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エピローグ

 

 父と母と子と精霊の御名の元に。


 かつて世界はすべてその中にありました。

 精霊の御名の元に平和がずっと続いていました。

 しかしある人間が火を見つけます。

 人は火を起こすことを覚えました。

 動物が焼けば食えることを知りました。

 肉を焼くことを覚えました。

 時々見つかる死骸を焼くだけでは物足りなくなりました。

 動物を殺すことを覚えました。

 動物を殺すための武器を作りました。

 すべての物を祝福する精霊は怒りました。

 人間を見放し、人を除く動物達と共に山にこもり、海の深くに住みました。

 人間はそれを追いかけました。

 殺して食べました。

 余ったものは飼って増やしました。

 そしてまた殺して食べました。

 やがて人間は数と武器の力で精霊さえも打ち倒すことができるようになりました。


 精霊は悪魔と呼ばれるようになりました。


 その後に起こったことを少しだけお話しましょう。

 心の悪魔、ディアルラを中心とする一派が人間に大規模な戦いを挑みます。心の魔法の力は絶大で、人々の思想をディアルラのものへと塗り替えてしまい、あらゆる者共が彼女の兵隊として人間に挑みました。

 動物、植物、自然をはじめとする世界そのものが人間の敵となりました。

 人間ですら人間と敵対していきます。

 すべての心ある者は彼女の味方。

 ですがディアルラは敗北しました。

 彼女を殺したのは心無き者。

 機械の兵隊。

 機械の兵器。

 今度こそ致命的な打撃を受けた悪魔達は勢力を大幅に減少させました。空白となった領域に人間の勢力が黴のように蔓延っていきます。街を発展させます。やがて街道と呼ばれるものは必要がなくなり、街と街が直接隣接していきました。

 いよいよ勢力を増した人間達は繁殖を繰り返します。

 それから千年の時が経ちました。

 ある人間が、いつものように家の外に出ました。仕事に出かけるつもりでした。陽差しの強い日でした。青々とした空を見上げて、気持ちよく今日をはじめようとしていました。

 不意に彼の目に何かがかかりました。赤い液体でした。血でした。額から垂れていました。怪我でもしたのかと思い、血を拭おうとしましたが、拭うことができませんでした。手からも出血していたからです。彼は悲鳴を挙げました。

 悲鳴を聞いて別の人間が家から出てきます。その人間もまた皮膚が爛れ、全身から出血しました。死にました。

 なにが起こっているのか理解できた人間はいませんでした。

 彼らは一様に陽の光を浴びて、皮膚が爛れて絶命していきます。夜になってもそれは続きました。月が太陽の光を反射し、人々を焼き殺し続けました。本来のオルガ族は夜間の活動は平気なのですが、その因子だけを析出させて強化されたそれは反射されたわずかな陽光だけでも人々を焼き殺すことができました。

 賢明な人間が地下鉄道をベースとしてトンネルを繋げて行きました。トンネルを他の家の地下にまで到達させ、同じように怯え、隠れている人間を救出していきました。人工の光で作物を育て、食糧を確保しました。こうして人類は生き残りました。

 アルディアル=ディアーの目論みは失敗に終わりました。彼の敗因は大規模な地下鉄道という広域の地下のコミューンにまで発想が到達しなかったことでしょう。あの時代の地下といえば、一部が貯蔵庫などに使用されていた程度で街々を繋ぐほどの広域のものはとてもではありませんが実用化されていませんでした。

 とはいえ彼は地上から人間を一掃することには成功したのですから、それはそれで彼の偉業といえるかも知れません。

 彼は悔しがったでしょうか。

 あるいは失敗もまたおもしろいと笑ったでしょうか。




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