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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第壱話 解き放たれた少女
9/71

09

 実際、決着はあっさりとついた。

 

 今や大型鬼三体はすべて(ほふ)られ、大地に亡骸を預けている。

 

 椿(ツバキ)組と(サクラ)組の手により小型鬼も掃討されていた。

 

 つまり、(から)くも第六結界柱を死守できた、ということである。

 

 ミヅキはホッと胸を撫でおろした。

 

「……んで?」そこへヒミコが問いかける。「いったいなんだよ。あのでけーのは」緋色の瞳は機械仕掛けの巨人を捉えていた。「あんなの、見たこともねーぞ」

 

擬霊(ギレイ)式駆動人形〈ウズメ〉。それがあの機体の名よ」ミヅキもそちらをチラリと見遣る。「あなたが見たことないのも当然ね。大型鬼との戦いのために、ヒモロギで秘密裏に建造されたものだから」

 

「……色々と訳アリみてーだな」

 

「後でちゃんと説明するわ。神越(カミコシ)さんにここまでご足労願った理由もね」

 

「アレに乗って、戦えってか?」

 

「ちがうわ」ミヅキはきっぱりと否定し、「あなたが乗るのは〈ウズメ〉()()()()もの」早々に(きびす)を返す。

 

「……は?」

 

「急ぎましょう。まずは本部まで戻るわ。直接見て貰った方が早い――」

 

「おい、なんだよアレ!」

 

「え」

 

 次の瞬間、周囲に赤黒い液体が勢いよく飛び散った。

 

 ミヅキの顔半分と上半身にも容赦なく()()が浴びせられる。

 

 知っている。ミヅキはこれを知っている。霊機油(レイキユ)だ。言うなれば〈ウズメ〉の体液。機体内を循環し制御系と霊気系への伝達を(つかさど)る。

 

 それが、何故――?

 

 ミヅキは〈ウズメ〉の方へ振り返った。

 

 あんな。

 

 あんな不格好な機体だったか? アレではまるで達磨(だるま)繊細(かぼそ)い手足でも()やしたかのようだ。

 

 いや違う。そんなはずがない。

 

〈ウズメ〉はあんな姿ではない。アレは――

 

「何ぼうっとしてんだよ、アンタは!」

 

 咄嗟(とっさ)の所でヒミコに抱かれ圧縮空間を()ぶ。連続して、跳ぶ。

 

 かなりの距離を(はさ)んだ。

 

 おかげでようやくミヅキは敵の全貌を知る。

 

「あ、あ……!」

 

 大型鬼との戦いを想定し設計された〈ウズメ〉は――様々な物理・技術的課題をどうにか解決(クリア)し――ほぼ同程度の尺度(スケール)を持つ。

 

 つまり成人男性のおよそ五倍の全長だ。二階建ての一軒家と遜色(そんしょく)のない、紛うことなき巨人の(たけ)である。

 

 だが。

 

 敵はその()()()をいった。

 

「そんな――」

 

〈ウズメ〉を巨人とするならば、目の前の()()(まさ)しく巨神(きょしん)

 

 神話の如き偉容(いよう)である。

 

 目測だが、人の五倍の〈ウズメ〉より――()()()()()

 

 達磨(だるま)に手足を生やした?

 

 違う。そうではない。〈ウズメ〉は上半身ごと()()()()()()()()()()のだ。

 

 人の身の丈ほどもある長くて巨大な指の隙間。そこから噴き出した霊機油が、周囲に飛び散ったのである。

 

 ミヅキの震える唇が、無意識の内に()の者の名を紡いでいた。

 

(マガ)()(オニ)――!」

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