トントンとピコと朝ごはん
朝の森に、やさしい光がさしこみました。
木の葉のあいだからこぼれる光が、トントンのほっぺをぽかぽかと照らします。
小屋の外では、鳥たちが元気にさえずっていました。
けれど、ひときわ大きな声で話しているのは、やっぱりピコでした。
「おーいトントン! もう朝だよ! おはよー!」
遊びに来たピコが元気に言いました。
トントンは目をこすりながら、ピコを迎え入れました。
「おはようピコ。いつも朝早くから元気だね。」
ピコは胸を張りました。
「もちろん! オイラは早起き鳥だもん!」
そう言ったあと、小さく羽をなでおろしました。
「……でも、ちょっとだけ、おなかが先に目を覚ましたかも。」
トントンはくすっと笑いました。
「ふふっ、じゃあ、今日はぼくがごはんを作るよ。」
パンを取り出して、木の実のカゴを見ました。
昨日、森でひろったベリーが、朝の光に透けてきらきらしています。
「森のベリーとはちみつトーストにしよう。」
トントンはつぶやきました。
ピコが首をかしげます。
「えっ、はちみつ? この前、ビンのフタが開かなくて大さわぎだったよね?」
トントンはちょっぴり照れた顔でうなずきました。
「うん。でも、今日はちゃんと開けられる気がするんだ。」
トントンは小さなナイフを手に取り、パンを切り分けます。
トースターの代わりに、木の枝で作った簡単な焼き台を使いました。
バターをひとかけのせると、じゅうっと音がして、
家ぜんぶに甘い香りが広がっていきます。
「トントン、いいにおい〜! もうおなかがうずうずしてる!」
ピコは椅子の上でぴょんぴょん跳ねました。
焼き上がったパンの上に、とろりとはちみつを流して
その上から、ベリーをそっと並べます。
金色のしずくが光をうけて、ベリーがまるで朝日みたいに輝きました。
「ねぇピコ、見て。おひさまトーストの完成。」
ピコはうっとりと見とれて言いました。
「わぁ……きれいだね。ほんとにおひさまみたい。」
二人はテーブルに座り、焼きたてのトーストを並べました。
ピコがひとくち食べて、目をまんまるにしました。
「うわぁっ……あまい! でもすっぱい! これ、しあわせの味だぁ〜!」
トントンはうれしそうに笑いました。
「ね、だから朝ごはんっていいよね」
ピコはうなずきながら、口のまわりにはちみつをつけたまま言いました。
「うん! 雨の日も晴れの日も、こうやってトントンと食べる朝ごはんがいちばん!」
トントンはお皿を片づけながら言いました。
「じゃあ、明日はピコが作ってみる?」
ピコはぎょっとして羽をばたばたさせました。
「えっ!? オ、オイラは味見係だから! 料理はトントンの専門でしょ!?」
トントンは笑ってうなずきました。
「うん、そう思ってた。」
小屋の外では、木々の葉が風にゆれ、鳥たちが朝の歌をうたっています。
トントンとピコの笑い声が、そのリズムに混ざって、森の奥まで広がっていきました。




