第十四話 焦りの連鎖
――神奈川県
神奈川情報局・統合作戦室
「……第22の男の反応が、消えました」
報告は淡々としていたが、室内の空気が一段、重くなる。
「また消えた!」
誰かが声を荒げる。
「S級を送り込んだんだぞ……それで、この有様だ」
モニターには、点が消えたままの地図。
復活する兆しはない。
流石の神奈川県にも、隠しきれない焦りが見え始めていた。
「他県のエージェントも、ジリジリと消えている」
分析官が続ける。
「このままでは、NEO埼玉は諜報の空白地帯になるぞ」
「……それが目的なのか?」
沈黙のあと、誰かが言う。
「諜報活動は一切許さない、という意思表示か」
だが、すぐに異論が出た。
「それにしては、やり方がおかしい」
「こちらからの報復を、考えていないわけがない」
実際、各県はすでに動き始めていた。
NEO埼玉のエージェントを逮捕。
国外ならぬ“県外”への追放。
場合によっては――消去。
水面下で、報復は始まっている。
「……報復合戦は、どちらも望むまい」
重く、抑えた声。
「得るものは、何もない」
誰も否定しなかった。
「やはり、関東以外が絡んでいるのか?」
「関東に混乱をもたらし、その隙に何かを狙っている?」
問いは続くが、答えは出ない。
「混乱で、得られるものなんて……」
一人が呟く。
「何もない」
だが、それは常識の上での話だった。
モニターの片隅で、NEO埼玉の人工海が、変わらず穏やかに揺れている。
その静けさが、かえって不安を煽っていた。
誰も、核心を口にしない。
――この混乱は、本当に“目的”なのか。
それとも、何かを隠すための副作用にすぎないのか。
関東全域で、同じ疑念が、静かに広がり始めていた。




