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同日 同刻
/結界封印都市ヒモロギ
ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 中央管制室
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「〈ウズメ〉の回収を急いで!」
ミヅキが血相を変えて叫んだ。
脱出装置が稼働していない。おそらくはその前に関連部位が破壊されたのだろう。
ルリカの救出には〈ウズメ〉ごと回収するしかない。
「何が起きたというの……⁉」
ミヅキの目にも一瞬の出来事としか映らなかった。
急ごしらえにしては良い連携。少女たちは間違いなく先手を取ったはずである。
なのに。
刹那の内の暗転……ならぬ光転。
あの白い光が発せられた直後、事態は様変わりしていた。
〈ウズメ〉の大破に加え――第一結界柱の消滅である。
たったの一撃で。
「……そうか、わかったぞ」そこでシマメがおもむろに顔を上げた。「それしかない……なんてことだ……まさか、まさかそんなことをしてくるなんて」
「何かわかったの⁉」
「あ、ああ。とはいえ現段階では証拠の【でーた】を示せないが――」
「それでもいいから言って!」
「……〝逆具象化空間〟だ」
「え」
「あの鬼は、逆具象化空間を高速で打ち出している」
逆具象化空間。
第二の禍ツ忌ノ鬼が不可視の龍蛇として展開していた空間。
鬼の住む世界。
魂と魄とが逆転し、人の世ではそれに触れたが最後、あたかも削り取られたかのように空白で置換される。
「で、でもシマメ。ならあの白い光は何? 前はあんな発光なかったじゃない」
「そうだな。私も最初はそちらに目が奪われ光学兵器か荷電粒子砲の類と早合点していたが……ちがうよ。あの白い光は単に通常空間が高速で削られた際に生じた余波のようなものに過ぎない」
でなければ――シマメは表情を変えずに続けた。
「結界柱を介した〝対消滅〟が説明できないんだ」
「対消滅……?」
「ああ、前の戦いでは結界石を御札で制御して逆具象化空間に我々の通常空間を接続したが……今回はそれを悪用したような形だ。我々がしたように二つの界を丁寧に結ぶのではく、ほとんど殴打にも等しい乱暴さでぶつけあう……結果、生じたのがあの大爆発だよ」
「鬼が……そんなことをしたというの?」
「そのはずだ。それ以外にあの爆発を説明する方法がない。現象としては、我々がした界の接続よりよほど簡単なことなんだよ。私も、頭の片隅でそういうことが可能だろうなとは思っていた」
「なるほど……」
「だがなミヅキ。それよりも、真に恐ろしいのはこの点なんだ――」
アイツらは明らかに学習している。




