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ユイナは宙に放り出された〈サグメ〉の制御を取り戻した。
身体が――熱い。諤々と震えている。
胸の中では御し難い大きな感情が渦巻いていた。
ヒミコ。
神越、ヒミコ。
あの女――。
(〝隙を作れ〟……)
そう言われた。
上から。居丈高に。
まるで自分をモノか何かのように粗末に扱って。
(私は……)
見れば〈アマテラス〉は禍ツ忌ノ鬼と再び戦っていた。
だが明らかに先より分が悪い。
それもそのはず。
〈アマテラス〉の左肩から先が真っ黒に焼け焦げていた。
(あの時の……傷)
ユイナは思い出す。
ヒミコが自分を庇った時、格子状で緋色の壁が出現していた。
おそらくはあれが〈アマテラス〉の〝天ツ玉垣〟。
緋ノ巫女が霊気を纏って身を守るように、あの機体はああして防御を固めるのだろう。
だがそれでも。
凌ぎきれなかった。
高速で打ち出された逆具象化空間と〝天ツ玉垣〟の衝突は、先の大爆発ほどではないにせよ破壊の奔流を引き起こし〈アマテラス〉を襲ったのである。
それが、今のあの姿の理由だ。
装甲と一体化した巫女装束が焼け崩れ、形のいい機械の乳房が露出している。
(〝隙を作れ〟……)
また思い出す。そう言われた。
ユイナも理屈の上ではわかっていた。
二人で協力し敵を討つ。
それこそが最善手だと。
だが、
(神越……)
ユイナの中で熱く脈打つ激情が、身体を思う通りにさせてくれない。
一秒、二秒……ただ時間だけが無駄に過ぎゆく。
(神越、ヒミコ……ッ!)
とうとう〈ウズメ〉が御札を構えた。
しかし、その単眼が鋭く睨めつける先は――〈アマテラス〉。
ユイナの御札は寸分の狂いなく、ヒミコを狙っていた。




