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Soul cradle


 最初に違和感を嗅ぎつけたのはやはりというべきかレセナだった。

 悪魔達が退いていく。残存戦力からしてまた抵抗は可能なのに。騎兵の相手をしていたライベアスが逃走する。他の悪魔達の撤退を助けるように動いている。魔法使い達を悪魔から引き剥がして強引に逃がしていく。

「合図はこなかったか」

 ラクシェイムの居た灯台から声が聞こえた。レセナはそこへ耳のピントを合わせる。ラーンスロットと戦っていた悪魔。レセナはミグルリが灯台から出ていなかったことを、いままで聞き落としていた。どうしてこの悪魔はこんなところへ留まっているのだろうか? レセナは頭がいい。急に勢いを増して流れてきた川の水とあわせて、直ぐに答えを導き出した。

「みなさん逃げてください」

 王の街の魔法使い達は直ぐにその声に従った。戦場全体の音を聞き取ることができるレセナの指揮は自分たちの判断より優越することを知っていた。が、外から来た魔法使い達の幾らかは違った。理由と説明を求めた。その時間が惜しいからレセナはそれを省いたというのに。唯一メイデンだけが「撤退」と叫び、旗を振ったがライベアスに引き付けられた彼女はミグルリから近すぎた。

 ミグルリは稲妻の悪魔だ。電極を設定して二点間に電位差を発生させ、稲妻を呼ぶことができる。ミグルリは天空と大地に電極を設定して、電位差を発生させた。

人間達が莫大な量の魔力に気づいたときにはもう遅かった。晴天から戦場に向かって、一筋の稲妻が落ちてきた。バリバリバリと凄まじい音を立てて極大の雷鳴が突き刺さる。それだけでは終わらなかった。悪魔によって戦場に設定されていたこの場所には、数日をかけてクトゥルユーがたっぷりと土壌に水を染み込ませていた。このタイミングで地上に溢れ出した地下水が足元から兵士達へと電撃を伝わせた。クトゥルユーはこの地下水の中にいたのだ。兵士達は雷に近かったものから順に焼き尽くされた、遠かったものも気を失って倒れる。メイデンと騎兵達が戦力を失う。一部の魔法使い達と、更に遠かった幾らかの兵士だけが難を逃れていた。稲光と轟音、悲鳴が生き残った兵士達の精神を直撃した。

一網打尽。

イトイーティッドとラブルヒルムの策略が成功していれば被害はこれに留まらなかっただろう。おそらくこの一手だけで全滅していた。あまりにもスケールが大きすぎるために人間には発想できなかった一手だった。そんなことができるはずがないと思い込んでいた。

 屍の山となった戦場をライベアスが悪魔を引き連れて歩いてくる。

「ひっ……」

 誰かが恐怖の声を漏らした。恐怖は伝染する。後ずさりした兵隊達が、そのうち逃げ出し、壊乱していく。

「まあこうなるわな」

 レトレレットが楽しそうな声を出した。ただ一つの救いは悪魔達にも負傷が多く、戦意を失ったものが逃げだしているらしい。ライベアスが引き連れている悪魔の数はたったの四人だった。ただし最後まで戦意を失わなかったこの四体の悪魔は、実力もそれ相応の物だろう。レトは小さく息を吸い込んだ。血気に逸る自分を抑えるように、熱を吐き出した。

「ルゥゥゥウヴオオオオオン」

 空気を震わせる狼の遠吠えが、味方を勇気づける。

敵の戦意を挫く。

 二十人の魔法使いと一人の傭兵が、先陣を切ったレトに続いて雪崩れ込んだ。


 のちに彼らは、この戦いに至るまでに脱落したディベーロ、ラクシェイム、ラーンスロット。裏方として直接戦闘には参加しなかったレセナ、レイフォール、ジルクリフト。別の場所で戦っていたヨゼフ、雪見、アルディアルの九人とあわせて、「二十七人の英傑」と呼ばれるようになる。

 つまりはさらに四人が死んだ。




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