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第二十五話 観測者
通信機が作動した。
「ニシウラワ君。どうだ、様子は?」
「特筆するほどのことはない。想定通りだ」
向こう側の声が、満足げに息を吐く。
「うん。もう世間は動き出した」
「未来に向かってな」
「もう、止められん」
一拍。
「君は――“最終目的”を、どう思っているのかね?」
「俺の意見が、必要なのか?」
「いや。君は、我々が思っていた以上によく動いてくれている」
「だから……賛成してくれているのかと思ってね」
短い沈黙。
「……時代の流れから、取りこぼされる人は、いつもいる」
シンの声は低く、淡々としていた。
「俺には、そういう人を救う力はない」
「だからといって、時代の流れを止める気もない」
言葉を選ぶように、続ける。
「“最終目的”が実現したとき、どうなるかも分からない」
「ただ――見ているだけだな」
通信の向こうで、少し間があった。
「そうか」
穏やかな声。
「君も、いろいろな場所で戦って、いろいろな結末を見てきただろう」
「なら――今度も、しっかり見届けてくれ」
通信が切れた。
シンは、しばらく通信機を見つめていた。
賛成も、反対もしていない。
止めもしない。
導きもしない。
ただ、時代がどこへ行くのかを――見ている。
それが、今の彼の立ち位置だった。




