02
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同日 正午
/結界封印都市ヒモロギ
高等巫術学校 北校舎 屋上
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空は生憎の曇天だ。
どんどんと黒味を増しているので、帰りにはザアザア降りかもしれぬ。
そんな中、ルリカは屋上の手すりに身体を預け、これ以上ないほど晴れやかな笑顔を浮かべていた。
手には日室屋の餡麦餅。むしゃり、むしゃりと頬張る度〝農家の皆さんありがとう、メシが美味くてたまらない〟のような顔で安息という名の幸せを噛みしめている。
昨日の戦闘で多少手傷を負ったようだが、なんのその、取り戻した心の平穏が肉体的損傷を遥かに上回っていた。
「……お、来たか」
ばたーん!
そんな音が聞こえてきそうなくらいに勢いよく――だが実際にはまったくの無音で――突如扉が開かれた。
ヒミコである。
弾丸のような速さで飛び込んできた。
そのまま〝ぐりん!〟〝ぐりん!〟〝ぐりん、ぐりん、ぐりん!〟と前後左右を見回すと、いきなりバッと身を伏せ匍匐前進。地べたを這い進む。
……長い黒髪も相まってか、まるで蜚蠊じみた動きである。
そのままルリカに近づき遮蔽物に身を隠すと、ヒミコはようやく立ち上がり、
「……てめーに訊きてぇことがある」
そう告げた。
いきなりの本題である。
人は心にゆとりを持てぬ時、往々にしてこうした態度に出がちだ。
「やれやれ神越。前から思っていたが、どうもキミは人に物を頼む態度を知らないらしいな」仕方のないヤツだ、とばかりにルリカが首を振る。「だがな。私は今、気分がいい。それも最高に、だ。なので特別に答えてやろう。どうした?」
「アイツは―― 」
「ん? どうした、聞こえないぞ。もっと大きな声で言ってくれ。それに〝アイツ〟とは誰のことだ?」
「あの方波見とかいう金髪女だよ!」
「うむ。ユイナか。ユイナがどうした」
「アイツは………………ガチ、なんだな?」




