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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第八話 触れた指先

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03

 一口に〝百合(ユリ)〟と言っても、その生態系は多様である。

 

 肉体的な繋がりは軽い触れあいに(とど)め、それよりもむしろ精神的な結びつきを重視する者たちもいれば、その逆に、蛇の交尾が如くガッツリと肌を重ね合わせはするものの、心の充足は二の次とした層もいる。

 

 何が正しい、間違っているなどとした杓子定規(しゃくしじょうぎ)の答えはないのだろう。

 

 その筋の女の数だけ〝百合〟の花もまた咲き乱れるのだ。

 

 百花繚乱(ひゃっかりょうらん)のその中には――一輪、()()という花も咲いている。

 

 ガチ。

 

 真剣(ガチ)とも書く。

 

 これはわかりやすい。文字通りの意味だ。

 

 どこまでも真剣に――()()()()()()のことである。

 

「……ふむ、そうだな」ルリカはヒミコの講釈を聞き終えるや否や意味深に頷き、「そういう意味では、確かにユイナは〝ガチ〟だ」肯定した。

 

「やっぱしか……」ガックリと項垂(うなだ)れるヒミコ。心なしか土気色(つちけいろ)の肌である。

 

「もう察してるかとは思うが、以前はその対象が私だった」

 

「……ようやく()に落ちたぜ。てめーがあそこまで取り乱してた理由がな」

 

「まあ、その……色々あったからな。私も」一瞬、ルリカの顔色が曇る。「だがもう私には興味がないらしい。昨日、戦いの後にユイナから直接別れを()げられたよ……いや、そもそも付き合ってた事実はないんだがな」

 

「それでこっちにきたってワケか……」ヒミコが〝うへぇ〟と口を(ゆが)める。

 

「その分では既に色々と()()()()()らしいな」

 

「朝から散々だぜ……正直、後手に回る一方だ」ヒミコが(ふところ)から何かを取り出す。「ほれ、見てみろよコレ」

 

「ああ恋文(こいぶみ)な」ルリカは何げなく言うが、どう見てもソレは巻物じみた厚みである。「私も貰ったよ。山ほどな……」

 

 ちなみにヒミコは最初の方だけ少しばかり目を通してみたものの……胸焼けしそうなほど甘ったるくてフワフワで詩的(ポエティック)な文章。延々とその調子でヒミコへの愛が(つづ)られていた。

 

 言うまでもなく、三行で断念(ギヴ・アップ)である。

 

 よくもまあ、一晩でここまで書き切ったものだ。

 

 どこぞの物書きにでも見習ってほしい情熱(パッション)である。

 

「ま、まあでもいいじゃないか」ルリカが若干声を上ずらせる。「う、受け入れてやりたまえよ」

 

「受け入れるって……何をだよ」

 

「勿論、ユイナの気持ちに決まっている」やはりこういう話題は苦手らしい。ルリカは頬を紅潮させていた。「わ、私は違うが……キミは、その、いいのだろう? 女同士でも」

 

「はぁ――」

 

 溜息。

 

 深ーい溜息。

 

 ヒミコはゆっくりと首を横に振る。

 

「てめーは何もわかっちゃいねーな……」

 

「は?」

 

「……()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()――言ってヒミコは頭を抱えた。

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