第二十七話 干渉
一行は、少し歩いた先にある公園にいた。
周囲に人影はない。
街のざわめきも、ここまでは届かない。
静寂の中心に、シン。
そのすぐ横に、クミ。
向かい合う位置に、千葉県の職員が立っている。
クミが、先に口を開いた。
「――お話とは?」
職員は周囲を軽く見回し、慎重に言葉を選ぶ。
「いくつか、お聞きしたいことがあります」
視線をシンに向ける。
「あなた方を雇っているのは、誰なのでしょうか」
「そして、何を目的としているのか」
一瞬の沈黙。
シンが、静かに答える。
「その二つの質問について答える必要も、義務もないと思います」
「答える義理もありません」
口調は丁寧だった。
だが、拒絶は明確だった。
職員は、困ったようにクミへ視線を送る。
「誤解があるようですが、わたくしは、ニシウラワさんと一緒に仕事をしているわけではありません」
「ですので、その質問に対する答えを、持っておりません」
職員が言葉に詰まった、そのとき。
シンが、助け舟とも取れる言葉を差し出した。
「あなた方も上に成果の報告が必要でしょう」
職員が、思わず耳を傾ける。
シンは、相手の目を見て告げた。
「――シン・ニシウラワと、その雇い主は千葉を敵とする必要はないし、そのつもりもありません」
「ただし味方にする必要も、そのつもりもありません」
「干渉しなければ千葉に対して、何かをする気はありません」
「これが…我々の公式な回答です」
それは、穏やかな言葉だった。
しかし、その裏に含まれる意味は、はっきりしていた。
――千葉は、計画の外にいる。
――だが、踏み込めば排除する。
職員は、何も言えなかった。
この場で交渉は成立した。
そして同時に、越えてはならない一線も示された。
公園の静寂は、その事実を、否定も肯定もせず包み込んでいた。




