第二十話 通信
暗号化された回線が開いた。
場所は不明。
距離も、所属も、意図的に伏せられている。
スピーカーの向こうから、落ち着いた声が響いた。
「ニシウラワくん。いいものを残してくれたな」
シンは答えない。
「君のやり方なら、跡形もなく消すこともできたはずだ」
「だが今回は、あえて“残した”」
一拍、声は愉快そうに続ける。
「あんたたちの目的を考えれば――反対勢力を炙り出したいだろう」
「そうだな」
即答だった。
「他にもいるなら、“同志はいるんだ”と動き出す連中が出る可能性は高い」
「ぜひ、そうしてもらいたいものだな」
沈黙。
「反対するのはいい。それは自由だ」
声のトーンは変わらない。
だが、そこに含まれる冷たさは隠されていなかった。
「しかし、邪魔をするのは自由ではない」
「邪魔する側の理屈も、思想も、背景も――すべて浮上させたい」
「……最終目的のためにはな」
シンは、わずかに視線を落とす。
「そうだ」
「実行の時に、反対する側への対処を準備するためにも」
「反対派は、どんどん出てきてほしい」
「これも・・・実験だ」
再び、沈黙。
「最終目的は、君に話したときから変わっていない」
通信の向こうで、何かを確認するような間があった。
「このまま続けてくれ」
「選定は――君の判断に任せる」
通信が切れた。
シンはしばらく動かなかった。




