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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第七話 異海から来た少女

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09

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 同刻

 /結界封印都市ヒモロギ 第一結界柱付近

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 元は九つあった結界柱。

 

 それが今では一つ失われ、残すは八本。

 

 この八本の結界柱が、人類から鬼を隔絶する最後の生命線である。

 

鬼門(キモン)形成予想時刻まであと二分! 各機はそのまま指定位置で待機して下さい!』

 

 ヒミコの――否、〈アマテラス〉の耳に取りつけられた受信機からスズの声が響いた。

 

 既に三機とも第一結界柱に集結している。急ごしらえながら陣形も組まれていた。

 

 前衛を担当する〈アマテラス〉、後衛で右翼と左翼と(にな)う〈ウズメ〉と〈サグメ〉だ。

 

 (マガ)()(オニ)はこの世の如何なる摂理をも(へだ)てる壁〝(アマ)玉垣(タマガキ)〟で固く守られている。その壁を突破するには、同じ〝天ツ玉垣〟を持つ〈アマテラス〉で相殺するしかない。

 

 さすれば〈ウズメ〉と〈サグメ〉の攻撃でも十分に通じ得る。両機共に、弓と御札(おふだ)を主武装とした遠距離・中距離射撃が持ち味なのも追い風だった。

 

 理屈の上では間違いなく最良(ベスト)の陣形と言えよう。

 

 だが、

 

(……気に食わねぇ)

 

 現実に最前線で戦うヒミコにとっては極めて承服し(がた)い。

 

 何せユイナからはつい先ほど訳のわからぬ因縁で本気の殺意を向けられたばかりだ。

 

 そんな人物を己の背後に置くのには強い抵抗がある。

 

『でも、ヒミコ。やるんでしょう』

 

(お前――やっぱしいやがったか)

 

 ハクである。

 

 薄々()()()()()とは感じていた。

 

『うん、いるよ。ずっとここに』ハクの声がヒミコの思考に入り混じる。『それでヒミコ、やるんでしょう』

 

(この陣形でってことか? ……まあ、そうだな)

 

 ヒミコにも玄人(プロ)としての意地がある。

 

 一度命令が下った以上は、義務を果たす。

 

 もしもユイナに後ろから撃たれたとて、その時はその時だ。

 

 やはり玄人(プロ)として対処する。

 

『鬼門形成が始まりました! (マガ)()(オニ)、具象化します!』

 

 スズからの通信の直後、瞬く間に大地に漆黒の染みが広がった。

 

 鬼の来たりし門、鬼門(キモン)

 

『解析官の事前予測通り、一体のみです! 他に標的はいません!』

 

 小型鬼も、大型鬼もいない。

 

 禍ツ忌ノ鬼だけが、夜が形を()していくかのように黒い染みから現れ出る。

 

(………。………………。………………………。)

 

 この段階で攻撃しても無駄なのは前回の戦いで確認済み。

 

 ヒミコは冷静に機会(チャンス)(うかが)っていた。

 

 そう、()()()――。

 

 ヒミコは気づいていなかったが……今日はまだ一度も()()()()()()()()()()()()(とら)われていない。

 

 こうして禍ツ忌ノ鬼を前にしてもなお、正常(まとも)でいられる。

 

 浮かび上がる感情は欲望でも情欲でもなく――純粋に自身の持つ憎しみと怒りのみ。

 

 それも制御可能な範囲で、だ。

 

 (ゆえ)にヒミコは、

 

(今だ!)

 

 この上なく完璧な瞬間(タイミング)で仕掛けるのに成功した。

 

 禍ツ忌ノ鬼の具象化が終わる直前、すなわち鬼門が閉塞する刹那(せつな)の内に踏み込む。

 

 一瞬、鬼の前に格子状の障壁場が浮かび上がるものの――〈アマテラス〉の持つ同種の力で()き消された。

 

 まずは牽制として御幣(ごへい)で衝撃波を放つ。

 

 一拍遅れて後方から霊気を纏った矢と御札が飛来した。即席の部隊にしては悪くない連携である。

 

(さあどう出る……?)

 

 この時になってようやく鬼の姿形が完全に定まり、〈アマテラス〉の目がその全容を捉えた。

 

 そう、()()――まさしく、完全である。

 

 そうとしか言いようがない。

 

 第一の鬼は左腕が、第二の鬼は右腕が異体であった。

 

 それすなわち神話の蛇たる〝龍蛇(りょうじゃ)〟。

 

 不死身と不可視の違いこそあれど、確かに同じ蛇の形を取っていた。

 

 だが。

 

 それに反し、此度の禍ツ忌ノ鬼は――()()だ。

 

 五体満足、人の姿である。

 

 違いといえば頭部の()(ツノ)(うろ)のように(うつ)ろで仄暗(ほのぐら)い空白の眼窩(がんか)だけ。

 

 後は完全に、人なのだ。

 

()()()()()()――⁉)

 

 この時、ヒミコに背筋に走った例えようのない悪寒(おかん)

 

 それは幼い頃から死線を潜り抜けてきたヒミコだからこそ気づき得た一種の〝予兆〟である。

 

 何が起きたかわからない――否、違う――()()()()()かわからない。

 

 ヒミコは己の直感を信じ、全力で大地を蹴り横へと跳んだ。

 

 次の瞬間、

 

()()()⁉)

 

 禍ツ忌ノ鬼の身体が正中線に沿って真っ二つに割れた。

 

 それだけではない。

 

 ()から――()()()()()()()()()から、勢いよく〝龍蛇〟が飛び出し巨大な(あぎと)を裂けんばかりに開く。

 

 直後――――――白い光。

 

 蛇の大口から放たれた白光(びゃっこう)の矢。

 

 いや、もはや〝線〟か?

 

 ヒミコの目にはそうとしか捉えられない。

 

 ――わかったことが三つある。

 

 第一に、自分は辛うじて白光の矢を(かわ)し、横腹を薄皮一枚持っていかれた程度で済んだ。

 

 第二に、矢はその後も進み続け後方を跳躍していたルリカ機の大部分を消滅させた。

 

 第三に、それでも矢は止まらなかった。

 

 というより、鬼の目的は(はな)から()()だったのかもしれない。

 

〝標的〟を射貫くや否や、辺りを(まばゆ)い閃光が包み込み――大爆発。

 

 ()()()()()()()()()()

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