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復讐した女


 付き合っていた男と一晩過ごした後

「俺達、終わりにしよう」と告げられた。





信二との出会いは

会社の上司というありきたりなものだったけど

優しくて包容力もある大人な雰囲気の信二に、社会人になったばかりの私は瞬く間に恋をした。




付き合って1年半それなりに順調に進んでいると思っていたし

そろそろ結婚という文字が私の頭に浮かんでいた。



二人で行った温泉旅行の時も

「結婚しても旅行には行きたいよな」なんていうから

信二もそのつもりなんだって疑ってもいなかった。



だから信二からの別れ話はまさしく寝耳に水というわけで、なりふりかまわず信二にすがりついた。


会社でもちょっとした二人きりの時間に

「別れたくない」と言って詰め寄った事は何度もあった。


「女の涙は最低だ。お前とのことは終わった話だ」

と冷たく言い切られて携帯を着信拒否されても

まだ信じられなかった。






突然の信二の豹変ぶり


私は信二と別れたという現実をを受け入れられなかった





そしてそれも突然の人事異動だった。




課長から告げられたのは

私の信二に対する執拗な態度がストーカーとして訴えられても

おかしくない行為であるという事

ただ彼の方は自分にも非があったかもしれないので

できるだけ穏便に進めてやってくれという内容だった。


 



結果私は

支店で心機一転やり直してみないかという

ほぼ左遷のような形で

本店から支店への異動が言い渡された。


そして自分の中でも少し常軌を逸していたかもしれないという反省もあったから

素直に受け入れたのに・・・







半年後、私が知ったのは

信二と常務の娘との婚約発表だった。







私が全てを理解したのはその時だった。


信二は常務の娘と結婚する為に私を切り捨てた

ただそれだけの事。











あれから2年。




私は支店での仕事もきちんと果たした後

実家に戻り父の秘書としてちょっとした

復讐を実行する為、本社に挨拶に行くことに決めた。



私の父はまぁ 国内で知らない人はいないだろうという

会社の社長をしていた


二人の兄達は大学卒業後、3年間は両親からの援助を一切受けず

それぞれが父の傘下の支店などに名前を変えて入社し、実績を積んでから

名実ともに会社のいくつかを任されるようになっていた。


私は兄達とは少し年も離れていて

女の子という事もあり


大学卒業後に兄達と同じように働きたいと言っても父は

もう少し待てというばかりでなかなか働かせてくれようともせず

反対にお見合い話まで持ってくる父に業を煮やし

あの手この手で一番発言力のある母を説得し、兄達と同じように私も素性を伏せて

兄がまかされている会社の系列会社への就職を許される事になった。


ただし私の場合

自分の素性がバレればすぐに家に戻るというのが条件だったけど

両親達に監視されるという事もなく3年を過ごすことできた



信二に私の正体を言えば私は捨てられなかったのだろうか?

何かの見返りを期待するような愛ならいらないと思っていたけど


信二を愛していた時はそれでもかまわないと思ったかもしれない


でも今となっては もうそれも過去の話。






「お父さん、藤城本社の営業部の方へ少し顔を出してきてよろしいかしら?」


「・・・そうだな。まぁ、お前の好きに・・・ほどほどにな」


まぁいろんな意味で何でも知ってる狸親父に言われたくない。






「お久しぶりです。課長、藤谷です。」


3年ぶりに会った課長は 私の顔を見ても一瞬誰だかわからない顔をしたが

彼の隣りで打ち合わせをしていた信二が

硬い口調で


「藤谷君? 君は何をしに来たんだ?」と訝しげに私に語りかけた事で

思いだしたのだろう。


「あっあぁ・・ 藤谷君、ほんと 君は一体 何をしに・・?」


私は課長の言葉を遮って私はこの会社に居た頃には使わないようにしていた

口調で告げた。


「あら課長ご存知ありませんでしたの? 

今日は父の付き添いで社長にご挨拶に参りましたの」



「えっ? 社長って・・・えっ?」

バーコード頭の課長も信二も何を言っているかわからないようで茫然としていたが




「私、こちらでは藤谷という事にしておりましたが、藤城というのが本名ですの。

社会で働く上で、藤城という名前は影響力があり過ぎますので。

課長と山村さんには私の預かり知らぬ所でいろいろとご迷惑を

おかけしたようでしたので・・

それから、少し遅くなりましたが、山村さん常務のお嬢様とご結婚されましたのね。

こちらの会社では藤城の名では経験できないような貴重な経験をさせていただきまして

大変勉強になりました。

もう2度とお会いすることはないでしょうが藤城美月としても一生忘れることは

ないとお礼を言いに参りましたの。それでは失礼いたします」




唖然とする二人を置いて立ち上がると

顔を思いっきりひきつらせた常務が小走りにこちらに走ってくるのが

横目にちらっと見えた。



父は父でネチネチいじめたのだろう。





彼らがこの会社でこれから先どうなるか・・・・



あなたはどんな復讐がお望み?・・・・

















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― 新着の感想 ―
[良い点] ありきたりな反撃なのにすらすらと楽しく読める作品でした。 [一言] 古い作品ですが、ぜひ復讐された男が読みたいです。
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