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第1話 異世界への召喚


 うわっ。長い一日だったな。


 深く息を吸い、家に帰る電車を待ちながら駅のベンチでリラックスする。


 一日中、息苦しい教室の中に閉じこもっていた後だから、涼しい空気が心地よく感じる。


 …そう思っていた。


 突如、足元の床が溶けたガラスのように歪んだ。警告なんてなかった。ただ、腐敗した空気の塊が喉に押し寄せてきた。


 現実そのものが完全に引き裂かれる前に、ピシリと音を立てた。俺は虚無へと落ちていった。スマホが指先からすり抜け、俺の悲鳴を飲み込んだ永遠の闇へと転がっていく。


 目が光に慣れるよりも前に、絶叫とギャーギャーという鳴き声の耳をろうするような轟音が耳を満たし、始まりを告げた。


 痛烈な眩しさに瞬きしながら,、まぶたを無理やり開けた。目の前に恐怖が具現化した。俺は巨大な土の闘技場の中心にいたのだ。


 見上げると、心臓が止まった。果てしなく、険しくそびえ立つ円形の観客席は、完全に埋め尽くされていた。何千もの歪んだシルエット、血走った目、そして飢えた獣のような顎が、じっと俺を見つめていた。


 前触れもなく、背中に受けた凄まじい衝撃で、俺は土の上を転がった。自分がどこにいるのかを処理する前に、混乱が身体を支配した。


 起き上がろうとした。爪が俺の肩を引き裂いた。熱い血がすぐに服を濡らした。


「おいおい、人間じゃねえか。一体誰のおかげでこんな歓迎を受けられるんだ!」


「うぐっ…」


 ハハハハハハハ!


 俺を襲った悪魔は、黄色い牙を剥き出しにして耳障りな高笑いを上げた。文句を言う時間なんてくれなかった。そいつは蹴りを放ち、俺を地面へと転がした。


 砂と胆汁を吐き出しながら立ち上がった。俺の目はフィールドの表面をスキャンした。数メートル先で、倒れた者の槍の一部である、壊れた武器が光っていた。


「そんなものに手を伸ばそうとするんじゃねえ、人間?」


 そいつは再び、今度は胸への直接の突きで襲いかかってきた。俺は横に身をかわし、そいつ自身の勢いでフィールドの虚無へと引きずり込ませ、跳躍一番、槍の刃を掴んだ。


 金属は重かったが、自分でも気づかなかったほどの力強さで、俺の手はそれを握りしめた。


「来いよ。一撃でも当ててみろ。この場所には立っている者だけが残るんだ」


 ドーーーン!


 舞い上がった埃の轟音に、本能的に後ろを振り返ったその瞬間、悪魔が俺に向かって飛びかかってくる。


「誰かと戦っている時に他所見をしてんじゃねえ!」


 俺は歯を食いしばり、悪魔の一撃を止めるために槍を構えた。その衝撃で後ろに吹き飛ばされ、足元に溝ができた。


 対戦相手をじっと見つめ、周囲を見るのをやめた、その時…


 世界が爆発した。

 黒い突風が俺の胸にまともに激突した。

 俺は空中へと吹き飛ばされ、自分の身体のコントロールを失った。


 バキッ!!!


