03
一口に〝百合〟と言っても、その生態系は多様である。
肉体的な繋がりは軽い触れあいに留め、それよりもむしろ精神的な結びつきを重視する者たちもいれば、その逆に、蛇の交尾が如くガッツリと肌を重ね合わせはするものの、心の充足は二の次とした層もいる。
何が正しい、間違っているなどとした杓子定規の答えはないのだろう。
その筋の女の数だけ〝百合〟の花もまた咲き乱れるのだ。
百花繚乱のその中には――一輪、ガチという花も咲いている。
ガチ。
真剣とも書く。
これはわかりやすい。文字通りの意味だ。
どこまでも真剣に――女を愛する女のことである。
「……ふむ、そうだな」ルリカはヒミコの講釈を聞き終えるや否や意味深に頷き、「そういう意味では、確かにユイナは〝ガチ〟だ」肯定した。
「やっぱしか……」ガックリと項垂れるヒミコ。心なしか土気色の肌である。
「もう察してるかとは思うが、以前はその対象が私だった」
「……ようやく腑に落ちたぜ。てめーがあそこまで取り乱してた理由がな」
「まあ、その……色々あったからな。私も」一瞬、ルリカの顔色が曇る。「だがもう私には興味がないらしい。昨日、戦いの後にユイナから直接別れを告げられたよ……いや、そもそも付き合ってた事実はないんだがな」
「それでこっちにきたってワケか……」ヒミコが〝うへぇ〟と口を歪める。
「その分では既に色々と始まってるらしいな」
「朝から散々だぜ……正直、後手に回る一方だ」ヒミコが懐から何かを取り出す。「ほれ、見てみろよコレ」
「ああ恋文な」ルリカは何げなく言うが、どう見てもソレは巻物じみた厚みである。「私も貰ったよ。山ほどな……」
ちなみにヒミコは最初の方だけ少しばかり目を通してみたものの……胸焼けしそうなほど甘ったるくてフワフワで詩的な文章。延々とその調子でヒミコへの愛が綴られていた。
言うまでもなく、三行で断念である。
よくもまあ、一晩でここまで書き切ったものだ。
どこぞの物書きにでも見習ってほしい情熱である。
「ま、まあでもいいじゃないか」ルリカが若干声を上ずらせる。「う、受け入れてやりたまえよ」
「受け入れるって……何をだよ」
「勿論、ユイナの気持ちに決まっている」やはりこういう話題は苦手らしい。ルリカは頬を紅潮させていた。「わ、私は違うが……キミは、その、いいのだろう? 女同士でも」
「はぁ――」
溜息。
深ーい溜息。
ヒミコはゆっくりと首を横に振る。
「てめーは何もわかっちゃいねーな……」
「は?」
「……やばいんだよ」
巫女で、ガチは、マジでやばい――言ってヒミコは頭を抱えた。




