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Judgement days



アルディアルがリビトの傍にかがみ込む。

「どうだ?」

「ダメですね。もう息がありません」

「そうか。野郎、いいやつだったんだがな……」

 『偽の魔法』がクトゥルユーの注意を逸らしてくれなければ、きっとレトたちは勝てなかっただろう。戦いに犠牲は付き物だ。レトは少しだけ惜しんで、すぐに割り切って、切り捨てた。

「しかしクトゥルユー級の悪魔に対して、強力な魔法使いが一対一交換で済んだのは奇跡に等しい戦果です」

「フォルのやつが再起不能にされてるがな」

「そうなのですか。それでも二対一交換、上等な結果と言えるでしょう」

 別に同僚の性格について、レトはどうでもよかった。ただ単純な感想として、アルは人間を数で考えるのだなと思った。そして同じ地獄を戦い抜いた英傑のことを毛ほども気にしていない。

「俺はこれからライベアスたちを追いかけるつもりだが、てめえはどうする? 一緒にくるか」

「すでに手遅れですからやめておいたらどうです? 『水の魔法』で下流に流れていきましたから、追いつけませんよ」

「それでも索敵が任務だからよ」

「帰ったほうがいいですよ。帰りましょうよ」

「あ? 変にゴリ押すじゃねえか。てめえらしくねーな」

「ああ、もう……」

 レトは胸のあたりに違和感を覚えた。小さな爆発音。痛み。胸を押さえる。血が溢れていた。火薬の臭いが鼻を突く。

「めんどくさいなぁ」

「て、めえ……?」

 小規模ながら効果的に配置され、指向性を与えられた爆撃がレトの肋骨を砕き、内蔵のいくつかに致命的な損傷を与えていた。アルは倒れたレトを冷たい眼で見下ろす。

「さて、ではそろそろワタシの計画をはじめましょうか」

 ここでアルディアルが姿を消せば、悪魔達に誘拐されたものだと思うだろう。アルは元々中途半端な立場だった。王の街に置かれていたのは、レトや騎士団の監視下に留めておきたかったからだ。幸いにして一通りの準備は整っている。王の街にも仕掛けてきた。

 アルの容姿はそれほど珍しいものではなく、他の街に逃げ込めばそれほど早くは見つからないだろう。

 大手を振ってヨフに会えなくなるのは少し残念だが、個人的に気に入っていただけで特にどうということはない。そもそもアルにとって感情は楽しむものであって惜しむものではなかった。

 嬉しくて楽しい。

 怒って楽しい。

 哀しくて楽しい。

 楽しくて楽しい。

 だからアルは父親を殺した時も、悲しいことが楽しかった。精神的な意味でアルを打ち破る者は存在しないだろう。どんな苦痛であってもアルはそれを楽しむことができる。

「人間を絶滅させる。楽しい仕事になりそうです」

 アルはレトの死骸を適度に叩き潰し、川に流した。自分が殺害した痕跡を消し去り、その場を離れた。

 実に楽しい気分だった。





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