫌だ、私が彼に望んでいる関係はそんなんじゃない。
そんな不安はよそに彼はさっきの言葉の続きを紡ぐ。
「やっぱ、お前のこと好きだなー、ずっと一緒にいたいよーなそんな安心感があるんだよ」
「………」
顔が熱い、きっと今私は熟した柘榴を食べたときのような顔をしているだろう。
対面していたら終わっていた、今すぐ転げ回したいほど体中が甘酸っぱい。
もう今のは完全に告白だろうか、プロポーズであろうかっ!
「そ、そ、そんな、私でいいのかい?わたしってほら、発育も他と比べて皆無なくらいだし、君に社会的な承認欲求を満たしてやれるほど顔もよくないとおもうのだがぁ…」
にやけた口が塞がらない、言葉を紡いでいないと気持ちが抑えきれなくなって爆発してしまいそうになる。
「あぁ?そんなこと気にしてんのか、男はハートだろ」
「………」
ハートで愛してくれるのか!!
これはもう正直たまらない。
脈絡もなく唐突すぎた告白だったけど許そう。
それほど熱烈だった。
「嬉しい、嬉しいぞ、君がこんなにも私の事を思ってくれていたなんて…私も、君のことが、す、好きだ!付き合ってくれるか?」
思いのたけを告白した、長年ため込んでいた本当のきもち。
それが、やっとついに彼に伝わったのだ。
「…つきあう?どこへだ??」
…伝わったのか?
「なっ――何の冗談だ。そんなギャグこんなタイミングじゃ笑えないぞ」
「はぁ?付き合うってカップルになるってことか、そっちの方が笑えねーよ」
話しがかみ合わない。何故なのか、お互いの気持ちは一緒の筈だろう。
「いやいやいや、男が女に好きと言ったんだぞ!それはもうそういうことしか」
「へ?男が……女ぁ?」
「疑問形で私を指差すな!私だって立派な乙女心を持ってるんだぞ!!」
「いや、お前、だって…」
まさかまさかまさか―――
私は困惑と興奮が相まって顔が真っ赤になる、思わず涙ながらに彼をベットの上に押し倒す。
そして、彼を馬乗りにして彼の右手を私の左胸部に押し当てた。
彼は泡を喰うような顔をし右手のひらの感触から何を感じ取った。
「はぁ!?お前、女の―――」
私はそれ以上は言わせないよう彼の唇をふさいだ。