8 盾の街
――とあるホテルの一室。ゼラ=クロンフェットは六階の最奥の部屋を開けた。そして部屋の暗さにぎょっとした。中央の円卓に置かれているいくつかロウソクが立てられているだけだ。ほぼ真っ暗だった。中の人間はみんな仮面をつけて、ぶかぶかの黒いローブで体格をわからなくしている。ここにいる人間は全員が素性を明かせない人間だからだ。仮面もローブも置いてきたゼラは空気が読めていなかった。
ゼラはテンションが低い。ここに来る前に「危険物の持ち込み禁止」といわれ愛剣を取られたからだ。あとで返してもらえると言っても、ゼラは眠るときでも剣を身につけているのでどうも落ち着かない。
「二十七分十九秒の遅刻だ。同志ゼラ、早く座れ」
一番扉の近くにいた男が振り返らずに言う。
ゼラは椅子を引きながら期限の悪さに任せて「……なんやアホみたいやな自分ら」と言った。椅子に深く身を預けて頬杖を突く。
「や、わかるで? 集団でおるってことを殊更意識させて、個性を消すためにわざわざこんな体裁とりつくろっとるんやろ? 俺が言いたいんは、そんな体裁取り繕わんと維持でけへん集団が滑稽やなって」
「その汚い口を閉じろ」
「なんや。自分らで呼んだくせにえらっそうに」
にやにやと嫌な笑みを浮かべながら悪態をつく。
円卓の男は果たして彼を味方に引き込んだのは正解だったのかと不安に思う。
「んーでなんの話しとったん?」
「同志ディべーロの話だよ」
別の男が言う。こちらの声はかなり若い。
「おお、ディべーロか。あいつに何させとるん?」
「暗殺だよ」
ゼラは少し顔を顰めた。
「んー……、あいつ真面目やからなぁ。あんまりそういう裏事引き受けさせんほうがえーんとちゃうか」
「黙れ」
「そういうことは俺に頼みぃや。お得意さんには安くしとくで」
「黙れといっている」
つまらないやつだなーと思いながら、一応従っておく。ゼラにとって彼らは大事なクライアントだ。彼のメンテナンスには金が掛かるのだ。
「それにどうせ貴様にも働いてもらうことになる」
「お、待ってました」
楽しそうな声色のゼラに向かって、誰かが「狂人め」と言った。
ゼラは、お互い様やろ? と口の中で呟く。




