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第十三話 次の場所
小さな箱をポケットに仕舞うと、シン・ニシウラワは踵を返して歩き始めた。
その足元には、神奈川県のエージェントだったものが横たわっている。
呼吸はない。
抵抗の痕跡もない。
ただ、そこに倒れているだけだ。
シンは歩きながら、ポケットの中で箱のボタンを押した。
微かな振動。
次の瞬間、エージェントだった「もの」は、内部から崩れるように形を失った。
肉体は塵へ。
装備も、記録も、存在していた痕跡ごと。
風に乗り、何事もなかったかのように消えていく。
シンは振り返らない。
別のポケットから、折り畳まれた紙片を取り出す。
一瞥。
そこに書かれた、次の座標。
「……次は、川口か」
低く呟き、彼は再び歩き出した。
誰かを追うでもなく、逃げるでもなく。
ただ、次に消すべき観測点へ向かって。
関東の夜は、
まだ静かだった。




