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「じゃあもうあの爆発はねぇんだな⁉」
『はい! 同規模の爆発は起こせないとのことです!』
「わかった!」
ヒミコは本部との通信を終えた。
未だ戦いの最中である。
〈アマテラス〉は禍ツ忌ノ鬼に接近戦を仕掛けていた。
(どうやらすぐには連発できねーみてぇだな……!)
できたのなら既に打たれていただろう。
こうしてむざむざと懐に入り込ませる隙など与えぬはずだ。
あの射撃――。
聞くところによると〝逆具象化空間〟なるものを打ち出しているらしい。
近くに結界柱がない以上、追加の爆発は起こせぬとのことだが……それでも脅威である。
先は運よく躱せたが、次もそうとは限らない。
(右――!)
あれから一分近く経っている。既に次弾の装填は済んだはずだ。発せられる気でわかる。
もし距離が開けば敵は再び胸の〝龍蛇〟でこちらを焼き尽くす――否、削り尽くすだろう。
だからこうして接近戦で挑まざるを得ない。
だが、
(クソ、コイツ……格闘もハンパじゃねえっ!)
強い。その一言だ。
限りなく人に近い平衡の肉体だからだろうか?
これまでのどの鬼よりも熟達した動きである。
それだけではない。
(こっちの手が、読まれてる……⁉)
どういう訳か、鬼はこの上ないほどに完璧な迎撃をしてきた。
陽動は見透かされ、初動は潰され、隙は容赦なく突かれる。
まるで肆番隊時代、格闘戦の専門家に稽古をつけて貰った時のようなやり辛さだ。
こちらが得物を手にしてようやく互角である。
(このままじゃ……どーにもなんねぇ!)
鬼の蹴りを御幣で受け止める〈アマテラス〉。
その時、
(なんだ――⁉)
突如として無数の御札が飛んできた。
どれも黄色の霊気を纏っている。
(アイツ、戻ってきたのかよ!)
ユイナの繰る〈サグメ〉だ。
ルリカ機を抱え後退したはずだが、その後、取る物も取り敢えずで引き返してきたらしい。
――とにかく酷い。
滅茶苦茶な攻撃である。ユイナは後先考えず手持ちの御札を滅多矢鱈に飛ばしてきた。
(チッ……!)
奇しくも先の屋上での焼き直しが如く御札の一枚がヒミコの頬を――否、〈アマテラス〉の仮面を掠める。
途端、身体中を駆け抜ける凄まじい電撃。
これが御札の特徴だ。
弓ほどの射程は持たぬが、様々な追加効果を付加できる。
(あのクソ女――!)
ヒミコの怒りは頂点に達しかけていた。
だが同時に、
(そこだッ!)
この好機を逃せない。
御札は鬼にも損傷を与えていた。
肉を裂き、精液の如き白濁した血を撒き散らしている。
そこへ〈アマテラス〉が御幣で斬り掛かるが――
(下がった⁉)
敵ながら迅速な判断。
鬼は素早く身を引き、後方へと跳んだ。
狙いは二つ。
第一に、〈アマテラス〉と距離が開いたことで、これまで相殺されていた〝天ツ玉垣〟が息を吹き返した。続々と飛来してくる御札はすべて、白き格子状の光壁に阻まれる。
第二に、
(――まずいッ!)
再度の射撃体勢。
敵はどうやら〈サグメ〉を先に片づける腹らしい。
正中線に沿って身体が真っ二つに割れ、胸から顔を出した龍蛇が顎を――。




