第十一話 千葉の計算
――千葉県
CIA(Chiba Intelligence Agency)・作戦会議室
「……こうなれば」
室内の空気を切るように、主任が口を開いた。
「奴に、直接聞くしかあるまい」
誰も即座には否定しない。
それほどまでに、状況は見えなくなっていた。
「……言ってくれますかね」
若い分析官が、慎重に問い返す。
主任は、軽く肩をすくめた。
「もし、NEO埼玉の駒なら」
視線を一人ひとりに巡らせる。
「埼玉側の“我々”になら、耳を貸すくらいはしてくれるかもしれん」
「……違うなら?」
その問いに、室内の空気が一段重くなる。
「その場合は――」
主任は、淡々と続けた。
「雇い主が、関東圏内ではないという想定が可能となる」
「関東以外、か……」
誰かが低く呟く。
「NEO埼玉の成功は、他の土地でも注目されている」
大型モニターに、各地の反応が表示される。
投資、視察、非公式な接触。
「先日は、山梨県が視察していましたな」
「ああ」
主任は頷いた。
「その成功を、邪魔させないと考えるところがあっても、不思議ではない」
沈黙。
そして、別の声が続ける。
「……あるいは」
「自分たちも、同じことを行う」
「その時の、援助や後ろ盾を期待して、か」
主任は小さく笑った。
「夢を見るのは、山の専売特許じゃない」
千葉は、海を見る。
航路と利権と、その先の勢力図を見る。
「いずれにせよ――」
彼は、結論を下した。
「シン・ニシウラワは、放置できない存在になった」
その名が、会議室に静かに落ちる。
敵か。
味方か。
あるいは、誰のものでもない災厄か。
千葉は、まだ賭けに出ていない。
だが、賭ける準備だけは、すでに整え始めていた。




