表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/96

5 氷の街




 ――ディべーロは役場のほうへ歩いていた。古い友人と会えたことが単純に嬉しかった。しかし一方でいまの自分をみれば、彼がどう思うかを考え、暗い気分になる。

 ヨゼフ、俺は変わったよ。

 なぜ自分があんなことを言ったのかわからない。役場の窓口を尋ねる。受付で「ご用件は?」と女の役員に訊かれ、ディべーロは小声で「実は知恵の実を食べたんだ」と答えた。

受付の女は頷いて奥へ引っ込む。

 しばらくしてディべーロに、自分についてくるように言った。案内された部屋には、町長室と書かれたプレートがかかっている。女が三回ノックする。

「どうぞ」

 声が掛かったのでドアを開く。女は入ってこなかった。受付のほうへ戻っていく。

 ディべーロが中へ入ると、細長い体つきをした男が立ち上がって礼をした。針金がスーツを着ているようだった。

「標的の宿泊先は?」

 町長は宿の名を口にする。

 それはついさっきヨフがチェックアウトしたばかりの宿だ。

「使い魔を連れているようだったので、それなりの魔術師だと思いまして」

「ドグル風情が生意気な」

 ディべーロは吐き捨てるように言う。

「我々の手には負えないと思い連絡させていただきました」

「そう固くなるな。同志よ。よく知らせてくれた。到着が遅れてすまなかった。すぐに取り掛かろう」

「よろしくお願いします。あの汚らわしい犬どもにどうか制裁を」

 町長が頭を下げる。

「必ず」

 と、だけ言い、ディべーロは部屋を出た。

 その宿を向かう。

 が、肝心の標的は留守だった。宿の主人に聞けばチェックアウトが済まされているらしい。無駄足だったか。いいや、周りを探せばまだ会えるかもしれない。

 ディべーロは外を適当に歩き回って聞き込みを始める。

 目撃したという女を見つけ、少し話を聞いた。

 彼女はそのドグルの額に手当をしたという。忌々しい犬になど施しをしてやるヒュルムが、ディべーロには信じられなかった。

 許せなかった。

 ディべーロは銃口を女の額に当てた。

「え? 軍人さん?」

 引き金を引いた。

 脳漿と血があたりに撒き散らされた。黒く焦げた骨の欠片と皮膚の断片が雪を汚す。

 苛立ちは消えなかった。

 舌打ちをしてディべーロは氷の街を去った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