 俺の背中は、巨大な石柱に激しく激突して止まった。頑丈な構造物が、衝撃でひび割れた。


 俺は糸の切れた人形のように地面に落ちた。


「…あ…?」


 肺から空気が消え去った。何も焦点を合わせることができず、俺の目は見開かれた。息を吸おうとしたが、喉を引き裂くような燃えるような虚無が入ってくるだけだった。


 一秒後、痛みが俺を襲った。


 それは燃え盛る大波だった。まるで内臓が本来の場所から飛び出したがっているかのような、耐え難い内部からの圧力を感じた。


「あぐっ…!」


 うめき声が口の中で詰まった。ドロリとしたメタリックな熱さが食道を上がってきた。


 俺は吐いた。大量の熱い血が砂の上に飛び散り、地面を鮮やかな赤に染めた。


 俺の周囲で、悪魔たちの残虐な笑い声が合唱となって爆発した。


 だが、奇跡が起きた。


 確かに、痛みで頭がおかしくなりそうだった。だけど、耐えられる気がしたんだ。しかし…


「え…?」


 冷や汗に濡れたまつ毛の隙間から、辛うじて顔を上げた。頭をほんの少し動かすと、白髪の女が目を細めているのが見えた。


 ひび割れた柱に寄りかかり、胸の痛みを無視してゆっくりと立ち上がった。


 手の甲で口元の血を拭い、彼女の目をまっすぐに見つめて、冷たい笑みを無理やり浮かべた。


「おいおい、これは予想外だな。相手に対して裏切りの隙を突いて背後から殴るなんてな」


「私に向かってそのような口を利くとは、大した度胸だな。人間」


 彼女の声は穏やかだったが、鋭かった。


「純血でない者は、この世界では歓迎されないのだ」


「……」


「自分がどこにいるのか、さっぱり分かっていないようだな。この場所は、あの悪魔たちが私の気を引くために戦う教室なのだ」


「それが俺と何の関係があるんだ?」


「…さあな…」


「一体…彼女は何者なんだ?」俺は心の中で呟いた。


 巨大で鋭い一対の黒い角が、彼女の額から生え、頭上で威風堂々と湾曲していた。彼女の髪は長く、汚れなき純白で、暗黒の鎧と対照をなしていた。


 尖った耳を持ち、切れ上がった鋭い瞳は深紅のカーマインで、冷徹に輝いていた。


 棘や肩の鋭いエッジに満ちた、身体にぴったりと沿う黒と赤のゴシックアーマーを身にまとっていた。


 彼女のデザインの1センチ一分に至るまでが、この世界の王族であることを叫んでいた。絶対的な捕食者だ。


 彼女は俺からわずか二歩手前で歩みを止め、完全な見下しを持って上から俺を見つめた。


「お前の瞳に恐怖を感じられないな。怖くないのか?」


「……」

「なるほど、残念だ」

「うっ」


 女は俺の首を掴み、フィールドの反対側の端へと投げ飛ばした。俺は他の悪魔たちに激突した。


 起き上がろうとすると、俺の視線が彼女の視線と交わった。彼女が俺に向かって近づいてくるのが見える。


「人間の割には打たれ強いな。ほら、それを拾え。私自身が試してやろう」


 彼女はそう言い、俺に向かって自分の剣を投げつけた。俺は素早く近づいてそれを握りしめ、構えをとった。


 ズガガガッ!!!


 剣の放つ力が柄から耐え難いエネルギーとなってきらめき、俺の手のひらを焼き焦がした。


 呪われた鋼の拒絶に、これ以上耐えることはできなかった。


「な、何なんだよ…これ…耐えられない!」


 俺が柄から手を離すと、剣は地面に落ちたが、息をつく暇さえ一秒もなかった。


 まさにその瞬間、白髪の女はすでに俺の目の前に迫っており、俺のみぞおちに向けてストレートを放った。


 ドーーーン!!!


 その衝撃はあまりにも怪物じみており、俺は凄まじい力で空中へと弾き飛ばされた。


 ガシャガシャガシャッ!


 俺はフィールドの外周を激しく転がり、土と石の上に深い溝を残した。


 砂に手を突き、必死に身体を起こそうとした。

 純粋な慣性で横へと転がった。


 ドスッ!!!


 その一ミリ秒前まで俺がいたまさにその場所に、女の悪魔が鋭い着地を決め、地面をひび割れさせた。


 人間離れした努力を振り絞り、なんとか立ち上がることができた。


 だが、彼女の方が速かった。彼女は自身の軸を中心に完璧な回転を決め、俺の顔面に強烈な裏拳を叩き込んだ。


 バキッ!!!


 衝撃の強さで、俺は音速のスピードで吹き飛んだ。


 ババババババッ!!!


 俺はフィールドから弾き出され、石の壁を突き破り、外にある丘へと激しく激突した。


 建造物が俺の上に崩れ落ちてきた。


「あぐっ…」


 痛みを受け止める時間さえなかった。彼女は瞬きする間に俺の前に現れた。


 ドカッ!!!


 彼女の足が俺の胸に突き刺さり、俺を殴りつけ、地面の奥深くへと沈め込んだ。


 グチャッ!


 俺は大量の血を吐き出し、それが顔と首を染めた。痛みは地獄のようだったが、それでも耐え続けていた。


 彼女は俺の胸から足を下ろし、ゆっくりと俺に向かって歩いてきて、真ん前で立ち止まった。


 彼女の深紅の瞳は、まるでゴキブリでも見るかのような、絶対的な見下しを込めて俺を見ていた。


 彼女が右手を差し出すと、周囲の闇が凝縮され、鋭い影の剣が具現化した。


 彼女はその暗黒の武器の先端を、俺の肌をかすめるように、首筋に直接突きつけた。


「もしお前が本当に私の兄、魔王の後継者だというなら…なぜこれほどまでに弱い?」


(何を言っているんだ。俺は…)、俺は思った。

 彼女は冷徹な声でシューッと息を漏らした。一瞬視線を逸らし、自嘲気味な笑いを漏らす。


「お前は無能だ」

「……」


「この世界は完全に腐敗している…それもこれも、あいつらのせいだ」


 彼女は冷徹な声でそう吐き捨て、俺の首から剣を離した。


「純血の姉妹は、私を含めて全部で六人いる。私の名前はプリセリア、傲慢の悪魔だ。そして私の他の五人の姉妹は、純粋な利己主義によって父の帝国をバラバラに引き裂いた」


 彼女はそう続け、灰色の地平線を見つめるために後ろを向いた。そして突然振り返り、その王族の眼差しを俺に突き刺した。


「どれほど無能であろうと、お前が唯一の男だ。だから、あの玉座を要求した罰を受けてもらう」


「おい、お前が知りもしない相手に対して、よくそんなことが言えるな」


「説明してほしいか?手短に言ってやる。お前はある目的のためにこの世界へ来た。ならば、お前が来たということは、かつて唯一無二であった私たちの王に仕えるためにこの世界へ召喚されたということだ。王の死後、常に後継者が存在しなければならない。そしてそれを見つけるはずのところに、お前が来たのだ」


「何のひねりもないな」


「その通りだ。だからこそ、お前は旅を始めるのだ。後継者としてのお前の罰は、この世界を巡り、私の他の五人の姉妹を集める役目を引き受けることだ」


「あぐっ」


 俺は話そうとしたが、彼女は手の鋭いジェスチャーでそれを遮った。


「不屈の精神など、個々の人間にとっては災いだ。それに、お前は何と名乗るのだ?毎回ただ『兄上』と呼ぶわけにもいかないからな」


「まあ…俺は…リュウセイだ」

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