5 氷の街
――ディべーロは役場のほうへ歩いていた。古い友人と会えたことが単純に嬉しかった。しかし一方でいまの自分をみれば、彼がどう思うかを考え、暗い気分になる。
ヨゼフ、俺は変わったよ。
なぜ自分があんなことを言ったのかわからない。役場の窓口を尋ねる。受付で「ご用件は?」と女の役員に訊かれ、ディべーロは小声で「実は知恵の実を食べたんだ」と答えた。
受付の女は頷いて奥へ引っ込む。
しばらくしてディべーロに、自分についてくるように言った。案内された部屋には、町長室と書かれたプレートがかかっている。女が三回ノックする。
「どうぞ」
声が掛かったのでドアを開く。女は入ってこなかった。受付のほうへ戻っていく。
ディべーロが中へ入ると、細長い体つきをした男が立ち上がって礼をした。針金がスーツを着ているようだった。
「標的の宿泊先は?」
町長は宿の名を口にする。
それはついさっきヨフがチェックアウトしたばかりの宿だ。
「使い魔を連れているようだったので、それなりの魔術師だと思いまして」
「ドグル風情が生意気な」
ディべーロは吐き捨てるように言う。
「我々の手には負えないと思い連絡させていただきました」
「そう固くなるな。同志よ。よく知らせてくれた。到着が遅れてすまなかった。すぐに取り掛かろう」
「よろしくお願いします。あの汚らわしい犬どもにどうか制裁を」
町長が頭を下げる。
「必ず」
と、だけ言い、ディべーロは部屋を出た。
その宿を向かう。
が、肝心の標的は留守だった。宿の主人に聞けばチェックアウトが済まされているらしい。無駄足だったか。いいや、周りを探せばまだ会えるかもしれない。
ディべーロは外を適当に歩き回って聞き込みを始める。
目撃したという女を見つけ、少し話を聞いた。
彼女はそのドグルの額に手当をしたという。忌々しい犬になど施しをしてやるヒュルムが、ディべーロには信じられなかった。
許せなかった。
ディべーロは銃口を女の額に当てた。
「え? 軍人さん?」
引き金を引いた。
脳漿と血があたりに撒き散らされた。黒く焦げた骨の欠片と皮膚の断片が雪を汚す。
苛立ちは消えなかった。
舌打ちをしてディべーロは氷の街を去った。




