第十九章 痕跡
また、エージェントが消去された。
ただし――今までとは、明らかに違っていた。
人だけが消え、装備も、記録も、痕跡すら残らなかったこれまでとは違い、今回は「それ」が、そこに残されていた。
エージェントだった「もの」。
そして、その傍らに置かれた機材。
超低周波機雷。
人工の大地――メガフロートの構造体そのものを破壊するために設計された兵器だった。
「……これは」
関東各県は、基本的にNEO埼玉と敵対しているわけではない。
利害の衝突はある。
監視も、干渉もある。
だが――潰す意図はない。
NEO埼玉は「実験」だ。
その成否を見極め、成功すれば学び、失敗すれば距離を取る。
それが、暗黙の了解だったはずだ。
ならば――関東以外か?
NEO埼玉の「成功」を目の当たりにし、「我々も」と口にする民衆の声は、もはや無視できない大きさになりつつある。
土地を捨て、海へ出る。
その選択肢が、現実味を帯びてしまった以上――
それを恐れる者がいても、不思議ではない。
NEO埼玉を、「成功例」ではなく、「失敗例」にしたい勢力。
静かに、しかし確実に、動き出した“誰か”。
その正体は、まだ分からない。
ただ一つだけ確かなのは――
これは、偶発的な妨害ではない。
意図を持った、宣戦布告だ。
誰だ?




