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(クソ……! やっぱコイツ、強え……!)
ヒミコとて肆番隊で一通りの格闘術を仕込まれていたが……それでもなお、開きがある。
鬼の拳が勢いよく飛んできた。
ヒミコはそれを御幣で受け、返す刀が如く斬り掛かるが……敵は引くどころかさらに一歩を踏み込み、斬撃と打撃の熾烈な制空権争いが始まった。
(――来たか!)
その最中、ヒミコは御札の飛来を気配で察する。
だがその標的は――禍ツ忌ノ鬼ではない。
〈アマテラス〉だった。
(あの野郎……!)
ヒミコは上体を逸らし、紙一重で躱す。
が、ユイナは飽き足らず二の矢、三の矢とばかりに連続で御札を飛ばしてきた。
息を吐く間もないような接近戦の只中に、である。
粘り強く一枚、二枚と躱したものの……三枚目は避けきれない。
(殺る)
瞬間、ヒミコは決断した。
ユイナはこの期に及んで足を引っ張るどころか明白な敵対行為をしてきたのである。
玄人としてすべき対応は〝排除〟以外にありえない。
そのためにはまずはこの御札を耐えて――
(⁉)
そうである。
御札が。直撃した。
だが意外。何も発動しない。
どころか攻撃性能も最低限に抑えられており、ただ〈アマテラス〉の装甲に貼りついたのみだ。
つまりは無損傷。
しかし、それが却って仇となる。
予想したものがこなかった。その事実はヒミコの意識にほんの僅かだが空白を生じさせた。
玉響の如く短き空白ではある。
しかし、こうして実力が伯仲している敵相手には――決め手の好機を与えたも同然。
(やべえっ!)
禍ツ忌ノ鬼は歪で巨大な熊手の如く爪を立て、空間ごと抉りとらんとする勢いで振り下ろしてくる。
鋭い爪撃が〈アマテラス〉の喉元に喰らいついた――まさにその時!
(電撃……⁉)
ヒミコから、否〈アマテラス〉から――否々、装甲に貼りついた御札から渦巻くような雷が放出された。
『〝雷陣符〟……一度だけ、自動で反撃してくれる御札よ』
ユイナからの通信。
敵を騙すにはまず味方から、ということか。
どうやら故意でヒミコに御札の効能を知らせなかったらしい。
だが結果としてこれが功を奏した。
雷自体は決定打に足り得ない。
禍ツ忌ノ鬼を討つにはまだまだ非力だ。
しかし。
予想だにしていなかったモノの出現。その事実は敵の意識にほんの僅かな空白を生じさせた。
玉響の如く短き空白である。
こうして実力伯仲の間柄ならば――やはり、それは決め手の好機に他ならない。
「オラァァァァァァアアアアアアアアアッ‼」
ヒミコの御幣が鬼の〝三ツ角〟を捉えた!




