第二十二話 深谷
「――“深谷”と連絡が取れた」
低い声が、会議室に響いた。
「向こうは乗り気だ」
「人員も充分にいる。ただ……道具類が足りないらしい」
別の男が問う。
「道具の援助は?」
「可能だ。輸送手段さえ確保できればな」
「いくらでも、というわけにはいかんが」
「スポンサーの意向はどうだ?」
「方針にも、目的にも異論はないそうだ。援助は続けてくれる」
「……こちらも、いくらでもというわけにはいかんが」
短い沈黙。
「ここでは工場作物が主流になった」
「そのせいで、ネギの生産は壊滅だ」
「不満が溜まらない方がおかしい」
「元の土地に戻って作ればいい、などと言われているが……」
声が、わずかに硬くなる。
「もう、あそこに“深谷”はない」
「帰る意味などないんだ」
「ここを潰したところで、元に戻れないことは分かっている」
「それでも――」
「同じ“自分たち”を、これ以上出さないために動く、か……」
誰も否定しなかった。
同時期。
どこかの会議室。
「いよいよ、連中が動き始めました」
「上等だ」
即答だった。
「彼らにも、守りたいものがある」
「言い分もあるだろう」
「それも正義だ」
「だが、こちらにも正義はある」
「未来も、な」
地図を見下ろしながら、男は続ける。
「潮流は、もう決まった」
「ここから戻ることなど、不可能だ」
「群馬は、喜んで返すだろうな」
「ハハハ」
「そちらは“失敗”の前例になった」
「続く者にとっては、それも教材だ」
静かに、しかし断定的に言い切る。
「我々も、彼らも」
「自分たちにとって、正しいことをしている」
「正解は――」
わずかに口角が上がる。
「進むことでしか、得られんよ」




