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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第七話 異海から来た少女

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17

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 夕方

 /結界封印都市ヒモロギ

  ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 休憩所

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

「まったく今回は――」シマメが〝やれやれ〟とばかりに肩を(すく)めた。「何もかもが【いれぎゅら】なことばかりだったな」

 

「……ええ、そうね」長椅子に腰掛けたミヅキが頷く。「その通りだわ」紫色の瞳は深い憂慮(ゆうりょ)に染まっていた。

 

「第三結界柱に続き第一結界柱まで失われてしまった……手痛い損失だな」

 

「……再建はどう足掻(あが)いても無理よね」

 

「ああ、不可能だな。結界石が圧倒的に足りてない。今回の場合〝対消滅(ついしょうめつ)〟で結界柱の欠片(かけら)も残らなかったからな」

 

「そうよね……」その時、ふとミヅキは気づいた。「それにしてもシマメ、あなた今日は随分と落ち着いているのね。第三結界柱の時はあんなに取り乱していたのに」

 

「……ん? ああ、そのことか」シマメはずり落ち気味だった銀縁眼鏡をクイっと上げる。「まあ、あの時はな……〝月読(ツクヨミ)ノ巫女〟さまのお考えもわからなかったし……。あの方から特に御咎(おとがめ)めはなかったんだろう?」

 

「……ええ。それどころか〝立派に役目を果たした〟とまで言われたわ」

 

 ただし、まるで感情の(こも)らぬ口調で、だが……。

 

「なら大丈夫さ。無論、結界柱を守り抜くことは大事だが……敵も()る者だ。一筋縄ではいかない。これから先、こうして避けられない被害も出てくるだろう。〝月読ノ巫女〟さまもそれを承知の上で、ミヅキにそう(おっしゃ)ったんじゃないか?」

 

「そう……かしらね」

 

「きっとそうさ」

 

「………。………………。………………………。」

 

 正直、ミヅキには母が何を考えているかなどまるでわからない。

 

 むしろ、こうして話をしているとシマメの方が母の思惑をしかと理解している節がある。

 

 いや、もっと言ってしまえば――、

 

(シマメは、より深くあの人と()()()()()()……?)

 

 時折り、そんな気がしてならぬのだ。

 

 それを示す証拠など、何一つとしてないのに。

 

(やだわ私……シマメのことを変に勘ぐるなんて)

 

 どうしても、母が絡むと冷静ではいられない。

 

 ミヅキはその欠点を自覚していた。

 

「ああ、そういえばな――」ミヅキが気落ちしたのを知ってか知らでか、シマメが話題を変える。「〈ウズメ〉の改修なんだか、前倒しで進めてしまっていいよな?」

 

「ええ、勿論よ」

 

〈ウズメ〉の改修。先週から出ていた話だ。

 

 新型機(〈サグメ〉)の開発で得られた技術的知見を旧型機(〈ウズメ〉)還元(フィードバック)させる。

 

「今回の〈ウズメ〉の大破は(かえ)っていい方向に転ぶかもな……あそこまで壊れてしまったらほとんど新型を造るのと手間は変わらない。時間はかかるだろうが〈サグメ〉と同水準、もしくはそれ以上の機体になるよ。もっとも……ルリカにはその間、待ってて貰うことになるが」

 

「今のあの子なら大丈夫よ。そんなことで自分を見失ったりはしないわ」

 

「ミヅキのお墨付きなら大丈夫だな」

 

「それに……敵がああして()()()()()()()()以上、こちらでも戦力向上が急務だわ」

 

「……ああ、まったくな」

 

 ――()()()()()()()()()()()()()()()

 

 シマメのその言葉に偽りはなかった。

 

 今日の戦い。

 

 敵が見せた新たな戦略は逆具象化空間の高速射出だけではない。

 

「思ってもみなかったわ……まさかあの【たいみんぐ】で()()()()()()()()

 

 鬼は着実に賢くなっていた。

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